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異世界 恋愛

逆ハー状態のヒロインは隠れキャラルートに突っ走る!

作者: 緋色の猫

 エンド後の悪役令嬢モノはあるけど、ヒロイン版ってあんまないな……と思い書いてみた作品。拙い文章ですが、どうぞm(__)m


 両手に華って、いいよね。イケメンの両腕に美女って。そのイケメンにとっては最高のシチュエーションだよね。ハーレムっぽくて。ハーレムは多数の女性に男が好かれることを言うらしいけど。

 ところで、一人の女が多数の男に好かれることを逆のハーレム、略して逆ハーなんて言ったりする。

 今の私はまさに逆ハー状態。


 一つの椅子に座った私の右側には、この国の第二王子のイアン・バティシル。左側には魔術師として名を馳せる若き天才のエリック・ボルジャー。椅子の背もたれの裏側に寄りかかっているのが、大商人の息子のクライブ・クランマー。私の足元で膝を着いているのが、将来騎士団長になると言われるダニエル・グリコット。

 全員イケメン。性格もよろしくていらっしゃいます。


 何故に私が逆ハー状態なのか。それは、一言でまとめてしまえる。



 私が、この乙女ゲームの世界のヒロインだからだ、と。



 ここは、前世の私が愛用していたとある乙女ゲームの中である、とさっき気付いた。そしてヒロインの侯爵令嬢だと。

 気付いた原因? さぁ、分からぬ。何でだろ。急に頭の中に前世の記憶が流れ込んできたんです。

 周りにいるイケメンとこの国の名前と様々な今世の記憶から、ここは乙女ゲーの中だと分かった。

 そこで私は過去の私に突っ込もう。



 なに逆ハーなんか形成させてくれちゃってんの!? どうせなら隠れキャラのレオ・エリッサ様を攻略してくれれば良かったのに!

 レオ様はこの国の宰相で、冷たい雰囲気と毒舌が絶妙なコントラストを生む、まさにイ・ケ・メ・ン!!

 身元不明で貴族からは疎まれることが多いけど、腕は最高だから宰相の地位にとどまっている! 本当は亡国の王族なんですけどねぇええええええっ!






 こほんっ。えぇっと、今現在、私は王宮にいるんですよ。逆ハーメンバーと、それに逆ハーメンバーの婚約者の令嬢達と一緒に。

 学園ものの乙女ゲーなので学園に行っている私は只今二年生、十七歳。もう色々とイベントは終わって、今は私をいじめてきた婚約者の方々の断罪イベント中です、はい。

 今まで無意識に男をたぶらかしてきた私は、今回のイベントで誰とエンドになるか、逆ハーになるかが()()に決まる。つまり今日まで、逆ハーは逆ハーでもエンドにはなっていなかったという訳だ。



 えー、円卓会議って言うの? これ。でも逆ハーメンバー達、座るべき場所に座らないで私に侍っているよ? いいの?

 国王陛下と宰相のレオ様、私と逆ハーメンバー、その向かい側に悪役だった令嬢達。これから、私に都合のいい断罪が行われるわけだ。

 ……………………これからって言うか、五分前に始まったんだけどね!



 逆ハーメンバーが私の弁護をして、国王陛下が罪状を確認している。その時、レオ様が私に冷たい視線を注いでいるのは勘違いじゃない。

 だってレオ様と結ばれるためには、逆ハーがほぼ完成していて、逆ハーメンバーがだらけてしまっている状態なのを良く思わないレオ様に、私が逆ハーを作ったことを謝罪することから始まるんだもの。

 逆ハーメンバーは皆、国にとって重要な人物。私に骨抜きにされたら国の利益になることをあまりしなくなって、だらけるようになるのだ。宰相であるレオ様は、当然それをを良く思わない訳で。



 つまり! 今の私はレオ様に嫌われています!



 私は、どんな風に裁かれるのかを青ざめながらも気丈に振る舞って待ってる令嬢の方々を見やった。

 いじめって言っても、そもそも私が彼女達の婚約者をたぶらかしたのが悪いのに。無意識とは言え。



 駄目だ。罪悪感と、レオ様に嫌われているという事実に死にそう。



 次にレオ様の冷たい目と私の目が合ったとき、反射的に土下座していた。


「すみませんでしたァアアアアアアアアアッ!!」


 …………。

 ……………………。

 …………………………………。

 ……………………………………………沈黙長い!


