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3 「この世界をどう思う?」と教師は真剣な眼差しで問う

本日(9/18)より以前に本作をお読みいただいた方は、ここからお読みください。

《レベルアップしました》

《2SP(スキルポイント)を獲得しました》

《スキル〈物質化(マテリアライズ)〉がレベルアップしました》《1SP(スキルポイント)を獲得しました》

《称号『最速成長(ラピッドレベラー)』を獲得しました》


「うぉっ!? な、何だ!?」


 MPも尽きようかという頃。突然、中性的な声が黎斗の頭の中に(・・・・)響く。一瞬、驚くも、ここが異世界だということを思い出す。


「えっと、レベルアップだっけ……オープン!」


 ステータスウィンドウを展開し、スキルの項目を確認すると、アナウンスの通り、〈物質化(マテリアライズ)〉のLvが上がっている。黎斗が念のため〈物質化(マテリアライズ)〉をタップすると、内容に若干の変化があった。


――――――――――――――――――――――――――――――

物質化(マテリアライズ)〉 Lv:2+1


魔素(マナメント)を物質として成型・固定し、使用者の周囲に出現させるスキル。

Lv3では半径3メートル以内に出現させられる。

※称号効果によりブースト済み。

――――――――――――――――――――――――――――――


「称号効果によりブースト? ……あぁ、さっき獲った奴か。確か、『最速成長(ラピッドレベラー)』だっけ?」


 称号の欄を開き、新しく得た称号を確認する。やはり、スキルに影響を及ぼしたのは『最速成長(ラピッドレベラー)』のようだった。


――――――――――――――――――――――――――――――

最速成長(ラピッドレベラー)


同時期に召喚された勇者の中で、最も早くLv2に到達した証。

全スキルのLvを1上げる。


――――――――――――――――――――――――――――――


「……つまり、これからスキルはLv2からスタートって事か。同時期に召喚された勇者ってのは、うちの学校の連中の事だよな? その中で一番早いLv2か……。ラッキーだったな」


 ちなみに、他の日本人達が怠けていたという訳ではない。訓練は明日から、という話を聞いていたため、体を休める者が約8割を占めていたのである。残りの約2割は、未だに恐怖に震えている者。

 1人で(自覚は無いが)訓練している黎斗が特殊なのである。


「で、あとは……そうだ、SP(スキルポイント)だっけ」


 ステータスに新たに追加されていた『SP(スキルポイント)』の項目をタップする。すると、ステータスウィンドウの上に膨大な量のスキル名が書かれた表が現れる。スキル名の横には数字が書いてあり、それが4以上のスキルは文字が灰色になっている。

 現在、黎斗が所持しているSPは3。つまり、


「SPを消費してスキルを取得できる……のか? ……試してみるか」


 表にはソート機能もあるらしく、黎斗はそれを「消費SP少ない順」に設定する。一瞬ののちに表が書き直され、上の方に取得できるスキルが多く並んだ。


「……使えないスキルばっかだな。〈窓拭き〉とか、スキルじゃなくてもいいだろ……」


 やはりファンタジーの定番という事で、ソートの項目に「魔法スキル」を追加する。すると、残ったのはわずかに4種類だけだった。


「火、水、風、それに土か……テンプレ中のテンプレだな。消費SPは……全部1か」


 黎斗は少し迷った結果風魔法を種類する事にした。出来るだけSPを減らしたくないからという貧乏性全開の理由もあるにはあるが、一番の狙いは敏捷性の強化だ。物防力が一般人よりも薄い黎斗にとって、回避率の上昇は文字通り死活問題なのである。

 黎斗が風魔法をタップし、「スキルを取得します。よろしいですか? Yes/No」という確認に対してYesを押す―――その瞬間、


『御霊、今いい?』


通信球に着信があった。

 通信球は元の世界で言う固定電話のようなものだ。これを介して相手とやり取りができるが、重い上に嵩張るので、持ち歩こうとする人はまずいない。


「……石代先生、どうかしましたか?」


 通話の相手は、担任の石代由羽歌だった。


『これから、御霊の部屋に行きたいんだけど』


「……拒否したいんですが」


『これも仕事なの! 自分の受け持つクラスの全員を訪ねろっていう上からのお達しなの!』


「ますます嫌です」


『拒否権はありませんー! ……それに、御霊には個人的に話もあるのよ』


「………」


 黎斗が拒否する事は簡単だ。由羽歌の言葉を無視して部屋の鍵を開けなければいいのだから。だが、石代の真剣な声音を聞き、今回は黎斗が折れる事にした。


「……一時的(インスタンス)キーを送ります。1分経ってから来て下さい」


 一時的(インスタンス)キーは文字通り、一時的に使える魔方陣の使用権限だ。全て部屋の魔方陣に備え付けの機能らしく、黎斗達が部屋に入る前にモルタスが説明したていた。


『! ありがと。んじゃ』


 通話を切ると、黎斗は「自分も甘いな」と嘆息する。諸々のウィンドウを全て閉じ、部屋の魔方陣で(キー)を発行すると、黎斗はそれを由羽歌のウィンドウへと送信した。

 きっかり1分後。


「……お待たせ、御霊」


「待ってないです。さっさと帰って下さい」


「私まだ何もしてないんだけど!?」


 由羽歌が部屋に来た途端に毒を吐く黎斗。そんな自分の生徒にツッコミを入れつつ、石代は黎斗のベッドにバタリと倒れ込む。どうやら、立て続けに事が起こったせいで大分お疲れのようだ。


