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外伝 Ⅶ 賢者の帰還➉

☆★☆★ 明日 単行本2巻発売 ☆★☆★


単行本2巻がいよいよ明日発売です。

悪徳地主と魔獣討伐を網羅した異世界無双になっております。

1巻で好評だった猫猫猫先生の書き下ろしも網羅しているので、是非お買い上げください。


挿絵(By みてみん)

「おい、ラシュア。何度も言ってるがここは戦場だぞ。遠足じゃねぇって何度も言ってるだろ!」


 まったくだ。


 しかし、335番の指摘も能天気なこの娘には通じないようだ。


「お! 335番くん、ついに私の名前を呼んだね」


「うるせぇよ。そっちの方が言いやすいんだよ。番号なんかより」


「ねぇ。このシェリム隊ではお互い名前で呼ばない。私も人を番号とかで呼びたくないよ。あんまりピンとこないし」


「ああ。そのことなんだが……」


 シェリム隊のリーダーが手を上げる。


「この部隊には必要ないと思って、コールサインを決めるのを忘れていたことを思い出した」


 おい。リーダー。

 それって割と重要なことだぞ。


「ちょうどいいじゃない。お互い名前で呼ぼうよ」


「馬鹿か、お前。だから、遠足じゃ」


「心配しなくても前例はある。他の隊でも、本名を使っていて、珍しいことではない」


「やった! リーダーのお墨付きだ!」


 ラシュアは飛び上がって喜んだ。


 名前で呼ぶのが何が楽しいのか。

 そもそも軍隊が名前ではなく、番号で呼ばせるのも、人間としてではなく、一振りの武器として扱うからだというのに。


 名前なんぞ聞いても、後々辛くなるだけだと思うがな。


「じゃあ、私からだね。私の名前は、ラシュア・ネール・ウィシュームよ。よろしくね」


「な! お前、そのノリで子爵令嬢かよ」


 335番はおろか、リーダーも驚いていた。


「ムフフ……。崇めるがいい」


 何を崇めろというのだ。


「つーか、子爵令嬢が戦場に来ていいのか?」


「うちはお姉ちゃんがいるし。跡取りさんも優秀だから。それに私、【魔導士(ウィザード)】だから、家のことよりも家があと1000年繁栄するように頑張ってこいって言われたの」


「な、なるほど」


 納得できたような、できないような。


「はい。335番くんだよ」


「デグナン・フェルブレスだ。チッ! 馬鹿の菌が移っちまったぜ」


「デグナンか。じゃあ、デグくんだね」


「なんでそうなるんだよ! なんか呼び捨てにされてるようでイヤなんだが!」


「あははは。細かいことは気にしない、気にしない」


「するわ!」


 デグナンは反発する。

 犬猿の仲というよりは、水と油だな。

 永遠に意見が一致しなそうだ。


「じゃあ、278番。元気よくどうぞ」


「レン・フォートレス。これで満足でしょ。じゃあ、本を読むから、話しかけないで」


 早速、レンは救急鞄から薬を取り出すと、本当に本を読み始めてしまった。

 とことんマイペースだな、こいつ。

 俺も人のことは言えないがな。


 そして俺に順番が回ってくる。

 必要あるか? 散々ラシュアが俺の名前を連呼してるおかげで、周知の事実だと思うが。


「俺は元孤児だ。親からつけてもらった名前はない。どうしても呼びたければ、ラセルと呼べ」


「ラセルくん。よくできました。みんな、ラセルくんのセカンドネームを募集中だよ。イカしてかっこいい名前にしてね。受付は私だよ」


 誰が誰のセカンドネームを募集中だって?

 あと、俺の頭を気安く撫でるな。

 子どもがじゃないんだぞ、俺は(10歳)。


 最後にリーダーが自己紹介する。


「最初に挨拶したが、改めて……。こほん。シェリム・シン・ガンドームだ。これからもよろしく頼む」


 何か知らないが拍手が起こった。


 ようやく俺たちは歩き出す。

 目指すは主力陣営がいる盆地だ。


 しかし、この時まだそこで何が起こっているか。

 俺たちは知る由もなかった。



 ◆◇◆◇◆



 煙と血臭が立ちこめる中、1人の【探索者(シーカー)】が叫んでいた。


 誰かに向かってではない。

 【移声】を使い、とにかく遠くにいる兵士に声を届けようとしている。


「こちら第5師団! 主力陣営だ! よく聞け。この戦場は終わりだ。各自退却しろ。我々、第5師団は全滅した! 聞こえるか! 誰か俺の声を聞いていたら、逃げろ!!」


 兵士は這いつくばりながら、思わず地面を叩く。


「ちくしょう! なんてことだよ」


 兵士は顔を上げる。


 煙と火の向こうに影が揺らいでいるのが、見えた。

 その多くが異形の姿をして、笑っている。魔族だ。


 しかし、その異形の中で、1人人間が立っていた。

 赤い目を光らせた男は、同胞の死体を魔法で磨りつぶしながら、前に進む。


 その姿を見て、【探索者(シーカー)】は息を呑んだ。


「くそ! なんでこうなった。誰か! 誰か聞こえないのか。司令部、いや後方の大本営に連絡してくれ。とんでもないことになった。【勇者】が……。【勇者】ゼナレストが……」



 人類を裏切った……。



 陽炎が揺らぐ中、【勇者】といわれる者は魔法を発動する。



 【一騎千馬(サウザンド・ホース)



 次の瞬間、ぐしゃりと目を覆いたくなるような音を立てて、また1人の人間が轢き潰される。

 赤い瞳をした【勇者】は何事もなかったようにバラバラになった同胞を踏みつぶして、前へと進んだ。


 魔族たちと【勇者】が見据えるのは、ラセルたちがいる森だった。


これにて「外伝Ⅶ賢者の帰還」は最終回になります。

明日はコミカライズ発売記念のSSを掲載予定なります。

久しぶりに【村人】ラセルのお話になりますので、是非よろしくお願いします。


2月2日発売の『公爵家の料理番様』2巻もよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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