表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/49

【コミック発売記念】ラセルの母。ルキソルの最愛の人(後編)

☆★☆★ 好評発売中 ☆★☆★


昨日、『劣等職の最強賢者』コミックス2巻が発売されました。

読んでいただけましたか? 表紙の裏まで確認していただけたでしょうか?

まだの方は、是非お買い上げください。


挿絵(By みてみん)

 コングベアは両手を組むと、ルキソルに向かって打ち下ろす。

 熊すらねじ切る膂力を持つ、コングベアの一撃。

 当然、ルキソルは回避するのだろうかと思ったら違った。


 【筋量強化】


 ルキソルは自身の筋力を上昇させて、剣で一撃をかろうじて受けた。


 気が付けば、俺は冷や汗を掻いていた。

 コングベアの一撃を受けるなんて無茶すぎる。ルキソルの実力は認めるが、あまりに無謀だ。

 うまくいったからいいものを、衝撃で骨がバラバラになってもおかしくない。


 その後、ルキソルの動きは精彩を欠いた。

 コングベアの攻撃を躱すのではなく、ことごとく受け、あるいは受け流す。


 そもそも1歩も動いていなかったのだ。


「なんだ? あのルキソルの動きは?」


 まるで何かを守ってるような。


 俺はルキソルの後ろに注目する。

 そこにあったのは、まだ1本の若木だ。

 他の木はまるで天を衝かんばかりの勢いで聳えてるのに、その若木だけやや不自然に立っている。


「ぐっ!!」


 それまで【筋量強化】でコングベアの攻撃を受けてきたルキソルだが、さすがに限界を迎える。


 とうとう膝を突き、血を吐く。

 あれだけの攻撃を連続で受けたのだ。むしろよく持った方だろう。

 だが、ルキソルの目は死んでいない。

 1人雄叫びを上げると、気合いで立ち上がる。凄まじい精神力だ。


 でも、立つのがやっとといったところだろう。

 剣を構えているが、果たして振ることができるかどうか。


 俺はいよいよ弓矢をとり、矢を番え、弓弦を引いた。


 いつも通り【戦士(ウォーリア)】の【筋量強化】。

 【学者(プロフェッサー)】の【魔獣走査】で、弱点を確認し、【戦士(ウォーリア)】の【致命】で、攻撃力を上乗せする。

 【鍛冶師(ブラックスミス)】の【属性付与】に、今日は【重量増加】を加える。


 イッカクタイガーを仕留めた多重起動。

 この1年俺は1日たりとも鍛錬を欠かしたことがない。


 魔法の五重起動に加えて、弓を引く力も強くなった。

 今なら、矢に多少重量を載せたところで、普段通り射ることができるはずだ。


「狙いはコングベアの硬い頭蓋……」


 一発必中……。



 行け!!



 俺は矢を放つ。

 当たれば【致命】が入る一射は、空気を切り裂くとというよりは、巻き込み、さらに加速する。


 そして、コングベアの硬い頭蓋を射ぬ――――。


 グシャッ!!


