シガーシュガー
「そろそろ聞かせて貰っても良いかな?君のお家は何処?お母さんは?」
昨夜、壁を飛び越え森を走ったは良いが異常に早く走れた為夜の間にナムルの壁を飛び越え町に入り込み日の出まで路地裏で着替えた後日の出まで身を潜め、日の出と共に活動したが朝早く行動した所為か衛兵に止められてしまった。元より寄るつもりは無かったが「観光」というものをしていた所だ
武器や危険物は所持していない、目的も観光だと言ったがどうも疑いが晴れない…
「何度も言っているだろう、観光でここに1人で来ている。危険な物は何も持っていない」
「いやどちらかというと危険な目に会うのは君の方だけど…観光って言うのはわかったけど君の様な子が1人で観光できるわけ無いじゃ無いか、嘘はダメだよ」
もう1時間は同じ様なやり取りをしている、これ以上の進展は望めない
「悪いがそろそろ行かせてもらう」
衛兵の横を強引に進み活発になり人混みに混じり歩き始めると後ろから呼び止める声が聞こえた
ドン!
「おっと…スマンな嬢ちゃん」
「あぁ…」
ボフ!
「キャ!…ゴメンなさいね」
「あぁ…」
糞野郎から逃げ通りを歩いているが異様に人とぶつかる、この通りは露店が多く立ち並びそれに伴って人も大勢この通りを利用する為先程からマトモに歩けない
段々と溜まる疲労の中、人だかりの出来ていない露店が通行人の隙間から見えたので揉みくちゃにされつつ移動するとその露店は他の露店と違い台も椅子も無く藁の敷物の上に商品らしき物が並べられている簡素な物で露天商の女も通行人と比べると質素な服装で赤い髪の毛の状態から余り裕福そうではない。
休めそうな場所に着いたので露店の横に座り休み始める
座りながら暫く座りながらポケーっと人混みを眺めていると
「あの、これ…地べたは良くないよ?」
露天商の女がボロボロになってる藁の敷物を差し出してきた、ソレも大概だろう
「流石に買わん、足元見過ぎだ」
「お、お金はいいから」
「なら借りよう」
そう言ってリリーは立ち上がり露天商の元へ向かい敷物と言うより藁が上手く引っかかってるだけに見える物を受け取りつつ商品を眺める
「何を売ってるんだ?」
「村で作ったお菓子に工芸品や雑貨を売ってるよ」
ほーんと呟き並べられた商品をみる。
木で作られたフォークやスプーン、箸等食器類やよくわからない置物といった物が多く売られている。どれも作りは良いがコーティングがされていないので直ぐにダメになりそうな物である、木で作られている器の中には茶色い菓子の様な物が入れられておりその後ろには麻の袋が並んでいる
「けどこの辺じゃウチの食器は誰も買ってくれないよ、ウチより良いお店が一杯あるからね…」
膝を抱える女を他所にリリーは紙で出来た小さな箱に目がいき手に取る
「コレは?」
「それは葉巻、あんまり買う人はいないけどね」
「一本試して良いか?」
「子供が吸うもんじゃないよ?」
うるせぇと言い鞄の中を漁りある事に気付く、火種がない
「火、あるか?」
女は無言で足を崩し後ろにある大きな袋から木の板と棒を取り出し窪みに木屑を入れて棒を手で回し始めた、しかし慣れていないのか板がズレたり窪みから棒が外れてしまう
「貸せ」
そう言ってリリーはやや強引に板と棒を受け取り棒を回し始める、すると直ぐに小さな煙が立ち上がり板の上に散らばった木屑を窪みに集めると小さな火種ができる。その板を持ち上げ加えたタバコに火をつける。
リリーは葉巻を吸いながら火種を落とし板と棒を女の横に藁を引いて座り煙を吐く、「すごいね」と女は言う中リリーは葉巻の味を楽しんでいた
「この辺で飲み物はあるか?」
「水で良ければあげるけど…」
「いただこう」
そう言うと袋の中から皮?で出来た袋から売り物のコップに水を注ぎ渡してきた
「はい」
ん、と返事をしてコップを受け取り水を飲む
「菓子を一つ味見しても良いか?」
「うん、良いよ」
そう言って女は器から一つ菓子を掴みリリーに渡す、リリーは菓子を受け取り口に投げる。茶色い粉は恐らく砂糖で乾燥した木の実と一緒に固められている、しつこくない砂糖の甘さと胡桃の様な味見と食感だがほんの少し苦味がある。全体的に控えめな味でまとまっている為摘むには丁度良い物になっている
「葉巻と合うな」
「村のおじさん達は葉巻を吸いながらコレを良く食べてた」
「そう言えば何処の村のから来たんだ?」
「メームっていう村」
ほー、とリリーは言い話題を逸らす
「葉巻と菓子は幾らだ?」
「葉巻は小銅3枚でお菓子は2枚」
