二.意を示すこと
帰還しようとしていると言ったな。
あれは嘘だ。
すでに軍は許都へと帰還していた。
曹操は都へ凱旋すると、例によって、功ある将士に恩賞を与え、問題のあった将兵には罰を与えた。
それが終わると、今度は凱旋パーチィーである。
呂布という大乱発生兵器を討ち破ったことは、都民たちに安堵を与え、都を挙げての三日三晩の祝祭となった。
「―――劉備殿。此度の戦、誠に苦労であった。貴公の援助が無ければ我が軍はもっと苦戦していたであろう。」
祭りの最中に、曹操は劉備と酒を酌み交わし、彼に礼を述べた。
「貴公の此度の活躍を賞し、貴公のかつての領土・・・そう、呂布が君から奪い取った徐州の地を、再度、君が治めるよう帝に奏上してみよう。」
「曹操様・・・感謝至極にございます。」
劉備は拱手すると、彼に対して深々と頭を下げた。
この劉備の誠実な態度を見た曹操は、
(これで良し。―――英雄たる彼には厚遇を持って接するのだ。決して傲慢になってはならない。)
と、自身に戒めのように言い聞かせたのであった。
―――曹操は劉備を高く評価していた。
平定の最中、徐州の地を訪れた際、徐州の民一同から、
「劉備様を、再度、徐州の太守に任命して下さい!オナシャス!!」
という要望が上がった。
劉備の善政は民からの信頼を勝ち得ており、彼は民から深く愛されていたのだ。
民心の中に根を持つ劉備の信望に、曹操は妬みに似た感情を抱きながらも、彼を高く評価した。
(劉備・・・恐ろしい子!!)
(しかし、私はその恐ろしい劉備を味方につけている!!)
(彼を良く待遇し、今後も大いにパシってもらうとしよう!!)
その後、都に帰還した曹操は、丞相府の左にある超高級旅館のスウィートルームに劉備を住まわせ、彼に礼遇の意を示した。
―――これらのように、曹操は劉備を内心では少し警戒しつつも、厚遇を持って彼に接していた。
『英雄は英雄を愛す。』
曹操は劉備を友として迎え入れ、彼との英雄談議に興じる日々を過ごすのであった。