表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/49

【コミック発売記念】ラセルの母。ルキソルの最愛の人(前編)

☆★☆★ 本日 単行本2巻 発売 ☆★☆★


本日、無事『劣等職の最強賢者』2巻が発売されました。

猫猫猫先生の書き下ろし、サービスカッとなど色々目白押しなので、

書店にお立ち寄りの際には、是非お買い上げいただければ幸いです。


挿絵(By みてみん)

 これは【村人】に転生し、ラセル・シン・スタークと名付けられ、後に六大職業魔法のすべてを収める賢者――その7歳の時の話である。





 ある日、俺はスターク男爵家にある本を読んでいた。

 粗方、【速読】の魔法で読んで内容は頭に入っているが、時々こうしてゆっくりとページをめくり、復習をしている。

 意外と見落としや、新たな発見があったりするからだ。


 そして、それが今日だったらしい。


 パラパラとめくっていると、ページとページが貼り付いているのを見つける。


 俺は慎重にページを剥がすと、出てきたのは、手の平よりも少し大きな絵画だった。


 絵画といっても、【学者(プロフェッサー)】による【自動書記】で書かれたもので、かなり精緻なものだ。


 そこには3人の家族らしきものが移っている。

 椅子に座った母親が生まれたばかりの赤ん坊を抱き、その横に父親らしき男が立っていた。


 母親と赤ん坊には見覚えがないが、男の方には覚えがあった。


「これ、ルキソルか?」


 思わず父親の名前を呼んでしまう。

 間違いない。顔の骨格、髪と瞳の色。

 我が父ルキソル・シン・スタークだ。


 それにしても、今と全然変わらない。

 この時はまだ騎士団長をやっていただろうから、多少筋肉がついているがな。


「ということは横にいるのは……」


 ラセルの母親、そして抱かれているのは察するに、ラセル自身――つまり、俺だろう。


 そう言えば、妹のシーラの話もルキソルから聞いたことがないが、母親の話も聞いたことがない。


 シーラを生んですぐに亡くなったとは聞いた。

 そのためラセルの記憶の仲にも、おぼろげにしかない。

 何か理由があるのだろうか。

 あまりいい母親ではなかった、とか。


 思えば、母親の形見のようなものもないし、それとわかる肖像画などは1枚も屋敷に飾られていない。

 考えてみれば、母親の顔を見たのも、この絵画が初めてだ。


 ふむ。少し気になるなあ。


 俺は思い切って夕食時に尋ねてみた。


「父上、1つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」


「ん? 珍しいな。ラセルが私に質問など。いいぞ。どんな質問でもドンッと来たまえ」


「では、母上のことですが……」


 ガチャンッ!


 すると、突然ルキソルは立ち上がった。

 すでに空になっている食器を手早くまとめると、流しに置く。


「あ、あの……。父上?」


「ラセル……」


「は、はい」


「その話はまた今度でいいか? 最近ポルンガとの剣術修業でかなり疲れていてな」


「は、はあ……」


「というわけで、先に寝る。お前も早く寝ろ。明日は朝練の日だからな」


 俺を指差し、忠告すると自分の私室へと戻っていってしまった。


 な、なんだ、あの態度は……。


 やはりルキソルとその妻との間に何かあったのか。



 ◆◇◆◇◆



 次の日のルキソルはいつも通りだった。

 『ラセル復讐同盟』の盟友ポルンガとともに、朝から汗を流している。

 随分鍛え上げられただけあって、ポルンガの動きはかなりマシになってきた。

 ルキソルの六大職業魔法は【戦士(ウォーリア)】。ポルンガも【戦士(ウォーリア)】だから、ルキソルとして指導しやすかったのだろう。


 その様子をぼんやり眺めていると、スターク領の領民が慌てて駆け込んできた。


「ルキソルさん、大変だ! 西の森に魔物が出た!!」


「西の森?」


 珍しいな。

 西の森は比較的魔物が少ない地域のはず。滅多に魔物が出ないはずだ。


「かなりの大物だ。猟師の話じゃ、コングベアじゃないかって……」


 コングベアか。

 厄介だな。

 特に癖はないが、全体的に基礎能力が高く、イッカクタイガーと同じCランクの魔物だ。

 熊を簡単にねじ切る能力と、馬よりも速く動けるのが特徴。

 目を付けられたら最後、地の果てまで追いかけてくる執念深さも持つ。


「どうする、ルキソルさん? 討伐隊を組織して……あっ! ルキソルさん!!」


 突如、ルキソルは飛び出した。


「領民を安全な場所に避難させてくれ。コングベアは私1人でどうにかする!?」


「1人でって……。いくらあんたでもコングベアを単独なんて」


 領民の制止を聞かず、ついにルキソルは西の森に消えてしまった。


 どうしたんだ、ルキソルのヤツ?


 いつも魔物が出ても、的確に指示を出して、領民の命を最優先にするのに。

 あんなスタンドプレーをする人間ではない。


 昨日の母親についての反応といい。

 どうもおかしいな。


「さっ! ラセル坊ちゃん、避難しましょう」


 領民たちはひとまず非戦闘員を避難させることに決めたらしい。

 俺とポルンガは、避難所となったスターク家の屋敷に戻るよう促された。


「あ。そうだ。木こりのおじさん、今日は西の森でお仕事するって言ってたよ」


「え? そうなのかい?」


「僕、木こりのおじさんと仲がいいから知らせてくるよ」


「あ! ちょっと! 坊ちゃん!!」


「大丈夫! すぐ戻ってくるから」


 俺は軽く手を振り、ルキソルの足跡を追った。



 ◆◇◆◇◆



 今は初春――。

 里の雪は溶けてしまったが、森の中にはまだ雪が残っていた。

 おかげでルキソルの足跡を辿るのは用意だ。


「おかしいな」


 魔物を討伐するというなら、周りを見て立ち止まったと思われる形跡が残るはず。

 実際、コングベアが通ったと思われる痕を見つけたが、ルキソルがそれに気づいた様子はない。


 一心不乱に森の向こうへ走っている。

 そんな感じだった。


「コングベアも気になるが、まずはルキソルと合流することが重要だな」


 俺は一旦屋敷に戻って、持ってきた弓と矢を背にして、ひたすらルキソルの後を追った。


 すると、獣臭が濃くなる。


『ぐおおおおおおおおおおおお!!』


 森を震わせるような叫び声が上がった。さらにドドドドドッという激しいドラミングが聞こえる。


 コングベアだ。


 最悪なことにルキソルがつけた足跡の先から聞こえた。

 微かにだが、剣戟の音が耳朶を打つ。

 どうやら、すでに戦闘に入っているらしい。


 現地に辿り着くと、思った通りだ。

 ルキソルvsコングベアの戦いが始まっていた。


後編は明日更新です。


2月2日発売の『公爵家の料理番様』書籍2巻、

2月6日発売の『公爵家の料理番様』コミック1巻もよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ7巻2月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、講談社公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる7』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス第4巻2月24日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『劣等職の最強賢者』コミックス4巻 12月19日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス6巻 12月12日発売!
30万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





シリーズ大重版中! 第3巻が12月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本3巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




『劣等職の最強賢者~底辺の【村人】から余裕で世界最強~』ですが
ダッシュエックス文庫より好評発売中です!

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