限界突破は極限に
朝出す予定でしたけど起きれなさそうなんで今出します、すみません。
声をかけるに決まっている!命が一つなくなったら困る。
カーテンから顔を出して声をかける。
「おいそこの二人!何してる!?危ないぞ!」
二人とも笑いながら喋っている。くそ、聞こえていない!
「なんだ、あれ」
後ろから、人形の蜘蛛?
蜘蛛の体を持ち、その上に人間の上半身を生やしている化け物。アラクネと呼ばれる化け物を地球で聞いたことがある。それと似ている。大きさは俺なんかよりも倍くらいはでかい。
「危ない!逃げるんだ!」
駄目だ聞こえない。ここの馬車の能力なのか?
ここから出て、今さらこの二人を助けようとして、俺に何ができる?魔術を使えない俺が、刀も扱ったことがない俺に何ができる!?
「!エリ!モンスターだ!逃げよう!」
「う、ああ」
妹の方が腰を抜かしてしまった。
「アハ、アハアハ、カワイイネ」
アラクネは女の子の方を優しくつまみ、小さなお腹に足を刺した。
「エリー!やめろぉ!」
お兄ちゃんがアラクネに立ち向かう。
駄目だ、君じゃ勝てない。だってそんなに大きいんだ。君に何ができる?逃げて、せめて君だけでも。
「ウフフフ、コノチ、オイシイ」
お腹から足を抜き、その血を丁寧に舐めている。
「キミ、ジャマ」
「あがっ!」
男の子は、足で軽くあしらわれ、何メートルも吹き飛ばされた。
「はぁ、はぁ」
深呼吸、しろ。動けよ、俺。死ぬぞ?人が死ぬ。これを見過ごしていたら絶対に死ぬ。
俺は足に力を込めて立ち上がり、刀を持って馬車から出る。
俺ができるのは、不意打ちぐらいだ。今アラクネは女の子を丁重に扱っている。美味しくいただきたいのだろう。
刀を抜いてから切っては、音でバレるかもしれない、抜刀だ。抜刀術なんて使えないけど、できるという確信がある。
刀を握ると、何故か力が溢れてきた。頭の中まで熱くなる。
俺はアラクネの後ろに立ち、抜刀する。
これが、シンケンリュウだ、そう頭の中に聞こえた。
「死ね」
思いっきり刀を抜いてアラクネを切り裂く。
アラクネは一瞬で真っ二つになった。
俺が抜いたところは地面もえぐれていた。
案外、俺強いのか?
「って痛い!痛い!痛い!」
右腕がぐちゃぐちゃになっていた。赤黒くなっていて、力をこめることができない。
「っ!ほいっ」
女の子が地面に落ちるところを飛び込みキャッチ。
ぁあああ痛い!右腕超痛い!
「ごふっ!」
「君のお兄ちゃんも助ける。だから気を確かに持って!大丈夫だから」
そうだ、こんな時こそ、魔術だ。俺の魔術は『催眠』。この血の量はやばいが、脳をだませばまだ生きながらえる可能性がある!
「大丈夫だよ、君の怪我はもう治る。痛くないんだ。痛いの痛いの飛んでけ!ほら、痛くないでしょ?」
俺は血塗れのお腹をなでて誤魔化す。痛くない、怪我なんかしていないと。
「うん、痛くないね」
「そうだ、今すぐお兄ちゃんを助けるからな!ちょっと待ってて!」
俺は自分にも自己催眠をかける。痛くない、今はそれどころではないと。
自分自身の痛みもなくなっていき、動かせはしないが痛みに邪魔はされなくなった。
男の子は蹴られてはいたが、生きてるはずだ。血反吐は吐いていなかったし、脊髄や脳に異常がなければ!
「君!目を覚まして!早く!」
俺は悟った。もう女の子の方は無理だと。いくらなんでも血の流れる量が尋常じゃない。もう少しで死んでしまう。だからせめて、話させてあげなきゃ。
「んん。あれ、あの化け物は。エリ?エリなのか?大丈夫なのか!?」
「うん、お兄ちゃん!もう痛くないんだよ!だから大丈夫なんだよ!」
ごめん、ごめん、ごめんよ。
でももう少し耐えてくれ。もしかしたら馬車にポーションみたいなものがあるかもしれない。
「でもエリ、血がすごい出てる」
「二人とも、ついてきてくれ」
すまない。本当にすまない。
「お兄さん誰?」
刻一刻とこの子の寿命は縮んでいるんだ!
「何も聞かないで早く来てくれ!」
二人を無理やり引っ張って連れて行く
「あれれ、本当だ。なんか、目の前もチカチカしてきた」
やばい、死ぬ。これは危険すぎる。
この箱達は開けていいのか?もしかしたらポーションなんて便利な物があるかもしれない。
「君、ポーションって知ってるかい?」
「あ、うん。知ってる!」
「じゃあ箱を開けるから探してくれ。どんな形をしているんだ?」
「普通はビンとに入ってるよ。でもこれ」
箱を開けてみると、全て財宝と呼べる物だった。
全部の箱を調べても何も変わらなかった。
「ねぇ助けて!妹を、エリを助けて!」
男の子は俺の胸にしがみついている。
ごめん、俺のせいだ。俺にあんな力があるとわかっていれば、君を、エリちゃんを無傷で助けられたのに。
ビビらなければ、二人を助けられたのに
俺の魔術ではどう頑張っても傷の修復なんてできない。
ごめんな、弱くてごめん。
「アカザ、大丈夫?」
「っ!シャルルさん」
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