有名な心霊スポットに行ったけどホラーフラグが全部ヘシ折れてた
先日友人と有名な心霊スポットに肝試しに行ってきた。
テレビ番組でもよく紹介されていて怪しい自称霊能者達がこの場所は危険だ! と言っていた場所だ。
今は使われていない山の旧道にあるトンネルが心霊スポットなのだという。
その山は古戦場で亡くなった武士たちの怨念が渦巻いているという話だった。
友人は10年ほど前に行った事があるらしくちびりそうだったと言っていた。
トンネルの少し前にボロボロに朽ち果てた民家がありその光景が余計に恐怖心を煽るらしい。
もう使われていないトンネル内は真っ暗で夏なのに涼しく老朽化したトンネルが声を不自然に反響させて亡霊のうめき声の様に聞こえるのだという。
トンネル内で明かりを点けず右手をトンネルに触れて反対側の出口まで暗闇をひたすら歩く、考えただけで恐ろしい。
私はビビリなので話を聞いただけでちびりそうだった。
車はどんどん山奥に進み目的地のトンネルに近付くにつれて後悔の念が押し寄せてきた。
なぜ、かわいい女の子とではなくむさい男同士で心霊スポットに向かっているのだろう。
目的地に向けてどんどんテンションが下がって行き、件の朽ち果てた民家に近付いていると言われテンションが最底辺に近付いた時それは起こった。
そう、ホラーフラグ全崩壊である。
朽ち果てた民家はお洒落な別荘風の建物にリフォームされていたのだ。
友人は苦笑いをしながら「トンネルは怖いから」と言った。
もうすぐトンネルと言う所で大量の路上駐車した車が目に入ってきた。
エ〇ザイルがそこらじゅうの車から爆音で垂れ流されており、チャラい男女がトンネル付近をうろちょろしていた。
トンネル内も大量のLEDライトの明かりとチャラカップルの馬鹿笑いがそこらじゅうに響いていた。
心霊スポットというより下品な野外フェスの会場状態であった。
友人を睨むと露骨に目をそらされた。
どうやら友人が来ていなかった10年の間にテレビで紹介されすぎて多くの人が来るようになり心霊スポットとしての意味を成していなかったようだ。
怖いな、嫌だなと思っていた、怖くはなくなった。
でもね、さすがにこれは無いよね。
車で数時間かけてこれは無い、久しぶりに本気の殺意を覚えた。
私は怒りの余り顔の表情が固まり筋肉が盛り上がった。
友人に「下調べとかしなかったの?」と聞いた。
「前に来たことあるから大丈夫だと思って」と彼は蚊の鳴くような声で言った。
ここでコイツを殺って新しい心霊スポットを作ろうか、という考えが一瞬頭をよぎったが何とか我慢した。
それからまた数時間かけて家まで帰った。
その友人が肝試しどうだった? と尋ねられた時こう答えたらしい。
鬼のような顔をした私と数時間車でふたりっきり、10年前に行ったトンネルより怖かった。
私は心霊スポットに勝ったらしい。
余談だがお詫びに焼肉を奢ると言われた私はすっかり機嫌を直し帰りの車は和気藹々と楽しく過ごした。
友人め盛って周りに話しているな、けしからん! 本当だよ、僕怖くないよ。