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外伝Ⅵ カタメの男⑨

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日コミカライズ更新されました!

ニコニコ漫画で無料で読むことができますので、よろしくお願いします。


単行本1巻よろしくね。


挿絵(By みてみん)

 ん? あなた様??


 何か俺の顔に覚えがあるような言い草だが、俺にはゲルドに覚えはない。


 しかし、明らかにゲルドは動揺していた。


「いや、まさかな……。あの方はこんなところにいるとは思えぬ」


「あの方? さっきから何を言っている?」


 それともボケたのか? この爺ィ。


 俺が首を捻っていると、カタメが前に出る。


「ゲルド! 貴様、許さんぞ!!」


 ゲルドに対して激昂する。


 対するゲルドの反応は実に淡白だ。俺の顔を見た時とは違って、まるで塵虫でも見つけたかのように、目を細める。


「許さないのはこちらの方だよ、ネルワルト。うちの大事な金づるばかりを殺しおって……」


 金づる?


 なるほど。軍関係者の半分以上が外部の人間だったので気になっていたが、ゲルドは1187研究室に密かに投資していたパトロンたちを狙っていたのか。


 おそらくここの研究室を脱出する時にでも、そういった資料を入手していたに違いない。


「わしにあーせーこーせーとうるさい連中だったが、いい金づるだった。1187研究室の良い隠れ蓑だったのに、お前のせいでミリアスに知られたではないか」


 軍の出資者が1187研究室のことを隠匿していたために、ミリアス司令官ですらその資料を閲覧できなかった。


 だが、カタメが殺したことによって、明るみになったわけだ。

 ざまぁだな。


「というか、貴族の屋敷でミリアスを狙う必要はなかったんじゃないのか?」


「ん? オレはミリアス司令官に興味はない。漏れてきた情報では、ミリアスとゲルドが参加すると聞いていた」


 おいおい。それは俺が知らない情報だ。


 あの狸司令官め。

 ゲルドの情報をわざと伏せていたな。


 俺が1187研究室のことをしれば、研究室がぶっ潰されると思ったのだろうか。


 まあ、その予想通りのことが起こっているから、何とも言えないがな。


「ねぇねぇ。ちょっと! ラセルくん。そろそろ私の存在に気付いてよ」


 横を見ると、ラシュアが半泣きになりながら俺の方を見つめていた。


「なんだ、お前いたのか?」


「なんだはないでしょ! 怖かったんだから!!」


 お前、仮にも軍人だろ?


「まあ、良い」


 ゲルドはほくそ笑む。


 テーブルにおいた注射器を持ち出し、怪しげな溶解液をスポイルする。


 適量を吸い取ると、指先でトントンと叩いた。


「こうなっては、わしも死罪になるしかない。死の体験できることは、わしにとって喜びじゃが、その前にわしもまだ味わってないものがある」


「貴様、何をするつもりだ?」


「ダメだよ、ラセルくん! それを打たせちゃダメ!!」


「何をする? 決まっておろう。力だ。圧倒的力を手に入れるんじゃよ」


 ゲルドは注射器を自分の首筋に打つ。迷うことなく押し込むと溶液が体内に入っていった。


 ダラリ、と腕が垂れ下がり、溶液のなくなった注射器が地面に落ちて割れる。


 ゲルドは何か小さく呻くだけ。

 失敗かと思ったが、そうでなかった。


「ふ……。う……うう……。うぉおおおおおおおおおおおお!!」


 ゲルドは絶叫した。

 白い湯気を吐きながら、ゲルドの身体が爆発的に膨らんでいった。


 一瞬にしてカタメの背丈より大きな体格に、悪魔的ともいえる筋肉、爪は刃のように鋭利に光り、足の爪は猛禽のように曲がって床を噛んでいる。


 髪の毛は抜け、瞳からくろ目がなくなり、口に牙が生えていた。


 もはやゲルド・ワッド・ポリジャーという研究員の姿はない。

 俺たちの前に立ちはだかったのは、単なる化け物だった。


「ふはははははは! 素晴らしい! こんなに気持ちいいのは久しぶりだ! あははは……。わしはなんともったいないことをしていたのだ。こんな素晴らしい力を、他の者に分け与えていたなんてな」


