一夜を共に……。
皆さまは、霊感のある体質ですか?
私は全くない体質です。
このお話は、そういうテーマのお話です。
苦手な方は、お気をつけてお読みください。
かつて会社員として、働いていた頃の話。
東京へ一泊の出張だった。
会社の方で某ビジネスホテルを予約してくれていたので、一緒に来ていた同僚Aさんとそこへ。
◆
ホテルの部屋はツインで、窓側にテレビとソファがあった。
よくあるシンプルな部屋だったと思う。
私は壁側のベッドを使わせてもらって、疲れていたので早々にシャワーを浴びて、Aさんより先に寝た。
そして真夜中。
いつも一度寝ると、夜中に目覚めることは滅多にないのだが、その夜は目が覚めた。
なぜか部屋の照明はすべて煌々(こうこう)とついていて、テレビもつけっぱなしで、画面は砂嵐。
確か、記憶では砂嵐。
Aさんはというと、ベッドで布団も掛けずにうつ伏せで倒れているような状態で寝ている。
その時、ぷぅーっと彼女から音がした。
……。
私は、呆気にとられた。
まあ、そのままという訳にもいかないので、私はベッドから起き上がり、Aさんを起こすことなく彼女になんとか布団をかけた。
そして砂嵐のテレビを消し、いくつかある照明を暗くしたり消したりすると、ベッドへ戻ってまた寝た。
翌朝、目を覚ました同僚Aさんに、
「夜中、電気もテレビもつけっぱなしで寝てましたよ」
とさっそく伝えた。
ぷーの件は、必要ないので伏せておいた。
まあ、そうだよね。
すると、彼女からとんでもない事実が告げられた。
「ごめん。だって、あのソファに女の人座ってて、怖かったから、テレビも電気もつけたままにしておいたの!」
「……!?」
私は絶句した。
私はかつてそういうのを見たことは無かった。
一時期、墓地の隣に住んでいたこともあったけど、それでも見たことは無かった。
「この部屋に入った時、なんか怪しい感じしたんだよね。わたし、霊感あるの」
事も無げにそう言ってのけるAさん。
聞いてないよ~。それなら、そうと言ってくれれば!
いや、言われても困るというか、なんというか。
よくよく考えたら、夜中に怖いからと言って、私を起こさずに凌いでくれたAさんに感謝すべきか。
そう、Aさんも私も、その女の人の霊と一夜を共に過ごしてしまったのだった。
後にも先にもそれっきり、そういう経験は今のところ無い。
ほぼ実話です。
因みに、その某ホテルはすでに取り壊されていて、今はありませんのでご安心下さい。
最後になりましたが、家紋武範さま、このような素敵な企画に参加させていただきまして、どうもありがとうございました。