 土下座の状態で顔を上げて、固まっている逆ハーメンバーを見て、これまた固まっている国王陛下を見て、そして令嬢達を見て────レオ様を見た。

 レオ様は僅かに目を見開いているだけで、他に表情の変化はない。他の皆は口をポカンを開けているけど。


 うぅむ、他に何かアクションした方がいいだろうか。あ、じゃあ……


「国王陛下! 裁くなら彼女達じゃなくて私にしてください! 彼女達は悪くありません! だって、婚約者が他の女にデレデレしてたら嫉妬して当然ですから!! なので裁くなら私を!!」


「え、い、いや、そういうわけには……」


 そういうわけにはいかないって!? と言うか国王陛下、どもんないで! 国王なんだから! 威厳を保とうよ!

 あ、裁くなら私をって言っちゃったけど、処刑は嫌だな。流罪とかなら、ヒロインの私の高スペックな能力で生きていけるだろうけど。処刑だと死んじゃう。

 さて、悪役令嬢の皆さんが処刑されないように弁護しないと。死んだら罪悪感で私も死ねる。


「陛下! 彼女達は本当に悪くありません! 私が悪いんです! ついでにこの男達も悪いです! でも結局私が一番悪いので、私を裁いてください! 処刑以外なら何でも受け入れます!」


「え、え、えぇ~……?」


 陛下、情けない声を出すのはやめてください! それと逆ハーメンバー達よ! 今日でお別れだよ! 今度こそ自分の婚約者を大事にしやがれ!!

 私は、今度は呆気に取られた顔のレオ様をやはり土下座の状態で見上げた。


「レオ様今まですみませんでした! 前世から貴方のことがずっと好きでした! 当時の私には夫がいたけど、夫と同じくらい好きでした!! 愛しています! 貴方の冷たい雰囲気と毒舌が大好きです!! 貴方と陛下だけの秘密は誰にも言わないので安心してください!」


 亡国の王族っていうのは、本人と陛下しか知らないんだよね。あと私。でも誰にも言わないから、大丈夫だよ!


 その場は静寂に包まれた。うん、流石に色々とぶっぱなしすぎたのは理解しているよ。言いたいこと言いまくったもんね、私。

 静寂は、レオ様が書類を置いて私に近寄る足音によって破られた。あぁ、カツカツと音を響かせるその足も好きです!

 レオ様は私の両脇に手を差して、私を立ち上がらせた。ふぉおおおお、レオ様に触れられたぁああああああっ!


「あ、あの……?」


「陛下。この者は敵国の間者かもしれません。私の部屋に連れていって、洗いざらい吐かせます。宜しいですね?」


 間者? あ、陛下とレオ様の秘密ってところで疑われた? 亡国の王族ってことを、私が知っていると知ったから? 間者じゃなくて転生者ですが。

 逆ハーメンバー達は私が連れていかれると聞いていきり立ったが、レオ様の圧倒的な雰囲気にのまれて黙り込んでしまった。


「行きますよ、ローズ・フォンテン令嬢」


「はい!」


 名前を! レオ様に! 呼ばれたやっふぉおおおおおいぃいいいいいっ!

 私は興奮しながら、レオ様にくっついていった。









「……さて、洗いざらい吐いてもらいましょうか?」


 レオ様の部屋に入った瞬間に、レオ様に壁ドンされました。顔前にレオ様の麗しいお顔が存在していて鼻血出そうブシュー。

 ちなみにレオ様の両肘が私の顔の横にあるという、本当に顔がドアップされる壁ドン。もうダメ私死んでいいわ。


「……あぁ、萌え死ぬ……!」


 腰がッ! 腰が砕ける! ほんとに、もうこのまま死んでもいい! むしろこの状態で死なせて!!


「ローズ嬢……?」


「あぁ、萌える……。もっと、呼んでください……レオ様ぁ……」


 恍惚として名前を呼んだら、レオ様が笑みを浮かべた。あぁっ、なんて甘い笑顔!

 レオ様は私の耳元で、低い声を吐息混じりに吐いた……て、あぁあああああああクラクラするぅううっ!


「貴女のことを、全て話してください……」


「全て……ですか………?」


「全てが嫌なら、先程言っていた『前世』という言葉の意味だけでも……」


「そのままですよ! 前世の記憶をさっき思い出したんですよ!」


「では、前世での名前は……?」


 ふえ? 何でそんなこと聞くんだろう。まぁいっか。レオ様のお役に立てるなら、教えちゃいますよ!