「……ぅあー」


「人の枕に顔をうずめないでください。不愉快です」


「……ちょっとは気を使って貰えませんかねぇ?」


 尤も、それを気にするような黎斗ではなかったが。


「で、本題は何です?」


「……その前に、1つ訊かせて」


 ベッドから身体を起こしながら、由羽歌は先ほどまでとはうって変わって真面目な表情で黎斗に問いかける。


「御霊。お前は、この世界をどう思う?」


「……どう、とは?」


「何でもいい」


 黎斗には質問の意図が分からなかった。何もヒントを与えてくれない由羽歌に困惑しながら、手探りで1つ1つ、答えを紡いでいく。


「……まだ、よく分かりませんね。ラノベとかRPGみたいにステータスがあって、レベルやスキルもあって、正直、本当に現実なのか……って思います」


「続けて」


「でも、現実なんだとしたら……不謹慎かもですけど、すごく、嬉しいです」


「嬉しい?」


「俺は、日本での生活が嫌いでしたから。新しい世界で、誰にも縛られずに自由に生きれるなら……これほど嬉しい事はありません」


「……なるほど」


 日本の創作物に理解のある黎斗にしてみれば、このファンタジーな世界アルアローラはとても生きやすい(・・・・・)。まだたった数時間しか過ごしてはいないが、黎斗は本能的にそれを悟っていた。

 そしてそれは、必ずしも黎斗だけというわけではなかった。


「やはり、御霊とは価値観が合うみたいね」


「はぁ」


「まぁ、それはもういいか。で、本題なんだけど……オープン」


 自らのステータスウィンドウを出し、その内の1枚を可視化して黎斗に見せる由羽歌。そこに記されていた内容は、彼女が持つスキルの一覧だった。


「〈言語理解(アンダースタン)〉の次の項目を見ろ。それが私の……恐らくは固有スキルだ」


「……こりゃまた、随分なモノをお持ちで」


――――――――――――――――――――――――――――――

万物加速(アルクセラレーション)〉Lv1


魔素を媒介に対象を加速させるスキル。

Lv1では使用者または使用者が触れたものを加速させられる。


――――――――――――――――――――――――――――――


「……どう思う?」


「危険ですね。間違いなく」


「はぁ、だよなぁ~。これがあれば人間〇雷とか普通に出来るし」


「いえ、そっちではなく」


 ピッ、と由羽歌の額に人差し指を突き立てる黎斗。


「危険なのは、間違いなく先生だと思うんですけど」


 由羽歌の言う通り、彼女が物に触れて砲弾にする事はできる。だがそれ以上に、由羽歌自身の身体が危ない、と黎斗は言った。由羽歌のスキルで強化されると書いてあるのは、あくまでも速度のみ。恐らくは、そこに対象の耐久力は含まれないからだ。その事を黎斗が説明すると、


「……やはり御霊に相談して正解だったな。私だけなら、なにも考えずに自分を強化して全身バラバラになるところだった」


 そう言った由羽歌はベッドから立ち上がり、部屋の隅の魔方陣に向かう。どうやら、話はこれで全部終わったらしい。


「お帰りですか」


「えぇ。訊きたいことはこれで全部だしね。

 まだいてほしい?」


「いいえ全く。はよ帰りやがれください」


「ちょっとくらい引き留めてくれてもいいじゃない……」


 しょんぼりと肩を落とす由羽歌。しかし、そんな気遣いが黎斗の中にあるはずもなく、彼は心の中で「さっさと行けよ」と思っていたかどうかは定かではない。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








 1ヶ月後。

 黎斗は城内にある謁見の間にて、国王ヴィルベスと対面していた。王の傍らには、モルタスや近衛兵も何人か立っている。


「ふむ……それで、何の用だ、戦士レイトよ」


「いやー、国王様にちょっとお願いがありまして」


 王族の前であるというのに、黎斗に畏まる様子はない。普通なら、これだけで不敬罪と見なされてもおかしくはないのだが、兵士達は黎斗を捕らえるどころか声も発しない。これは、黎斗を初めとする日本人達が持つ『異世界(イーバレーラ)の戦士』という地位と、レノーリアム国王の鶴の一声によるものだ。彼曰く、『この国の民でも、この世界の住人ですらない彼らに、余に対する敬意を求めるのは筋違い』とのこと。この辺りは、宮中儀礼に詳しくない日本人達にとってもありがたい事だった。

 近衛兵達の拳がプルプルと震えているのも、きっと黎斗の気のせいなのだろう。


「願い、とな? 申してみよ」


「俺を、他の連中より一足先に旅立たせて貰えませんか?」


「………なんだと?」


 黎斗達は現在、やっと座学が終わったばかり。これから本格的に実践訓練を行うというこの折に、黎斗の申し出は、普通なら到底受け入れられるようなものではなかった。

 しかしヴィルべスは、


「ふむ……理由はあるのだろうな?」


「えぇ。まず、俺にはどう頑張っても集団行動はできないという事。もう1つは、俺のスキルが集団戦に向いてないって事ですかね」


「そなたは確か、風魔法の使い手であろう。1つ目はともかく2つ目の理由にはならぬ」


「誰が、俺のスキルが風魔法だけだ、なんて言いました? ―――“影縫(シャドウ・ゲート)”」


 黎斗が言葉を紡ぐと、彼の足下に漆黒の、光すら呑み込んでいるかのように見える穴が開く。その穴に黎斗が飛び込んだ瞬間、彼の身体はヴィルベスの背後にあった。右手にはナイフが握られており、その切っ先ははヴィルベスの首筋に当てられていた。


最近、ようやく執筆意欲が戻ってまいりました。見切り発車ゆえ次もいつになるか分かりませんが、なるべく早めに投稿する予定です。何卒、長い目で見守ってくださいませm(_ _)m


ここまで読んで下さってありがとうございました。

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