トゥー テイク トゥー マッチ
「随分沢山取ってきたもんじゃない」
「いやぁそれほどでも〜」
「あんたはいつも通りでしょ」
「うぅ」
ローチとマリーは薬草を取り終えギルドに戻っていた
カウンターに置かれたマリーの籠は3分の1程薬草で埋まっている中ローチの籠は薬草で満たされ押し詰めた跡もある
「流石に数えるのには時間が掛かるから今のうちにお風呂入ってきたら?」
「うん、そうしとく」
「所でローチちゃんだっけ?、はどこ?」
マリーは親指で背後のドアを指差す
「外で葉巻」
「あぁ…まだ小さいのに葉巻なんてけしからんね〜」
呆れたように言うがマリーからしてみれば自分が原因なので胸に突き刺さる
「うぅ〜」
「あんたがどうにかしなさいよね、それじゃアタシは仕事に戻るよ」
「あい…」
籠を持ちカウンターの奥に行こうとする受付けだが首をマリーの方に向け問いかける
「そうそう、外で変なの見なかった?」
「変なの?」
「あ〜木こりのオッちゃんがさっきゴブリンの死体を見たらしいよ?、なんでも顎が無かったり首があらぬ方向を向いてたり…」
受付けはわざとらしく嫌な笑みを浮かべる
「うげぇ…」
「仲間割れの可能性もあるんだけど一応ね…あんたの行ったとこの近くらしいから聞いたけど知らないか」
「そんなのと会ってたら命が幾つあっても足りないよ!」
「ハイハイ、わかったよ〜」
雑に話を切り上げて受付けは奥に消えて行きマリーもギルドから出て行く
(顎を飛ばしたり首を折るなんて…十中八九ゴブリンの仕業じゃないんだけとね)
椅子に座り込み薬草を数える作業に取り掛かった…
マリーがギルドから出てくると壁に寄りかかって葉巻を吸うローチに喝を入れる
「こーら、子供が葉巻を吸っちゃいけません」
「自分から売っといて…」
「ぐぬぬ…とにかく葉巻は身体に悪いからダメ!」
「んで、幾らになった?」
「数えるのに時間が掛かるからまだわかんない、その間にお風呂いこ?」
「ん」
「てか話題逸らさないで!、葉巻やめなさい!」
「ッチ、面倒だな」
こうして2人は着替えを取りに一度家に戻った後風呂に向かった
「ローチちゃんなんか汗臭くない?」
マリーはローチが服を脱ぐのを手伝いながら頭に鼻を当てる
「んー久々に動いたからな」
「そんなに遠くまで行っちゃダメって言ったじゃない」
「数集めるならしょうがないだろ」
「いい?、村の外にはゴブリンがいるから危ないの」
「あー、あの緑色の奴か」
そう言いながら脱いだ服を籠に投げ入れる
「え、まさか見たの?、ってあーぐちゃぐちゃにしないの私のなんだから‼︎」
マリーは籠の中でぐちゃっている服を丁寧に直し始める中ローチはタオルを肩にかけ浴場へと向かって行った
「お前はもう着れないだろ、さっさと行くぞ」
「あーもう‼︎」
ーーーーマリー 風呂からの帰りーーーー
「もーなんで寝ちゃうんだろ…」
私はローチちゃんをおぶって夕焼けの中、少しだけ肌寒さを感じながら再びギルドへと向かっていた
昨日に引き続きお風呂の中で寝ていたローチちゃんを引き上げ体を拭いてあげて服を着せるのに苦労していたらもうこんな時間になってしまった
揺すっても冷たいタオルを当てても起きないから死んでるのかと思ってしまう…
ギルドに着いた私は扉の前で一度おぶり直して片手でギルドのドアを開ける
「ただいまー」
自然と疲れた声がでる、昼間と違いテーブルが出され村のおじさん達がこの小さいギルドの中で賑やかにお酒を呑んでいる、それに答える様に小さな照明が頑張って室内を照らしていた
「よ、おかえりマリー」
「よぅマリーちゃん!儲かってるかい」
昼間は受付をしているメルもおじさん達にお酒を運んでいた、おじさん達も相変わらず持ち寄ったお摘みでお酒を呑んでいる中私はおどける様に答える
「もう全然、誰も相手にしてくれませんよ〜」
「ハハハ、やっぱりもうちょいちゃんとした店構えにしないと客も寄り付かんだろう」
商人になって少しでも稼げればと思って毎回街に出向いてやってははいるけど、周りとの差が激しく毎回折れしまうのが現実だった
もう少しちゃんとした露店にすれば少しは変わるんだろうけど街で借りるのもお金がかかるし作って運ぶのも一苦労だし、私は商人向いて無いのではないかと内心落ち込む
「それで薬草の値段は出た?」
「おう、もう数え終わってるよ、こっち来な」
そういってメルはお盆を抱えカウンターの方へ向かい私も着いて行く
お盆をカウンターの端に起き中に入って行くと一枚の羊皮紙とお金の入っている袋を持って来た、明らかにいつもより多いと言うかいつもは袋になんか入っていない
「あんた今日は稼いだねー、2304枚もあったわよ」
メルの言葉に後ろで呑んでいたおじさん達が驚きの声をあげてこちらを見る
「うぇ!、そんなに⁉︎」
私だって驚く、確かにローチちゃんが籠パンパンに詰めていたけど正直見分けが付かなくて他の物が沢山混じってる物だと思ってた
ええと5枚で小銅貨1枚だからええと
「んで報酬の円銅貨4枚に大銅貨6枚と小銅貨1枚、小銅貨はオマケね」
「 どうやってそんなに取ったんだマリー、まさか秘密裏に農場を作っていたのか?」
「違いますよ、この子が沢山取って来ちゃったんですよ」
ローチちゃんを落とさない様に注意しながら羊皮紙に受け取りのサインを書き大金が入った袋を受け取る
「そういやその子は?、まさか既に子供も作っていたのか⁉︎」
「な、違います‼︎実はカクカクシカジカでー」
「ナルナルホドホド」
一通り経緯を説明すると1人のおじさんから質問が飛んでくる
「たがよ、今後その子はどうするんだい?」
「ん〜単なる一時的な家出だったら良いんですけど…どうも違う気がするんですよね」
そう答えるとメルが追求してくる
「と言うと?」
「ん〜上手く言葉にできないけど、何かに必死と言うか…狩られている様な感じですかね〜」
「なんじゃいそりゃ」
「まぁ家に返すにも今日はもう遅いから明日聞けば?」
「うんそうする…でもこの子本当に貴族だったら私生きて帰って来れるかな?」
再びローチちゃんをおぶり直し扉の方へ向かいながら呟く
「なーにここはガルト様のお膝元じゃ、街の貴族達もそんな事出来まい!」
「そうだよね、それじゃおやすみなさい」
そう挨拶しギルドを後にし家路を辿る
家に付きローチちゃんを起こそうとするが何をやっても起きない
「疲れてんだよ、そのまま寝かせてやんな」
お母さんはそう言い夕飯をテーブルに乗せ夕飯を食べ始める
しょうがないのでローチちゃんをベットに寝かせ私も夕飯を食べ始めた
結局ローチちゃんは起きませんでした