 射貫くどころか、衝撃で吹き飛んでしまった。


「あら?」


 思ったよりも一撃が強すぎたか。

 忘れてた。今のガルベールの魔物は以前と比べて弱くなってるんだったな。


 頭を失ったコングベアは、前のめりに倒れる。


 突如、頭が爆発した魔物を見て、ルキソルは呆然としていた。

 辺りを伺う。俺は反射的に隠れた。


 すると、ルキソルは木に刺さった矢を見つける。


「私が作った矢だ……」


 何かを察したルキソルは叫んだ。


「ラセル、いるんだろ?」


 さすがにルキソルを誤魔化すのは難しいか。

 俺は大人しく木の陰から出ることに決めた。


 苦笑いを浮かべた我が子を見て、ルキソルは「やれやれ」と息を吐き、剣を鞘に収める。


「Cランクのコングベアを一撃とは……。お前、また強くなったんじゃないのか?」


「そ、そんなことないよ」


「今さら取り繕う必要はないだろう。まったく……。私もポルンガも必死こいて修業しているというのに。お前、私たちが見えないところで一体何をやってるんだ」


 特に凄いことはしてないがな。

 強いて言うなら領地近くの魔物の巣窟を手当たり次第、潰してることぐらいか。


「まあ、いい。それよりも助けてくれてありがとう。たぶん、母さんも感謝しているだろう」


「母さん……。母上が感謝してるとはどういうことですか?」


「あ。そうか。そういえば、お前と一緒にここに来るのは初めてだったな。もう少し大人になってから連れてこようと思ったのだが……」


「??」


 ルキソルは振り返る。

 ずっと背にして戦っていた若木の方を向いた。

 森の中でポツンと立った小さな若木は、心なしか光っているようにも見える。


「紹介しよう。これはお前の母であり、そして私の最愛の妻カリーナだ」


「この若木が……」


「言ってみれば、母さんのお墓だ。カリーナの希望でな。自分がなくなったら、この森に若木を植えて、自分だと思って育ててほしい、と。以来、これが母さんの墓標代わりというわけだ」


 なるほど。だから、ルキソルは必死にこの若木を守っていたのか。


 あんなに必死に守るということは、やはり伴侶を愛していたのだろう。

 1つ謎は解けたが、ならば何故我が家には母の形見のようなものが1つもないのだろう。

 ルキソルが母の話題となると、口を閉ざす理由は……。


 俺は改めてストレートに質問した。


 今回は逃げられないと思ったのだろう。

 ルキソルは重い口を開いた。

 ついでに涙を流し始めた。


「だって……。だって……。カリーナのことを思い出しちゃうと、父……泣いちゃうんだもの」


「へっ?」


 すると、突然ルキソルは若木に抱き付いた。


「うぇえええええんん! カリーナ! 向こうで元気にやってるかい。お腹を出して寝てたりしないかい? 小石に躓いて転けたりしてないかい?」


 俺の母親を何だと思ってるんだ。


「私は寂しいぞ。うう……。なんで先にいっちゃったんだよぉぉお!」


 大泣きを始めた。


 な、なるほど。自分のこんな姿を見られたくないから、極力母親のものをしまっていたのか。


 すでに数年経っているというのに、どうやらまだ未練があるようだ。


 でも、なんでだろう。

 何故か同情できない。


 お願いだ父よ。

 泣くのは構わないが、赤ん坊みたいに泣くのはやめてくれ。

 今、父としての威厳が壊滅的打撃をうけているのだが。

 やれやれ……。


 でも、それだけルキソルは妻のことを愛していたのだな。


 決死の覚悟で、この若木を守ったように。


「父上、俺を紹介してくれませんか? 7歳になった息子を……」


「ん? ああ。そうだな」


 ルキソルは涙を拭う。

 ポンと俺の肩に手を置いた。


「カリーナ、待たせたな。ラセルだ。お前が産んでくれた自慢の息子だよ」


「お久しぶりです、母上。……父上と仲良く暮らしています。どうぞ天国から見守ってください」


 不意に森に風が吹いた。

 わさわさと若木がしなる。


「え?」


 それは一瞬だった。


 その若木に、俺は何か女の人の笑顔が見たのだ。


 人の霊……。いや、気のせいか。


「ラセル、そろそろ行こう。領民が心配している」


「はい。では、母上。失礼します」


 俺はルキソルと一緒に領地へ戻る。


 振り返ると、また若木が揺れていた。


こちらもよろしくお願いします。


2月2日発売の『公爵家の料理番様』書籍2巻、

2月6日発売の『公爵家の料理番様』コミック1巻もよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ7巻2月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、講談社公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる7』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス第4巻2月24日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『劣等職の最強賢者』コミックス4巻 12月19日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス6巻 12月12日発売!
30万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





シリーズ大重版中! 第3巻が12月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本3巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




『劣等職の最強賢者~底辺の【村人】から余裕で世界最強~』ですが
ダッシュエックス文庫より好評発売中です!

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