「私は──────という名前でした」


「そう、ですか……」


 レオ様、私の名前を聞いたら表情がとろんとしましたよ? どうかしたんですか?


「それは、良かった……」


「え、何が────ひゃっ」


 え、え、え、え、……え!? い、今、何が起きてる!? いや、まさかレオ様が私の耳を舐めたなんてこと……ある! 舐められてるよ、現在進行で!


「れ、れれれっ、レオ様? 萌え死にそうですっ!?」


 れれれって言ったられれれのれ~……じゃなくてぇえええっ!

 状況はこうだ。私は壁ドンされた状態で、レオ様に耳たぶを舐められている……あ、首に移った。だ、駄目だ。今世は首が弱いんだよ!!


「んっ……」


 駄目だ駄目だ。声抑えないと。レオ様に聞かれるの恥ずかしい。前世では夫にしか聞かせてないよ、変な声なんて! 夫以外に恋人いたことないよ!

 頑張って声を抑えている私の反応がお気に召さなかったのか、レオ様は唇を首に強く押し当てると、ちゅうっと吸い付いた。


「ひゃっ、あぁんっ!」


 ちょ、一瞬意識が飛びそうになった! 恥ずかしい!


「レオ様! やめてくださ……な、何してるんですか!」


 するすると私の服────学園の制服だ────を脱がせようとしてくるので、思わず悲鳴をあげた。

 まさか襲う気!? いやいやいや、これでも私の今世は侯爵令嬢ですからね!? 襲ったらレオ様、親バカな私のお父様から報復を受けることになるよ!?


「既成事実でも作って私に嫁いでもらおうかと思いまして」


「既成事実!? やっぱり襲うんですか!? 襲われたいのは山々で、既成事実を作られて嫁ぐのは最高ですけど、襲えばお父様がレオ様に報復を……!」


 あれ? ちょっと待てよ? 既成事実を作る? 作ってどうするの?

 私が知っている、既成事実の作成のメリットは……


 既成事実作成→女は傷物→その女は汚い→嫁ぐところが無くなる→女の敵は大喜び


 みたいな感じだ。あれぇ?

 さっきレオ様は『既成事実でも作って私に嫁いでもらおうかと思いまして』って言ったよね?

 ………レオ様に? 私が嫁ぐの?



 もしかして、レオ様のルートに入っちゃった感じですか?



 困惑する私に、レオ様は「冗談です。既成事実など作らなくても、私と結婚してもらいます」と、色気が駄々漏れの笑顔で言ってのけた。

 はぅううっ! 笑顔がエロい! 発情しちゃうよ!?


「はれ? でも、何でですか? 私のこと嫌いだったのでは? それに私、これから裁かれる予定なのですが……」


「いや……」


 レオ様は私の首をペロッと舐めて、囁いた。


「好きな女性だと気付いたから、もう一度結婚することにしたんだよ……」


 も、もう一度? え、レオ様ってバツイチでしたの? バツついてても好きです!

 でも、よく分からない。一体全体どういうこと? うーん……分からないな。と言うか、レオ様、敬語じゃないッ! タメ口だこれもこれで萌えるぅうううっ!


「レオ様、詳しく説明を!」


「うん。実は私にも前世の記憶があってね? あぁ、そういう設定があったとかじゃ無いから安心してよ」


 そんな設定あったっけ……と思っていたら否定された。あらら、設定って言葉を言うということは、もしかして地球の日本人でしたか?


「私は小さい頃から、自分が転生者だと分かっていた。────まぁこれはおいておこう。手っ取り早く言うとね、私の前世の名前が───────なんだよ」


 そうですかそうですか。───────という名前でしたか。私の夫と同じ名前ですね。凄い偶然!


「そこで偶然だと思っていそうな人よ。君は前世で、『夫に似ている雰囲気のキャラがいるから』と言ってとある乙女ゲームをやり始めましたね?」


 その通りです! でも、いつしかそのキャラ────レオ様のことが大好きになっちゃって、夫にレオ様のことを語りまくってたんだよね。


「いつの間にかそのキャラのことが大好きになってしまい、夫に語りまくったでしょう?」


「心が読めるんですか!?」


 不思議だー。レオ様って不思議だねー。あ、でも中身は日本人なんだよね……。

 レオ様は溜め息を吐いて、


「読めるもなにも。────『夫なのに、二次元のキャラクターのことを語られて嫉妬するなんて!』 ……まだ分かってくれないのか……?」


「それはまさに私の夫が口癖のように言っていた言葉……! え、何を分かるんです、くわぁあああああああああああああああっ!? あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


「やっと、気付いた……!?」


 私は歓喜の表情を浮かべているレオ様の鼻先にビシッと人差し指を向けて、思いきり叫んだ。


「さては、前世で私達夫婦をストーカーしていましたね!?」


「何で!? 名前を聞いた時点で気付いてよ! 前世の君の夫だよ!!」


「え?」


「え?」


 ………………………………………えっと?

