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外伝Ⅴ 視察③

☆★☆★ 単行本1巻 7月19日発売 ☆★☆★


ついに『劣等職の最強賢者』単行本1巻が発売です!

すっっっっっっごい綺麗な表紙に加えて、p7に亘るおまけ漫画も掲載。

もちろん、内容も最高なので是非お買い上げ下さい。


挿絵(By みてみん)



コミカライズもニコニコ漫画で更新されました!

そちらも是非!!

 職人とは、平たく説明すると職業魔法を自在に使いこなす達人のことだ。


 職業魔法はすべての魔法を習得するのに、大量のスキルポイントが必要となる。だが、すべての魔法を習得したところで、まだ中の上といったところ。


 魔法の種類があったところで、すべて使いこなさなければ、意味がない。さらに言うと、使いこなしても精々上の下だ。


 上には上がいる。もはやそのレベルになると、変態的あるいは狂信的な使い手として見られる。


 それが「職人」である。


 〝職〟業魔法を使う達〝人〟というところから、この名前が使われ始めた。


 おそらくこのミリアス司令官も、その1人だろう。


「【変性】ですね」


 俺はミリアス司令官の動きの絡繰りをゆっくりと暴き始める。


「【変性】の魔法によって、足元の摩擦力を極限にまで落とし、構えたままゆっくりと俺に近づく」


 人の目というのは、かなりいい加減だ。

 そして、厄介なことに経験値が高い人間ほど目に頼ってしまう。


 実は距離感という感覚はあまり当てにならない。大概の場合目が勝手に手の動きや足の動き、音などの情報から得た結果によって推測されたものが距離だ。


 静止状態にあるものと、動作状態にあるものとでは距離感が狂うのはそのためである。


「構えたまま近づき、俺の距離感を狂わせた上で、間合いに入った途端、逆に足元の摩擦力を上げて、一気に踏み込み、拳打を繰り出す」


 恐ろしいのは、短い時間で【変性】を繰り返し、自在にオンとオフを切り替えているところだ。


 少しでもタイミングを見誤れば、隙ができるし、摩擦力を上げる時も、拳打のインパクトに合わせないと、威力が伝わらなくなる。


 靴に【変性】をかければいいから、部分的な制御は難しくないものの、それでもやってることは、普通の【鍛冶師(ブラックスミス)】よりも抜きんでているだろう。


「君、本当に10歳かね。私にはそう思えぬ。こうやって拳を突き出してわかったが、君には老将の風格がある。私などよりも遥か高みにあるように感じたが……」


「意味がわかりません。戸籍を調べたければ、勝手にどうぞ。いずれにしても、今俺はあなたと戦っている。それが事実です」


「なるほど。確かにな。……失礼した。無駄話はこちらとしても好かぬのだが、好奇心が抑えられなかった。では――――」


 そう言って、ミリアス司令官はまた構えを取る。


 また錯覚を利用した接近方法かと思ったが、次の瞬間地面を蹴っていた。


「速い!!」


 とても老人の動きではない。消えたと思ったら、すぐ俺の側面に現れた。


 今度は逆だ。


 走力とのバランスを取りつつ、摩擦力を上げたのだろう。足が地面に設置した一瞬だけ、摩擦力を上げて、地面を蹴る力を大幅に上げている。


 魔力制御のしんどさでいえば、先ほどの比でない!


「ジャッ!!」


 司令官の拳打が横合いから襲いかかってくる。俺は利き足を軸にしながら逆足を回して半身姿勢を取る。身体を反らしながら、ギリギリで躱した。


「何????」


 気付いた時に、吹っ飛ばされていた。


 体重の軽い俺の身体はまるで綿毛のように中空へと放り投げられる。


 体重の軽さは、俺の今の弱点と言わざるを得ない。


 だが、おかげで司令官との距離が生まれた。


 【突風】


 風の魔法を使って、体勢を整えると、すかさず司令官に向かって、手をつきだした。


 【雷陣刃】


 司令官を中心に青白い魔法陣が浮かび上がる。

 次の瞬間、雷属性を纏った刃が、四方から司令官に襲いかかった。


「ぬっ!!」


 ドンッ!!


 爆発音が訓練場に響く。


 黄ばんだ歯を見せながら、優雅に感染していた教官たちは腰を抜かしていた。

 目と歯をむき出して、直撃を受けたと思われる司令官の方を見る。


 場内が騒然とする最中、俺は地上に降り立つ。すると、まさしく突風が吹き込むと、土煙を散らした。


 現れたのは、真っ黒になった司令官だ。


「「「ミリアス司令官!!」」」


 教官たちは声を揃えたが、俺は油断しない。


「【鉄化付与】か」


 炭化したと思ったミリアス司令官からボロボロと黒いものが剥がれ落ちる。


 中から現れたのは、無傷のミリアス司令官だ。


「ふう。今の焦ったな。まさかカウンターを加えてくるとは。驚いた」


「それはこちらの台詞です。雷属性の魔法を、【鉄化付与】だけで乗り切るなんて」


 俺の【雷陣刃】が当たる瞬間に、全身に【鉄化付与】を施し、雷を身体の外側だけに通して、地面に逃がした。ダメージこそゼロではないが、まともに受けるよりは遥かに少なくて済む。


