第七話 終わりの時。
夜鈴は風に桃色の衣をなびかせ、空を見上げた。
(星々よ、どうか私に力をお与えください。)
夜鈴は空に手を差し伸べた。そして星々は、応えるかのように強く輝いてた。
(皆様、今までありがとうございました。そして友羽様、どうか幸せになってください。)
友羽が外に出た時、夜鈴は今にも舞わんとしていた。友羽はおもわず叫ぶ。
「鈴!夜鈴!駄目だっ!死んじゃ駄目だっ!」
ハッと振り向いた夜鈴の口がかすかに動く。
”ごめんなさい。”
駆け寄ろうとした友羽は見えない力に弾かれた。夜鈴は寂しげに微笑むと、舞い始めた。小さな声で祈りを唱えながら。
「待宵望十六夜十五夜既望立待月居待月寝待月二日月三日月蒴新月初月上弦十日夜十三夜更待月下弦二十三夜待二十六夜朔望月寒月月天心雨月雪待月薄月名月天満月月白白道月下月夕月前月影月暈玉兎月輪、汚れしものここに祓い清めよ。夜天光大気光星野光夜光雲対日照、天空初空空悋気碧空杞憂御天道白虹朝朱暁光朝影朝曇夕闇夕影斜陽夕紫残照春一番東風南風青北風西風貝寄風野分青嵐初風挟霧春霞夕靄浮雲余所豊旗雲雲紫雲海小糠雨驟雨慈雨春霖暗雲春雷稲妻雷鼓風花細雪雪垂残雪、邪悪なる汚れ払い封じよ。我が祈りの元輝けり星々、ここに我が願いを叶えよ。我と共に舞たまえ。黒煙の中に輝けるは五星、黄の光の元朱青白黒の光重なりて、清めの光とならんことを。祓え給え清め給えと祈らんことを。我が願え叶え給え。火精霊、水精霊、木精霊、金精霊、土精霊、月日神。我が祈りの元、悪しき者を清めよ。封じられし月の清き力ここに解き放ちて、聖星と共に汚れし地清めんことを。月に重なる汚れたる星ここに浄化せん。月に重なりてそれを汚し邪悪なる力の通い路とせること、罰を下しここに清める。光陰も寸陰に足らず露の間と呼ぶに当たる。悠久の時を超え星霜と共に生する。我永安を祈りここに舞う。黎明と共に悪しき者の力を封ずる。初夜を星々が迎えると共に儀は始まる。星々に月に祈りを捧げここに唱へる。花々よ美しく在り給へ。草木よ風にそよぎ給へ。鳥よ高く囀り給へ。川よ清く流れ給へ。時の彼方の力よ。美しく空に舞い給へ。時を数えし我ここに祈る。すべての者を救い給へ。生命の星々我命散りゆく時、この地に舞いて浄化の光放たんとせん。我舞いと生命捧げ我祈る、雷鳴高光月星雲河霊木風樹よ。」
すべての舞いが終わると、夜鈴は静かに倒れた。それと同時に結界も消える。
友羽は駆け寄って抱きとめる。
「鈴っ!夜鈴っ!」
夜鈴は絶え絶えに息を吸いながら言った。
「友羽様、あなた、に、出逢え、て、よかっ、た。……‥‥」
その後の言葉を聞き取れず、友羽は夜鈴に顔を近づける。夜鈴は切れ切れに繰り返した。それを聞いた友羽の瞳から涙がこぼれおちる。そして友羽もその言葉を繰り返した。夜鈴はもう一度微笑み、目を閉じた。
「夜鈴、君の願いが叶いますように。僕も同じことを祈る。」
友羽はそっと夜鈴に口づけした。
その時、月はなんとも言えない輝きを放った。まるで虹のような美しい色だった。夜鈴の願いは叶えられたのだった。そう、ヒダマリは封じられたのだ。
夜鈴の魂の欠片は永遠に境界にとどまりヒダマリを封じるだろう。世界を守るために。