「ゲルド……。貴様……」


「ネルワルト。お前も同じ気持ちだったのか? 実にうらやましい! その手で,軍関係者とはいえ無辜の人間を殺した気分はどうだった」


「黙れ!! 貴様、ここで倒す」


 カタメは怒りに流されるまま、ゲルドに突っ込んでいった。


 手に【硬度上昇】【鋭利】の魔法をかける。そして、【筋量強化】を唱えると、【加速】をかけて、力の限り拳を振るった。


 ギィン!!


 冷たい音を立てて、あっさりと弾き返される。

 普通なら分厚い鋼板ですらあっさり断ち切れる魔法のレパートリーだ。


 しかし、ゲルドの身体は簡単にカタメの攻撃を弾いてしまった。


「カタメ、どけ」


 俺は手を掲げる。

 すでにその手の平には、赤い紅蓮の炎が宿っていた。



 【竜皇大火】!



 名の通り、竜のブレスを思わせる大量の炎が研究室に渦巻く。

 直撃を食らったゲルドが立っていられるはずもなかった。


 しかし……。


「かっかっかっかっ!」


 炎の中から高笑いが聞こえた。


「上級魔法すら涼風とはな……。なった! わしはなったぞ。最強に、世界最強になったのだ!」


「さて、それはどうかな」


「何?」


 ゲルドが気付いた時には、俺はゲルドの肩に乗っていた。

 持っていたのは、先ほどゲルドが打った注射器である。すでに例の溶液が注射器の中に貯まっていた。


 それをゲルドの舌に突き刺す。


 いくら外殻が硬かろうとも、舌までは硬くならなかったらしい。

 そもそも舌まで硬くなっていたら、まともに喋られないだろうがな。


「ぎざば!!」


 ゲルドは反射的に俺を振り払う。

 少しダメージを負ってしまったが、問題ない。俺はひらりと空中で回転し、着地した。


 逆にゲルドは「げげげげ」と声を上げながら、身悶えている。必死に吐き出そうとしているが、直接体内に押し込んだので、吐き出すことは困難だろう。


「ぎざま゛! なう゛ぃをじだ」?」


「なーに。お前が嬉しそうに注射を打っていたのでな。注射が好きそうだったので、俺が代わりにもう1本打ってやろうと思っただけだ」


「なっっっっっっ!」


 ゲルドは絶句する。


 だが、惚けている暇はない。

 次々と身体にいれた食事や、水が吐き出される。中には食べ物かあやしい骨まで入っていた。


 異臭が立ちこめる中で、カタメは尋ねた。


「小僧、一体何をした?」


「難しいことはしてない。注射を打っただけだ」


「おじいちゃんに何が起こってるの?」


 ラシュアも息を飲む。


「簡単だ。薬物過剰。薬の飲み過ぎだ」


 ゲルドは狂人のような性格でありながら、非常に丁寧に注射器に淹れる溶液の容量を守っていた。


 つまり、薬物を入れすぎると、何かしらの危険なことが起こるということだ。

 察するに、細胞異常が起きたことによるなんらかの病気が発症したのだろう。


 そもそもこういう合成生物は、毒や菌に弱かったりする。


 生まれたばかりなので、免疫ができてないのだ。


 そんな身体に、薬を再投与すれば、反発が起きて当然である。


 ゲルドは身体が膨らみ、萎む。それを繰り返し続けた。

 すでに身体が耐えられなくなっている。口や鼻、瞳からも血を流していた。


「ぎざばぁぁぁぁああああ!」


 ゲルドは叫ぶ。


 だが、それが老人の断末魔の悲鳴となった。


 身体が維持できず、ついには泡スライムのようにとろとろになって、身体に染みこんでいく。


 残ったのは、強烈な腐臭であった。


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挿絵(By みてみん)

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