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満月の夜  作者: 姫奈
1/4

夜会

初めまして!姫奈ひめなです。

今回は【満月の夜】を手に見てくださりありがとうございます。

 ※この話の最後に少しグロテスクな表現が数行含まれております。

   苦手な方はお気をつけてお読みください。

ため息をつきながら私は切り株に腰を下ろした。

もう随分と空を飛んでいる。真弓にパシリに使われ現在は…迷子だ。

「ここはどこなの…」地図もあてにならず周りに妖精はいない。

グゥゥ…と鳴りお腹が空いていた。周りには何もない。ただ、古びた建物が一軒建っていた。

お城で騒ぎになっていた魔女教のアジトであろう。私は興味半分でそこへ近寄ってみた。

建物の近くでは話し声が聞こえる。今年の夜会でエイルの姫君アリンが冬の王都おうとの王子と結婚をするという。それをどんな手を使ってでもそれを阻止し、アリン姫を殺す。


私は怖くて身動きすらとることができなかった。怖さのあまり背後の殺気にも…。

「今夜はいい獲物がいるみたいだぜ 兄貴」

叫ぶこともできず私は鎖で縛られた。どこまで聞いていたのかと聞かれまくる。

私は何も言えずに黙り込んでしまう。 声にならない声で。

「ん、この胸のところにある紋章。 これまたエイルのメイド様じゃねーか。

 こりゃぁ良い。メイドさんよぉ ちょっくらアリン姫君を殺してくれ。そうしたら

 このことは親方にはいわねえし、お前の命を助けてやろう」

心臓部に変な鎖を差し込まれる。夜会が始まるまでに殺せなければ私は死ぬことになる。

また、他人に話せばたちまち鎖は私の心臓を打ち抜くであろう。

(姫様ごめんなさい。私には何もできることがないのです…)

「姫様 今日のお食事はいかがでしたか?」

メイド服の袖の裏にナイフを隠しながらも私は痛む胸を押さえ姫様に問いかける。

姫様は天使と間違えてもおかしくない笑顔で

「とてもおいしかったわ凜。いつもありがとう」

お城で料理長をしている私は姫様の好きな食べ物や嫌いな食べ物、いろいろなことを知っている。

姫様がしてもらって嬉しいこと、いやと思うこと。

とても楽しい時間。それも今日で終わる。

「姫様ご無礼をお許しください」

私は袖からナイフを取り出しアリン姫の胸元へ一気に…とはできず頬をかすめるだけで精一杯だった。

すぐにアリン姫は助けを求めて叫び他の護衛役に私は捕まった。城内部の牢屋へ連れられ雑に入れられた。

姫の暗殺に失敗し私は今日で命が終わる。私の紅く淀んだ心臓部に鎖が突き刺さ…らない。

じわじわと痛みはあるが約束とは少し違った。


 今夜は夜会。1年に1度のお祭りのようなもの。天界では満月の夜に夜会をする恒例行事的なものがある。

今回の夜会で一番注目視されているのはアリン姫様と冬の王都の王子の結婚。と追放イベントだ。

姫様の結婚はたまたま日が被るということで同時日に行うらしい。

追放イベントでは1年に1度の夜会の真夜中。普段みんなが静まり返るときに盛大に行われる。

今年は誰になるのだろうか。今までに極悪人はたくさん出ていた。その中の一人が選ばれる。

まぁその時は私も笑ってやろう。盛大に、盛大によ。

私をこんな風にしたあの魔女たちを笑ってやるわ。


日は落ちてきてそろそろ姫様達が式を行う時間。私はまだ牢屋に入れられていた。

城の地下にある牢屋に居ても姫様達を祝福する歓声は絶えず聞こえていた。

夜会ではダンスを踊り食事が持てなされ妖精たちが空を自由に飛び回る。とても綺麗な光景だった。

夜会は今回で1029回目になる。今までの追放イベントでは1028人もの妖精が追放されてきたこととなる。追放イベントで追放される行先は下界。

下界へ行き何かをすれば帰ってこられるらしい。色々な噂や説はあるがそれが本当なのかは私は知らない。


夜会が始まり妖精たちはダンスを踊り空を飛び回り、食事を食べた。

私は小さな窓から見えるその景色に羽が震えたった。

今年は豊作だったのか去年以上にたくさんのおもてなしがされている。

4曲目の最中に姫様と王子が立ち上がった。軽い演説的なものが始まり私には聞こえなかったがそれが終わったのか一斉に拍手が起こる。

姫様は白く綺麗なウエディングドレス姿で美しかった。ベールの下には姫様のとても綺麗な黄緑色の髪が揺さぶられていた。あまりの美しさに周りの者は声すら出せず、ただただ立っているだけだった。

 王子は白く綺麗なシャツに身をくるめながら姫様のもとへ歩いて行った。

2人はとても美しくお似合いのカップルだった。 私もあんな風になりたいなぁ。なんて思いながら二人を心の中で祝福した。

月が真上に来る頃皆が楽しみにしている大イベントが行われようとしている。

今年も笑ってやる準備はできている。

そろそろ追放される人の名前発表のころ。

「皆さん今宵は楽しんでいただけていますか? それでは今回の目玉イベント追放の追放者を発表します」

一斉に静まり返った。少し怖いぐらいだったがすぐに名前は発表されたようだった。

「ハハハッ…ハハハァ? え、やめろ」

私は見張りの人たちに手錠をかけられすぐに広場へ連れていかれた。

(ありえない。笑ってやろうと持っていたのに。)

まさか自分が笑われる側になるとは思いもしなかった。

十字架に掛けられ身動きが取れなくなった。

 どうして と尋ねると、理由は暗殺みすい。だった。

姫様の頬にある小さな傷。それは徹底的な証拠となり女王陛下の耳に届いたようだ。

こうして私は追放されることへ決まった。


――「その者の羽をもぎ取れ」わたくしは命令を下した。

凜という名の少女。可哀そうではあるが仕方がない。うめき越えをあげて泣きそうな顔をしていた。

次第に目が潤っていき一粒二つ部涙がこぼれる。

「罪を償え。これは神からの命令だ。」

羽が無残な光景へ変化し少女の背からは赤黒いどろどろとした液体が流れ出し、きれいな黒髪を染め上げていった。服は裂け見てもいられぬ姿へ変わっていく少女。

少しやりすぎたかと思ったがイベントのための犠牲になってもらったからには最後までやりとへる義務があった。

「凜よよく聞け。次の月が満ちたときまでに罪を償い、誓いを守れたのならまた天界へ戻してやろう。」

私はそういい少女は雲の遥か下の下界へ落ちていった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回【満月の夜】が初めての作品となります。いかがでしたでしょうか?

ぜひコメント等お待ちしております。

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