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外伝 Ⅶ 賢者の帰還⑧

☆★☆★ 1月19日 単行本2巻発売 ☆★☆★


いよいよ今週発売です。

猫猫猫先生のおまけ漫画掲載。さらに異世界で大暴れするラセルを是非読んでくださいね。


挿絵(By みてみん)

 キングサーペントがいることはわかっていた。


 これほど大量のフォレストサーペントが一箇所に集まることは稀だ。

 司令塔となる上位種と、俺は確信していた。


 訓練所で相当数の魔獣を倒したおかげで、俺の魔法数はすでにAランクの【魔導士(ウィザード)】を超えている。


 残るは大量のスキルポイントが必要になる上級の魔法のみ。


 はっきり言って、フォレストサーペントなんて雑魚を狩っても、俺には何のメリットもない。

 そういうのは、他の新米軍人たちに任せておけばいい。


 俺がずっと何も言わず、ぼうっと立っていたのは、そういうことである。


 そしてラシュアや335番もといスミスのおかげで痺れを切らしたキングサーペントは俺たちに向かってきた。


 囮役もしっかりこなしたというわけだ。


「欲を言えば、あともう1、2匹追加でお願いしたいのだが、久しぶりのAランクだ。この際、わがままは言わないでおこうか」


『ジャアアアアアアア!!』


 俺の魔力の高まりをケダモノは察知したらしい。

 フォレストサーペントに指示し、俺にターゲットを絞る。

 キングサーペントも巨体を揺るがし、俺に牙を剥いた。


「喜べ、キングサーペント。この魔法を使うのは、お前が初めてだ」



 【修羅葬送火】!!



