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2 「いくのかよ!」と少年は世界にツッコミをいれる

大変長らくお待たせいたしました。


今話は、元第一部分を分割したものです。同時に最新話を投稿いたしましたので、本日(9/18)より以前に本作をお読みいただいた方は、次話よりお読みくださいませm(_ _)m


 屋上の鍵を開け、急いで校庭―――もとい、校舎の外へと向かう。黎斗のクラスメイト達が、担任を含めて全員外に出ているのが見えたからだ。

 黎斗がクラスの列に加わると、担任の石代(いしろ)由羽歌(ゆうか)がそれを見つける。


「御霊! どこに行っていた!?」


「サーセン」


「全く……まぁいい。1年4組、全員揃いました!」


 由羽歌が前の方にいる教頭に向かって声を張り上げる。どうやら黎斗だけが見つからなかったようで、すぐに校長が話を始めた。内容の大半は、落ち着いて指示に従えというもの。まるで地震や火事が起きた時の様な口ぶりだった。

 そして。


「よくぞ参った、イーバレーラの戦士よ。余は、このレノーリアム王国の王、ヴィルベス=アトーズ=ノア=レノーリアムである。そなたらには各地にいる邪神の討伐をしてもらうため、異世界より召喚させてもらった」


 国王と名乗る老齢の男性はそう口にする。


「そなたらの指導者であるセンセイとやらには、先に説明させてもらったのだが……何も聞いてはいないようだな」


「いきなり召喚されて邪神倒せって言われて、はいそうですかって言える方がおかしいんですよ、国王」


「む、そうか」


「皆も、この人の話をよく聞くように」


 国王と軽~く話しているのは由羽歌だ。実は彼女は大のライトノベル好きで、特に異世界転位モノがお気に入りのだったために、この状況に狼狽えずにいることが出来ていた。


「では、国王。今一度ご説明を」

「うむ。モルタス」


「はっ。……お初にお目にかかります。私わたくしは、レノーリアム王国宰相のモルタス・ド・クルウェンスと申します。まず、我らの世界について説明しましょう。ああ、質問があるときは、遠慮なくどうぞ。

 ……皆さんが召喚されたこの世界は『人界アルアローラ』と呼ばれています。大地と時間の女神フェルミアスと、強欲と焔を司る魔神ガルドルベスが創造したとされ、主に人間が住む世界でございます」


(ん……?)


 宰相の説明に違和感を覚えた黎斗は、すぐさま手を挙げて質問する。


「あの」


「はい。えーっと……」


「御霊……あ、名前が先か。レイト・ミタマです」


「ミタマ様ですね。何かございましたか?」


「『人界』って言ってましたけど、他にも世界ってあるんですか?」


「ええ、存在します」


 待ってましたとばかりに、モルタスは説明を続ける。


「人界アルアローラは、極界イルド・アル・ディズラという大きな枠組みの中の1つです。他の2つには、聖属性系の神に創造された天使と神々が住まう『聖界イルドラシア』、魔神達と魔神の眷属である悪魔が住まう『魔界ディズラウテ』があり、3つの世界が噛み合う事でバランスが保たれています。……〈賢者の教室(セイジ・クラスルーム)〉」


 モルタスが小さく呟くと、彼の後ろに黎斗達がよく見慣れた黒板が現れる。生徒達のどよめきを無視して、モルタスはチョークで何かを書き込んでいく。


「この3つの円がそれぞれアルアローラ、イルドラシア、ディズラウテです。皆さんに依頼するのは、この三世界にいる邪神達9体をを討伐……つまり殺していただきたい、という事です」


(((((いや、無理だろ)))))


 生徒達の心が1つになった。


「いやあの、俺らにどう戦えと? 武器すら持ってないんですけど」


「無論、素手で殴れなんて言いませんのでご安心を。皆さん、手を体の前の空間に翳して『オープン』と唱えてみてください」


 モルタスからの振りに、素直に応える生徒達。黎斗もその例に漏れずにやってみる。


「オープン。……うおっ」


 シュンッ、と音を立て、青色の半透明な板が現れる。


――――――――――――――――――――――――――――――

御霊黎斗 男 16歳


高等人間種(ハイ・ヒューマン) Lv1


HP(生命力) 300/300

MP(魔力) 1200/1200


ATK(物理攻撃力) 20

DEF(物理防御力) 22

INT(魔法攻撃力) 47

MIN(魔法防御力) 121

AGI(敏捷性) 154


スキル

物質化(マテリアライズ)Lv1〉、〈言語理解(アンダースタン)


称号

「異界の勇者」


――――――――――――――――――――――――――――――


「それは『ステータスウィンドウ』というもので、皆さんの強さを数値化したものです。あくまで目安の数値ではありますが、HPの値は0になる事は死を意味します。

 くれぐれも、お忘れ無きよう」


 死という言葉の重みに、黎斗達日本人は唾を呑む。何が起きるのか分からないこの状況では、それはあまりにも現実味を帯びていた。


「……………いや」


 そして。

 その重みは、安寧の地で暮らしてきた日本人達を、いとも容易く押し潰す。


『嫌ぁっ! 何で!? 何で私達がそんなことに巻き込まれなくちゃいけないのよ!』


『そ、そうだ! ふざけんな!』


『こんなの、ただの拉致じゃないですか! 今すぐ元の世界に帰して下さい!!』


 押し潰され、壊れた心は混乱を呼ぶ。混乱は次々に波及し、ついには生徒全体へ広がった。先生達も必死に落ち着かせようとしているが、まるで効果が見られなかった。それどころか、若い教師まで錯乱する始末だった。

 阿鼻叫喚の渦の中、国王ヴィルべスは気にせずに言う。


「今すぐに、元の世界に戻す事は出来ない。

 今回の召喚術式は、何年もかけて魔素を注いだとてつもなく大規模なものだ。そう簡単には用意できぬ。その上、召喚と違い送還用術式はより多くの魔素が必要故、今すぐに戻す事は不可能だ」


 だが、と国王は続けた。


「邪神達が持っているであろう『神魔石』という魔素が凝縮されたものを使えば、魔素の不足も解消できよう。一気に全員、とまではいかぬが、神魔石が9個あれば諸君ら全員を元の世界に戻す事が可能だ」


『って事は、邪神を全部倒せば僕達は帰れる?』


「然り。その暁には、責任を持ってイーバレーラへ送ると約束しよう」


 数人を除き、絶望した顔が再び希望を取り戻す。


「諸君らのためにも、我ら人間の存続のためにも、一刻も早く邪神の討伐をおすすめする。……モルタス」


「はっ……皆さん、ひとまずはこちらへどうぞ。皆さんの宿にご案内致します」


 そう言いながら、モルタスが王城を指し示す。見た目からは、どうやっても全員が宿泊なんて出来ないのだが、空間拡張の魔法で中は見た目ほど小さくないそうだ。 モルタスに導かれるまま、日本人達は王城へと向かって行く。その中で、黎斗を含めた数人だけが、終始怪訝な表情をしていた。







ここまで読んで下さってありがとうございました。

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