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異世界還りのおっさんは終末世界で無双する【漫画版5巻6/25発売!!】  作者: 羽々音色
三章

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百六話


部屋の中に沈黙が訪れる。

この話をするきっかけになったユキも、織田さんのその様子を見てか言葉を発することはなかった。


俺は一つ静かに息を吐いた。


俺がここを去ってから、彼らのためにやれるだけのことをやったその行為。

その結果を外へと出ていた織田さんは見ていたわけで、それはもしかしたら俺がもたらしたものなのでは、と想像するのはある意味当然の話なのかもしれない。

勿論それを為すことなど普通の人間であれば絶対に不可能なことで、この力を目の前で見せない限りは、それは単なる妄想に過ぎないだろうと終わる話でもあるのだが。


しかし俺は織田さんの前でその力を見せた。

銃弾の雨をかわし、たとえそれが当たってもものともせず、一撃のもと人を殺めるその姿を。


「……なあ、織田さん。」


「……?」


「俺にも、悪いところはあった。すまない。」


「柳木さんが謝ることなんて何も……」


「いや……俺は、この力を黙っていた。」


そんな涙で潤んだ織田さんの瞳を見て、俺は静かに口を開いた。

俺と向かい合わせで座る、織田さんとその部下二人の、俺を見る視線を受けて。


両隣にいるユキとカエデの瞳は、見なかった。

二人の視線も俺に向けられていることは分かる、けれどそこにどんな感情が宿っているのかを確認しないまま話してしまおうと決めたのだった。

それを見たらともすれば、その意思が揺らぐような気がして。


「……織田さんにあの日言ったことは事実だ。だが俺はその全てを話せなかった。」


俺の正面に座る彼ら三人の視線は、先ほどの話を聞いても、そこに恐怖の感情を抱いているようには見えなかった。

果たしてカエデやユキはどう思っているのかはわからない。

しかし俺はそれを無視して、さらに言葉を続ける。


「俺は……この力を見せるのが怖かったんだよ。」


そこから先は、口から言葉が止まらなかった。


自分が隠していた、この世界ではあり得ない非常識な力のこと。

その力をもって半グレグループを皆殺しにしたこと。

そこで余計にこの力を見せることを躊躇したこと。


皆黙ってそれを聞いていた。

どう俺に声をかければいいものか、迷っているのだと思う。

そんな中、最初に口を開いたのは、ユキだった。


「……先輩。先輩は、昔から、そんな力があったんですか?」


「いや……」


少しだけ震えたような声でそう問うユキに、俺はそちらを振り向かずに首を振った。

以前から付き合いのあったユキからすれば、そんな力を有していたことを隠して生活していたのだろうかという疑問が生まれたのは無理もない話だろう。


「信じてもらえなくても構わないが……この力は、パンデミック直前に手に入れたものだ。」


俺はそこからさらに、自分がパンデミック発生の数日前のあの肌寒い夜、異世界へ転移したことを伝える。

そしてその世界で、仕方のないこととはいえ数多くの同族殺しもしてきたことも。


「まあ……何を言っているんだという話だろうが、全て事実だ。向こうで三年過ごして、帰ってきたと思ったらもうパンデミックから一ヶ月ほど経っていたってわけだ。」


自らの口から出てきた与太話のような言葉に自嘲しながら、俺はユキの顔を見た。

その顔は、まだ言われたことに対して理解が追いついていないのか、困惑したような表情を浮かべていた。

そこに何か含むものを感じさせる瞳が、僅かに俺との視線をずらして震えていた。


織田さんの部下二人も、さすがに今の話には理解が及ばないような渋い顔をしている。


「なるほどね……僕に言ったあのことも、それで経験してきたことだったんだね。」


しかし、織田さんは俺の言葉をまるきり信じて、そしてあの日の告白の真意も汲み取っていた。

ここにいる中で織田さんだけは、俺の人外じみた動きをその目で見ている、だからこそ俺の話を素直に受け取ることもできたのだろう。


と、椅子に座った俺の太ももに、手の触れる感触があった。

織田さんから視線を外した先、隣にいるカエデと目が合う。

彼女のその視線も、織田さんのように俺をまるきり信じているように見えて、そして異世界で数多くの人殺しを経験してきた俺を、何処か慮っているようにも見受けられた。


それは、同情とも言えるのかもしれない。

いや、そう感じてしまうのは、望んでもいないのに異世界に連れて行かれ人をも殺めることになってしまった、と俺自身が思っているせいなのだろうか。


「ああ、そうだ……だが、俺が人を殺すことになんの抵抗もないことには変わりない。もう、殺し過ぎて、慣れてしまったんだ。」


俺はそんなカエデの瞳からすぐに視線を逸らした。

その発言で、その色が変わるのを見たくなかったから。


「だから……」


「ねえ、柳木さん。」


もしあの日、俺がこの話をしていれば織田さんは俺を追放するという選択にならなかったかもしれない。

しかしその精神性を問題視するならば、それは変わらないことだったのかもしれないとも思う。


もしそうであるならば、俺が今まで影ながら助けていたことで、ただその恩から俺を追放出来ないなんてことにはならないで欲しいと俺は思っている。

こうして和解したとはいえやはり俺はまたここを去るべきだろう。


そんなことを言おうと口を開いた俺を、織田さんが遮った。


「僕はね、今日のことで柳木さんの言っていたことが分かったんだよ。三人も亡くなってしまって、怪我人も出た。今のこの世界で、僕は覚悟が足りていなかった。」


俺が言おうとしていたことを、織田さんは分かっていたのだろう。

まるで俺の心を読んだかのように、粛々と織田さんは言葉を紡ぐ。


「どうしようもない悪意には、厳格に対処しなければならない。僕は、身に沁みてそれが分かったんだ……今更こんなことを言うのは、酷く自分勝手なのも理解している。ねえ、柳木さん。良かったら、またここで一緒にやっていけないだろうか。柳木さんが望むなら、リーダーをやって貰ってもいいと僕は思っている。」


「……俺はそんな柄じゃないさ。それに俺は、リーダーとしての織田さんのことを基本的には尊敬しているんだ。その……甘い部分を除けばな。」


「はは、手厳しいね。それは、これから直していくよ……でも、取り敢えずその返事は、イエスということでいいのかな?」


俺の返事に、織田さんはずっと曇っていた顔を明るくして小さく笑うと、期待の眼差しでこちらを見てくる。


「まあ……他のみんながいいようなら、だがな。カエデのこともあるし、俺としても願ったりだ。」


「……カエデちゃんのこと?」


ぴくりと俺の膝の上で小さく跳ねたカエデの腕を見る。

織田さん達には、まだカエデが噛まれたことは、話していない。


もう、異世界のことも話した。

アイテムボックスのことや、向こうから持ってきていたエリクシールのこともまとめて話そうと思う。


「まあ、それもこれから話すさ。」


「そうか、分かった……みんな、きっと柳木さんを歓迎するはずだよ。その前に、まずは僕はみんなに謝らなければいけないな。」


「それは俺も付き合うさ。」


「すまない。ともあれ、おかえり、柳木さん。」


織田さんはそう言って一度眉を下げてから、その顔に笑みを浮かべた。





織田さんとの話は前回の一話だけにはまとめきれませんでしたorz

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