 炎が大瀑布のようにキングサーペントの遥か頭上から降り注ぐ。

 そのマグマのような炎は、大蛇の魔獣たちを押しつぶす。

 巨躯を燃やすというより、解かし尽くした。


 魔獣たちの悲しい悲鳴が聞こえる。


 さらに森が飛び火し、被害を免れたフォレストサーペントの身体を焼く。それだけではなく、貴重な空気すらなくなり、魔獣を蒸し焼にしてしまった。


「ちょ……。ラセルくん! 森が全焼しちゃうよ」


 ラシュアは慌てた。

 お前だって、【竜皇大火】をぶっ放していたじゃないか。


 それにフォレストサーペントは珍しく、卵を生んで種を増やすタイプの魔獣だ。フォレストサーペントを殺したところで、その後子どもが生まれる可能性はある。

 森の中のどこかに隠された卵を捜すより、森ごと焼き払った方が早い。


 まあ、俺としても貴重な恵みをもたらす、森を焼き払うのは心苦しいがな。

 魔獣を殲滅するには仕方がない。


『ジャアアアアアアア!!』


 キングサーペントは吠える。

 身体が半分溶けかかってもまだ気力はあるらしい。

 さすがはAランクだな。


 王の名前を冠した魔獣は、牙を剥きだし、俺たちに迫る。


「ラセルくん!」


「慌てるな」



 【雷陣刃】



 雷精を帯びた刃は、キングサーペントを一瞬で串刺しにする。

 脳を射貫かれ、ついに魔獣の動きが止まった。

 ピクピクと胴体が痙攣するのみだ。


 ついに魔獣は消滅する。


 俺の中にスキルポイントを獲得した。さらに英雄的行為のボーナスも加わる。


 よし。これでまた上級魔法をゲットだ。


「ぐふっ!」


 俺が大量のスキルポイントに目移りする中、突然リーダーは血を吐く。


 その肌は青を超えて、土気色になっていた。


「リーダー……!」


「ははは……。いよいよみたいだね。あんたたち、よくやったよ。これからも生き残りな。あんたたちなら、魔族を倒して……」


「しっかりしてください! 折角、私たち生き残ったのに……」


 ラシュアは涙を流す。

 それまで悪態ばかり吐いていた335番も顔を背けた。

 278番はいつも通りだ。


 やれやれ……。


 あれだけのピンチをくぐり抜けた新米どもが、すっかり大人しくなってしまった。


「278番。聖水は持っているな」


「ん? 持ってるけど、どうするの?」


「貸してくれ」


 と言うと、278番はあっさり聖水が入った小瓶を俺に渡した。


 俺は道具袋から草を取り出す。


「ラセルくん、それは?」


「まあ、黙ってみてろ」


 俺は草を小瓶の中に詰め込む。

 軽く振った後、278番に返した。


「278番。それに【回復】をかけろ」


「一体、何をやってんだ、あいつは?」


「とりあえずラセルくんを信じよう」


 ラシュアは両手を組み、祈る。


 278番は問い返すことなく、黙って無詠唱で【回復】を瓶にかけた。


「ラシュア、リーダーに飲ませてやれ」


「え? うん」


 俺の指示通りにする。

 リーダーは半ば意識を失い、朦朧としていた。

 呼吸は浅く今にも心停止しそうだ。


 そのリーダーの口の中に、俺が作った薬を流し込む。


 時より反射的に咳き込みながら、何とか薬を飲ませた。


 すると、たちまちリーダーの血色がよくなる。

 意識も戻り、閉じかけていた瞼が開いた。


 自らの力で起き上がる。


「うそ……。苦しくない。毒が治ってる?」


「「「うそっ!!」」」


 全快したリーダーを見て、シェリム隊は素っ頓狂な声を上げた。


「あ、あれで?」

「あんなんで元気になるのかよ」

「おかしい。あんな手順で作る薬なんてないはず。それも魔獣の猛毒を!」


 一番驚いていたのは、【聖職者(クレリック)】278番だ。


 それなりに薬の知識があるのだろう。


「すごい! すごいよ、ラセルくん!」


 ラシュアはピョンピョンと跳びはね、拍手を送る。


「あの草は何? なんの魔草を使ったの?」


「ヘビナ草だ」


「ヘビナ草……。割と貴重な魔草ではないか。そんなものを持っていたのか?」


 リーダーも名前を聞いて、驚いていた。

 俺からすれば、さほど貴重ではないがな。

 その植生を知っていればだが……。


「持っていたわけじゃない。よく見ろ。森のあちこちに生えてるだろ?」


「あ。そう言えば……! こっちにも、あ、あっちにもある」


 大火を免れた魔草を見つけ、ラシュアは興奮していた。


「ヘビナ草はサーペント系の毒を受けた植物の変異種だ。魔獣の涎や体液を浴びて、育った魔草なんだよ。だから、この森にはたくさん生えてるんだ」


「ああ。そうか。ラシュアくん、時々草を摘んでいたのって」


「そうだ。ヘビナ草だ。……そしてヘビナ草は強力な毒消しになる。魔獣の毒に耐えきり、変異したとはいえ芽を伸ばしたほどだからな」


 そういう意味では、自然の力というのは偉大だ。

 可能であれば、そういう者にも勝利してみたいものだな。


「でも、聖水に毒消しの魔草を入れて、薬を作るなんて方法。教本には……」


「載ってるわけがない。これは職人と呼ばれる六大職業魔法を極めた者たちが知る、いわば裏技みたいなものだからな」


「しょ、職人」

「裏技……。それを知ってるなんて。ホントこのガキは何者なんだ?」

「さすがは『規格外(ラ・セル)』だね」


 皆が両手を上げて、参ったという。


「でも、良かった。その職人さんが裏技を発見してくれたおかげでリーダーが助かったんだから。その職人さんと、ラセルくんに感謝だね」


 ラシュアは「めでたしめでたし」という感じで、話を締める。


 まあ、それはいいのだが、その職人とやらも、かつて【聖職者(クレリック)】だった俺なのだがな。 


2月2日小説『公爵家の料理番様』2巻が発売されます。

2月6日発売のコミックス1巻ともどもよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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