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外伝Ⅵ カタメの男⑦

☆★☆★ 本日コミカライズ更新 ☆★☆★


ニコニコ漫画にてコミカライズ版が更新されました。

ついに魔獣討伐を開始です。是非お読み下さい。


コミック1巻も好評発売中。こちらもよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

「魔瘴の森か……」


 眼前に広がるのは、黒い霧で覆われた森だった。

 王都から少し離れたところにある禁足地で、ご覧の通り呪いや、人間には毒でしか反魔力が渦を巻きながら、森の中を漂っている。


 如何にも曰くありげな場所だ。

 一体何をどうしたらこんな危ない土地にできるんだ?

 まだ中に入っていないのに、死臭がすごい。鼻がもげそうだ。


 常人の精神なら、5分ともたないだろう。


「本当にこんなところに、政府の機関があるのか?」


「ああ……」


 俺の側にいるカタメは、おもむろに魔瘴の森へと歩き出す。

 俺はその背中を追いかけた。


 表情も変えずによくこんな森の中に入ろうとするな、と思ったが、絡繰りはすぐにわかった。


「【強制認識】か……」


 【学者(プロフェッサー)】の魔法である。

 人の認識を操作することができる魔法で、たとえば「ここに近づくな」と命令すれば、様々な感覚からその認識を強制的に脳に書き込むことができる。


 俺が入りたくないと思ったのも、そのためだ。


 その【強制認識】が領域展開されて、森一帯を包んでいる。


 絡繰りがわかれば造作もない。

 俺は指先をナイフで切る。

 その痛みにすべての感覚を集中させると、【強制認識】の魔法をはずした。

 森にかかった【強制認識】を別の命令に上書きしたのである。


 【強制認識】は割と汎用性が高い魔法で、【学者(プロフェッサー)】においては主戦力となる魔法ではある。だが、こうやって魔法効果を簡単に外せるところが、弱点だ。


「ほう。【強制認識】を外したのか? ひよっこにしてはやるな。訓練の賜物か?」


「まあ、そんなところだ、先輩殿」


「ところで、本当にゲルドが1187研究室に戻っているんだろうな」


「ああ。間違いない」


 俺はしれっとウソを吐く。


 実はゲルドがここに戻っているかは確証はない。

 というかゲルドなど、後でどうとでもなる。

 俺が興味あるのは、1187研究室の全容だ。


 何を馬鹿なことをしているか、笑いにきたのである。


(つまらないものを作っていたら、即刻叩き潰してやる)


「お前、ミリアス司令官の命令で動いているといったな。他に援軍は?」


「ない。俺だけだ。……そもそも軍の中で誰が味方かわからん。司令官ですら、俺は信用していない」


「2人か」


「なんだ? 子ども1人では不服か?」


「大いにな……」


 すると、カタメは構えた。


 森が動く。いや、木が動いているのか?

 おいおい。ここには軍の施設があるんだろう? どうして、魔獣なんかがいるんだよ。


 枝葉が動き、太い幹には顔が現れ、口には牙が光っていた。


「人面樹ウッドガルか……」


 それもかなり大きい。

 俺が知るウッドガルには、幹1つに1つの顔がついているが、このウッドガルには、無数の顔がついていた。


「気を付けろ……。この森の中は、1187号室が作った合成魔獣の巣窟になっているぞ」


「それを早く言って欲しいものだな」


 不平を漏らすと、次の瞬間ウッドガルの枝葉が伸びてきた。

 俺はギリギリを見極めながら冷静に躱す。

 あっさりと何を逃れたが、後ろの岩がバラバラになってしまった。


「枝が刃になってるのか?」


 キラーブレードあたりを合成したのだろうか。

 とんでもないキメラ魔獣である。


 やや気落ちしていると、今度は茨の鞭が飛んでくる。

 咄嗟に避けたが遅い。

 右手首に茨の鞭が絡まった。

 すると、暗い森の中で炎が灯る。

 見ると無数の茨に包まれた植物魔獣の口に、真っ赤な炎が揺れていた。


「今度はファイアローズの亜種か!」


 発射(ファイア)とばかりに炎を吐き出す。


 俺に向けて、炎のブレスを放った。


 火塊が大きい。

 まさか竜種と掛け合わせたとか言うまいな。


 ドンッ!


 白煙が上がる。

 ファイアローズは楽しそうに踊るが、白煙の中から出てきたのは、カタメだった。


「ふんっ!!」


 拳を振るうと、ファイアローズの亜種はスパッと切れる。

 そのまま消滅した。


「どうした、小僧。オレと戦った時の勢いがないように見えるが……」


「ああ。まったくその通りだ。俺は優しいのでな。余計な殺生をしたくないのだ」


「そんな顔には見えないがな」


 正直に言うと、やる気が出ない。


 相手は合成魔獣。つまりは人工的に作られた魔獣である。過去の例でいうと、こういう魔獣は経験上、スキルポイントが入らないことがある。


 はっきり言うが、俺が何故こんなややこしいことに頭を突っ込んでるかといえば、すべてはスキルポイントが目的だ。


 1187研究室のようなところを壊滅させれば、英雄行動としてスキルポイントがもらえる公算が戦い。


 あとのコスパが悪いヤツは、いらないのだ。


「一応訊いておくが、カタメ。この魔獣を倒したら、スキルポイントはもらえるのか?」


「は? スキルポイント? 何故、今そんな話を……」


「まず俺の質問に答えてくれ」


「? おそらくだが、スキルポイントは入る。そうだな。ベースとなる魔獣の1.2倍ぐらいのポイントが入るんじゃないのか。ここの合成獣は高いんだ」


 ほう……。それはいいことを聞いた。


 その時の俺は目をキラキラさせて興奮していた。


「よし。ならばいただこう」


「はあ? 何をだ?」


「決まっている……」



 全部だ。



 俺は手を掲げる。

 そして魔法を唱えた。



【竜皇大火】



 竜の姿をかたどった炎が、魔瘴の森を貫く。

 さらに紅蓮の炎を辺りに放出すると、一気になぎ払った。


「なっ!」


 片目を開けたカタメが息を飲む。


 森だった場所は残っているが、丸裸といっていい状態だった。


「りゅ、【竜皇大火】だと……。たかだか10歳の言葉が、上級魔法??」


 ふう……。


 【魔導士(ウィザード)】になって、初めて上級魔法を実戦で使ってみたが、思ったよりも魔力が減るな。だが、これぐらいなら魔力回復薬を飲めばすぐ回復するだろう。


 俺は自前の魔力回復薬を一気飲みする。


 さて、スキルポイントはどれぐらい入ったかな。


「うっっっはぁぁぁあぁああ!!」


 おお! 思ったより大量ではないか。

 これは大盤振る舞いした甲斐があったというものだ。


 かなりのポイントが入っている。

 炎で一掃されたということは、植物系の魔獣が多かったと見ていいな。


 しかし、なかなかの狩り場だな。

 もう少し残しておけば良かった。


「お、お前……」


「ん? なんだ、カタメ?」


 ステータス画面から顔を上げると、カタメが固まっていた。


 初めて見せる顔だ。

 なかなか面白いぐらいに硬直している。


「な、なるほど。10歳で【竜皇大火】を使えるだけあるな」


 カタメは1人納得していた。


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最強ハンターによる三つ首ワイバーンのハンティングを網羅したお話になっていますので、

気になる方はこちらも是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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