本当のヒーロー
あまりにも突拍子のないことに反射して口から声が漏れる。
「え? 世界を?」
目の前にる社長、星野聖真は当たり前のように話を続けた。
「はい。あなたに守ってほしいのです」
話を呑み込めない花上昇を見て、立ち上がりゆっくりと近づく。
「見てもらったほうが早いですね。それではご覧に入れましょう」
手に持っているリモコンのスイッチを押すと星野
はにっこりと笑う。
「これから見るものは口外無用でお願いしますね」
部屋中に大きな機械音が鳴り響き、
壁から飛び出る金属はいくつものカギをあけているようだった。
「人間みたいなロボットに変形する部屋って、なにがどうなってんだ」
床が上がり始めて中から出てきたのは人型をした鎧のような機械だった。
何かの液体に浸かっている機械は生きているように泡を吐きだし鼓動のような音が聞こえる
灰色の体をじっと見つめていると機械の目のようなライトがパッと光る。
「これは我が社の最新機。T5エスカ」
星野の言葉は聞こえていたが機械から目を離すことはできなかった。
「このスーツを身に着ければ常人では発揮できないような身体能力に、
新しくTEY式鋼鉄を使った真剣搭載しております」
いきいきと話し続ける星野の声を聞けば聞くほど今までに味わったあことのない恐怖を感じた。
「これで何をしようとしているんですか」
見つめあう機会と人間の間に立ち星野は答えた。
「昔、このシステムは1つの会社で開発されていてね。生身の部隊では難しい救助活動やテロ対策として開発されていたんだ」
星野は不気味な笑顔から悲しげな表情に変わっていた。
好奇心からなる開発マニアのような雰囲気を感じる彼にも仲間をを思う気持ちがあるのかもしれない。
「しかし、考えや目的の違いで開発チームはバラバラになり別々に開発を進めるるようになった。そんな中、自分の欲望のために利用する者が現れ活動を始めているのです」
正直、怪しい男だと感じていた花上昇は真の目的を知り勘違いをしていたと思っい始めた。
「今はまだ公にはなっていませんが、いずれ大きな事件を起こすのは明白です」
このことが本当なら誰かがやらなければいけないことなのは分かった。
しかし自分には荷が重すぎると同等に感じてしまう。
「力になれるなら俺もそうしたいです。でも、俺には期待に応えられる自信がないです。それに、俺が誰かと戦うなんて」
自分なりにも真面目に生きてきた青年には喧嘩の経験すらなかった。
そんな花上昇誰かと戦うなどイーメジすらわかなかった。
「話が急すぎましたね。もちろん何重にもテストを重ねた後の話です」
二人は座り直し向き合う。
「それに何よりあなたには普通の人には無いものをすでに持っています。凶悪犯から女の子を救った男と知って私は感動いたしました」
この空間会話は雇う雇われるの関係ではなく一人の男としての言葉のようだった。
「その勇気とこのスーツがあれば何かを成し遂げることが出来るはず」
また煮え切らない会話に戻ってはいるが、憎めないようにも思えてくる。
「そう私たちは世界を照らす太陽となるのです」
本気か冗談かわからない星野の言葉は子供の夢のように語られる。
「へへへ、それは素敵なことですね」
思わず笑ってしまった花上昇は冷静になった頭で再び考えるも、まだ実感がわかない。
「でも、やっぱり自分ができるとは思えません。太陽なんて俺には」
出来ないとはわかっていても、断るのは苦しいものがあった。
何しろ、人のためにすることを断ったのは初めての経験だった。
少し重い空気になってしまった部屋の扉が開き誰かが入ってきた。
「そうだ、伝え忘れていたね。実は君のほかにも同じ仕事を依頼していてね」
振り向くと自分の年にも満たない少年とも言える男がこちらに向かってくる。
「こども?」
もう一人の候補者の登場に花序昇はまた悩むことになる。