 実に、合理的な防御術だ。


「さっきの拳も【震動付与】ですね」


「ほう。あの一瞬で気付いたか」


 武器の周りに微細な震動効果をもたらす【鍛冶師(ブラックスミス)】の魔法だ。


 本来は武器に使うのだが、この司令官殿は自分の拳だけに付与していた。


 肉体に付与するのは難しいことではないが、その場合全身に付与してしまう。全身に微細な震動など、立っていることも難しいが、魔力制御をして拳に集中させれば、問題はクリアできる。


 まあ、その魔力制御を一朝一夕でできるものではない。

 下手をすれば、拳自体が震動で吹き飛ぶ可能性すらある。


 それを平気な顔でやってのけているのだ、この人は。


「毎度、君の分析力には驚かせるな。弟子の中でも気付くのに、5度10度立ち合わなければわからない者もいるというのに……」


「凡俗と一緒にしないでいただこうか」


「凡俗か……。確かに。君の実力であれば、そう称しても問題なかろう。だが、ここの教官に君の鼻っ柱を折ってくれと言われている手前、君には少々教育というものを施さなければならない。立場的にね」


 ミリアス司令官は三度構えるが、先ほど吹き飛ばしてくれたおかげで、十分な距離を取れている。


 さすがに、この距離を詰めるのには時間がかかるし、手の内も相当読めてきた。


 後はどうやってこちらが仕留めるかだ。


「またごちゃごちゃ考えておるな」


「え?」


 気付いた時には、司令官の拳が目の前にあった。否――訂正しよう。司令官の拳だけが(ヽヽヽ)あった。


 司令官の位置はそのまま。

 拳と腕だけを伸ばして、俺に向けて発射した。

 【鍛冶師(ブラックスミス)】の魔法【伸縮】だ。


「くそ! もはや雑伎だぞ!!」


 俺は躱そうとしたが、完全に虚を衝かれた。こめかみをかすめる。だが、そこには【伸縮】だけではない。先ほどの【震動付与】まで加わっていた。


「やばい!」


 思った時に遅い。

 脳が揺さぶれ、視界が歪み、さらに多重に見える。


 俺の意に反して体勢が崩れる。

 そこに追い打ちをかけるように、司令官が詰めてきた。

 飢えた狼みたいに、瞳をぎらつかせ、俺に向かってトドメを刺そうとする。


 まずい! やられる。


 まさか……。

 こんなところで俺がやられるのか?

 まだ身体が未熟とはいえ、老将に負けるというのか?

 敗北もまた糧にある。


 いやだ! 俺の目的は六大職業魔法の習得。そして世界最強になることだ。


 有利不利関係なく、こんなロートルに土を付けられるなどあってはならない。


 今の俺が許しても、過去の俺がそれを許さない。


 いや、そもそも……。


 俺はまだ自分の限界を超えていない。今、相手が俺の限界を出せないように振る舞っていたとしても、己のすべてを出さずして、敗北などあり得ない!


 何かまだあるはずだ。


 考えろ。


 敗北の瞬間まで、俺は敗北者ではない。


 その時、時間の感覚がふと遅くなったように思えた。今際の際に見るという走馬燈的な感覚なのだろうか。


 やたら司令官の拳が遅く見える。


 最中、俺は必死になって思考を巡らした。

 すると、ふとある単語が目の前に現れる。


【スキルポイント】


 魔法を獲得するために必要なポイントのことだ。主に魔獣を倒す事によって得ることができる。


 ほんの一瞬、俺はポイントをぼんやりと見つめる。


 そして、スキルポイントの総量を見た。かなりのポイントがたまっている。とある魔法を得るために、ずっと貯めていたのだ。


 むろん、その魔法はまだ手に入るほど貯まっていない。だが、すべてのスキルポイントを使って、今この状況を打開できる魔法を見つけた。


「これしかない!!」


 戦闘の中で、俺はスキルポイントをすべて使い尽くす。


 そしてある魔法を取得した。



 ◆◇◆◇ 司令官 視点 ◆◇◆◇



 ブンッ!


 ミリアス司令官の拳が空を切る。


 完全に捉えたと思った。

 相手の体勢も完全に崩れていた。

 なのに、一瞬前に172番が消えた。


「どこだ?」


 司令官は周囲を見る。

 ふと周りの視線が、上を向いている事に気付いた。

 【震動付与】を受けて、また空に飛ばされたか。


 そう考えながら、ミリアス司令官は空を仰ぐ。


「なんと!!」


 ミリアス司令官の片目が驚愕で見開かれる。


 172番は荒い息を繰り出しながら、空にいた。

 跳躍したわけでも、吹き飛ばされたわけでもない。


 飛行していたのだ、空を。


「【浮揚】か!」


 その声を聞いて、魔法の感触を確かめるように空を自在に飛び回っていた172番は制動をかける。


 人類側の最高司令官を見下ろしながら、172番は口端を吊り上げた。


「高い所から失礼……、司令官殿」


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