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外伝 Ⅶ 賢者の帰還⑥

☆★☆★ 1月19日 単行本2巻発売 ☆★☆★


週末、書店にお出かけの際には是非ご予約お願いします。

おまけ漫画など、色々サービス精神満載ですよ。

よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 砕ける頭蓋。

 飛び散る血しぶき。

 のたうち回り、やがて動きを止める胴体。


 弱者たる人間の話をしているのではない。


 人類より遥かに大きく、凶暴な生物――魔獣の話をしている。


 Bランクの魔獣フォレストサーペント。

 俺たちに絶望を振りまいていた魔獣の頭は、たった1発の魔法で潰されていた。


「はっ……?」


 戦場のど真ん中で、間抜けな声を上げたのは、我らがシェリム隊のリーダーである。


 自分が毒の感染者であることを忘れたのか。はたまた毒それ自体が、毒であることを忘れたのか。

 先ほどまで喀血すら伴っていた咳は止まり、潰された魔獣を見て放心している。


 しかし、驚きはそれだけではない。


「まだまだ!!」


 335番の攻撃は止まらない。

 いや、止まれない。


 金鎚を【巨大化】させて、ただひたすら遠心力を使って振り回し、そのままフォレストサーペントと木をぶち抜く。


 回転は止まることを知らず、さらに周囲から襲いかかろうとしていたフォレストサーペントを巻き込んでいく。

 【巨大化】した金鎚の勢いは凄まじい。フォレストサーペントを4、5匹巻き込んでも容赦なく、金鎚による暴風の餌食にしていった。


 効果的だが、見た目よりも単純な攻撃方法ではない。


 【物体加速】をかけることによって金鎚による暴風攻撃ができているが、ポイントはそれだけではない。

 いくら加速がかかっていても、中心にいるのは335――つまり人である。


 遠心力は外に向かって力の方向が向くので、しっかり金鎚を握っていないと、飛んでいってしまう。

 だが、あんな大樹の切り株みたいな大質量を、【戦士(ウォーリア)】ではない【鍛冶師(ブラックスミス)】が持てるわけではない。


 そこで1つのポイントになるのは、ある魔法だ。


 【固定】という魔法で、文字通り物体と物体を固定できる。つまり金鎚と手を【固定】することによって、手から離れないようにするのだ。


 しかし、これも一概に簡単とは言えない。手で固定したからといって、人類の肉体が脆弱であることには代わりはない。


 骨が外れる程度ならいいが、最悪腕ごと引きちぎられる。


 回転してられる時間にも、限度があるはずだ。


「ぐぎぎぎぎぎ!! げ、限界……」


 335は魔法を解除する。

 【固定】から解き放たれた金鎚は、そのまま森の中を貫通する。何匹かのフォレストサーペントを巻き込んだが、まだ魔獣はうじゃうじゃいた。


「ぜはっ! くそ! 目が、目が回るるるるる……」


 335番は目を押さえながら、フラフラと回っている。普段であれば、ただの面白い絵面だろうが、戦場の中ではあまりに隙だらけだ。


 まあ、あの凄まじい攻撃の唯一の弱点といったところか。


「335番、よくやった。よ、よし。これなら退避が……」


「それは無理ッス」


 リーダーは一縷の望みを得たように見えたが、278番にあっさり否定されてしまった。


 335番の活躍のおかげで、周囲のフォレストサーペントは一掃できたが、忘れてはいけない、ここは魔獣の巣窟である。


 補給部隊とはいえ、その主力陣営すら手を焼いた相手である。

 そう簡単に片付くわけがない。

 まして退却など不可能だ。


 結局、最初に戻っただけ。

 精々死期が遅くなったというだけだ。


 その中で、珍しくラシュアが叫んだ。


「スミスくん、またさっきの攻撃ができる」


「スミス?」


「【鍛冶師(ブラックスミス)】だからスミスくん!」


 ラシュアよ。そのネーミングの考え方だと、世の中の【鍛冶師(ブラックスミス)】全員が、スミスさんになるぞ。


「答えて! さっきの攻撃をもう1度できる?」


 すると、335番ことスミスは手を掲げた。

 次の瞬間、放り投げた金鎚が戻ってくる。

 これも【固定】の応用だ。あらかじめ魔力を込めると、【固定】の力が戻るように仕込んでいたのだろう。


「できる、と思――――いや、できる。やってみせる!! オレはフォレストサーペントの餌になるつもりはねぇ」


「よし!」


「だが、ちょっと待て。身体を回復させる必要がある。筋肉が悲鳴をいってるんだ。回復時間に加えて、おそらくあと打てて、2回ってところだろう」


「2回なら十分だよ。それまで任せて」


「任せてって……。おい。98番? えっと? なんて言ったっけ? ラシュアだっけか? お前、何をするつもりだ??」


「だから、君が回復している間、私が攻撃担当ってことだよ」


 言うや否や、ラシュアは構えた。


 腕を地面と水平に伸ばし、手を垂直に立てる。青い瞳に炎が宿った瞬間、手の先に同じく逆巻く炎柱が現れた。


「まさか! あれは上級の!!」


「行くよ!!」



【竜皇大火】!!



 ラシュアは炎を解き放つ。

 次の瞬間、竜の形をした炎が木々を蒸発させながら、森を蹂躙していく。


 【魔導士(ウィザード)】の上級魔法【竜皇大火】は、魔族の皮膚すら焦がす苛烈な炎の竜だ。


 その熱量を前に、Bランクの魔獣を駆逐するなど造作もない。

 炎に触れた瞬間、肉体は消滅し、骨すら残さず、消滅する。

 残るのは、炭か影だけだ。


「よっと!」


 ラシュアはさらに炎の竜を操る。

 さらにフォレストサーペントを巻き込み、駆逐していく。

 さしものBランク魔獣も炎の竜とあっては、逃げ腰だ。

 意気揚々と俺たちに襲いかかろうとしていたが、動きが鈍くなる。フォレストサーペントの弱点は炎だから、効果覿面だ。


「な、なんなんだ、お前たちは? 本当に新人なのか?」


「新人ですよ」


 答えたのは、278番である。

 335番に【回復】をかけている。


「君たちは問題児じゃ」


「それも否定しませんよ。でも、問題児だからって落第生じゃないですよ。少なくとも98番と、335番の成績は訓練所でも突出してました」


「――――ッ!!」


「あ……。あと、ボクには期待しないでくださいね。【回復】しかできないので。無詠唱ですけど」


 278番の言う通りである。


 この4人は確かに訓練所では問題児だったかもしれない(俺はお行儀良くしていたと思っているが)。


 しかし、実力という点では他の新人よりも突出している。

 特に俺の目から見ても、ラシュアと335番の魔法センスは異次元レベルだ。


「よし! 治った!! ラシュア、変わるぜ!!」


 回復した335番がぐりぐりと腕を回しながら、戦線に復帰する。

 とはいえ、粗方ラシュアが追い散らしてしまったがな。


「今のうちなら逃げられるんじゃない?」


 278番が提案する。


 確かに引き時は今かもしれない。


 しかし――――。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 突然、地響きが起こるのだった。


拙作原作『ゼロスキルの料理番』5巻が好評発売中です。

週末、書店にお立ち寄りの際には是非お買い上げください(劣等職2巻の予約もよろしく!)

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挿絵(By みてみん)

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