これで足りるか?、と言い鞄の中から銀貨を小さく顔を出すと女は驚いた顔をする。
前世の知識としては銅より銀の方が価値が高いと覚えていたがこの世界での金の価値観はわからない
「そんなに沢山お釣り出せないよ」
「それじゃあ葉巻と菓子を全部買う」
「銀貨が桁が違うよ、ここの商品全部売っても半分位だよ!」
「葉巻と菓子以外は要らねえ。じゃあ残りは村までの案内と金の価値観と宿の仲介料でどうだ?」
「そ、それなら良いけど…」
女は歯切れの悪い返事で承諾すると荷物をまとめ始める
「こんなに貰うんだし直ぐにでも案内しなきゃね、買った物は村でまとめて渡すよ」
「ん、頼む」
荷物をまとめ終わり袋を背負い込む
「徒歩になるけど大丈夫?」
「構わん」
「それじゃあ行こうか?」
女が歩き始めたのでリリーは人混みの中はぐれない様に着いていく…
とは言っても揉みくちゃにされる程の人混みで着いていくのがやっとの女は立ち止まり手を伸ばしてきた
「はぐれちゃうから手…繋ごっか」
あぁ、と返事をしリリーも手を伸ばす。この行動に少し戸惑いを覚えつつも手を繋いで歩くと不思議とぶつからなくなった…
ーーー露天商の女ーーー
昼頃には門を出て平原の中地面がむき出しになってるだけの地面を未だ手を繋ぎ歩いている中、女は少し焦っていた
(ど、どうしよう…手を離すタイミングが分からない。じゃなくてこの子どうしよう…見た感じ裕福そうな服着てるしコレじゃまるで誘拐みたいに見えないかしら…)
(大体裸足な所も怪しいよ!…そんなに高そうな服着てるのになんで裸足なの⁉︎もしかして家出してきたのかな?…誘拐にせよ家出にせよ私みたいなのが連れてるって考えたらヤバい方向になるよね?)
(でも銀貨1枚、しかも大銀貨!きっとコレを逃したら一生掛かっても稼ぐことのない金額…あの時は商品全部で半分とか言っちゃったけど私ごと売っても相当お釣りが来る値段‼︎でも…)
と空想の危機と金で天秤が揺れ動いていた…
ーーーサラーーー
屋敷中が慌ただしくなってる中、私はガルト様の部屋へ向かい走っていた。廊下を走っている途中何人かのメイド達とすれ違う
「食堂、おりませんでした!」
「中庭にもおりませーん!」
「ええ!ありがとう‼︎」
走りながら報告を聞き階段を上がりガルト様の部屋に着き息を切らしながらノックをする
「入れ」と返事が返って来たのでドアを開け部屋の中に入ると不安そうな顔をするシンシア様と険しい顔をするガルトが椅子に座っていた
「リリーはまだ見つかりませんか?」
「申し訳ございません…」
「昨日リリーの部屋で寝ていた様だけど異常はありませんでしたか?…些細な事でも構いません…」
「そ、そう言えば寝る前は床に座ってベッドに寄りかかる様にしていましたが起きた時にはリリー様のベッドに寝て布団も掛かってる状態でした…」
自分で言ってて恥ずかしい…
「あの日のプレゼントが丸々無くなっていて荒らされた形跡はないのもまた不思議ですね、内通者が居たとしても1人や2人いた所で警備を抜けられるとも考えられませんね〜」
不思議そうに指を顎に当てるシンシア様と
「だが途中で手を打った可能性もある…屋敷に大量の内通者が居るとは考えたく無いな」
顔色一つ変えず椅子に堂々と座るガルト様…
せめて同じ部屋で寝ていた事に何か追求して下さい!気を使われてる様で恥ずかしい…
「何にせよ屋敷を探してもいないと見つからないと言うことは外に出た可能性が高いな、そしたら捜索部隊を編成する必要がある」
「しかしもう直ぐユーナの御披露目もありますしリリー自体まだ世間には知れ渡っていないと考えると大事には出来ませんね」
「あぁ、7名程の人数で部隊を編成して捜索する様にする」
ガルト様はシンシア様とリリー様を見つける手段として捜索部隊を編成される様だ…
捜索部隊…もし私が捜索部隊に加わればリリー様と一日でも早く会える可能性がある!
「も、もしよろしければ‼︎…私を捜索部隊に入れて貰えないでしょうか?」
「私としては構わんが…サラよ、ウチのメイドとして働いている事でクラスB以上の冒険者と同じ腕を持っているのは知っているが何か手がかりが無い中策やアテはあるのか?」
「うぅ…」
全く無い…
「そう言わなくても良いじゃありませんか、良いでしょう!サラ、貴女を捜索部隊の隊長に任命します。リリーのことを頼みましたよ?」
「は、はい‼︎、必ずやリリー様を連れ戻して参ります‼︎」
こうして私はリリー様の連れ戻す旅が始まったのです