 情報を整理しよう。

 まず、レオ様は転生者。中身は日本人。前世の名前は私の夫と同じ。夫婦の日々の会話すら知っている。

 あ、夫婦をストーカーする人なんて、普通はいないか!


 つまり、レオ様は私の夫であると。

 ヤバい。罪悪感が……!


「……………………なんか、ほんとに、心の底から、すみませんでしうぉわぁあああああっ近い近い近い!」


 土下座しようとしたら、唇と唇が触れ合いそうな程にレオ様の顔が近くなった。


「本当に申し訳ないと思っているなら、キスさせてください」


「それは勿論大歓迎ですが目が怖い怖いですんんぅっ!」


 はい、今世のファーストキスはレオ様です! 嬉しいよ! 嬉しいけど苦しい! このキス、前世で夫が私にプロポーズした直後と同じ感じだ! あの時も我慢してたんですね! 分かりますからちょっ、苦しいぃいいいいっ!

 そして流石ヒロイン。こういう時に出る声が凄いエロい。前世の私なんて比べ物にならないよ。キスの合間に息継ぎする時に出る声が、もう本当に。ほら、エロすぎてレオ様のキスが更に激しく……息できない。


「あっ、はぁっ、はぁ……んぁあっ!」


 あれ? レオ様、再び服を脱がせようとしてない? そりゃ二十代半ばで、旺盛な時期なんだろうけどさ……。レオ様の顔を見たら、それはそれはもう……!


「あぁっ、エロい! レオ様が18禁の顔になってる! カメラをプリーズ!」


「こういう時くらい、そういうことを考えないでほしいなぁ!?」


「え、レオ様? いえいえ、カメラは大事ですよ。ってか、脱がそうとしてましたよね、さっき。今世では初めてなので、せめて立ってプレイするのではなくベッドにてお願いしたいです。二回目からならエロいのも受け付けますから!」


 初めては大事、初めては大事。レオ様とエロいことするのは大歓迎だけど、やっぱり最初は普通がいい。

 レオ様は呆れた目で私を見ているけど……え、そんなにエロいことやりたかった?


「それに、レオ様。今私達は断罪イベントを抜け出してる最中なんですよ? 戻らないといけませんし、時間が足りませんよ!」


 あ、レオ様が悲しそうな表情を……憂いを帯びた表情も美味しゅうございます。ご馳走さまでぇーす!


「じゃあ、もう一回キス……」


「妥協したんでむぅぅぅっ!」


 妥協したんですね! と言おうとしたらキスされた。さっきよりも深いです! レオ様の舌が私の舌に絡み付いたり、私の舌の下の唾液線を刺激してくる!

 エロい顔のレオ様が最上級にス・テ・キ……なんて思っていたら、意識が遠くなった。酸欠ですね、分かりますー……。







 気づいたら、悪役令嬢達の処罰は無くなっていて、攻略対象も正気に戻っていた。レオ様が色々頑張ったらしい。

 そして私は、レオ様の策略によって、レオ様の嫁になることが決まった。外見がレオ様で中身が前世の夫という、素晴らしい人物だ。

 素晴らしい人物だけど、夜はエロいので心構えが大切だ。昼間はそうでもないんだけどなぁ……。


 そんな訳で! 私は逆ハーではなくレオ様ルートに入って、レオ様と結ばれることになった! 今世は寿命で死にたいね!

 前世は、賞味期限が三日切れた食べ物だと思っていたら、実は一年と三日切れてた物を食べて、夫婦で食あたりになって死んじゃったんだけどね!


 レオ様、私、今世はちゃんと、月日だけでなく年も気を付けますから!



















The end.



 お読みいただきありがとうございますm(__)m

 評価や感想をお待ちしております!



 レオ様目線のも書いてみたいな……なんて思ったり。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今まで読んできた中で死因が1番ヒドイw
[一言] 是非、レオ視点の話も書いてください! 読みたいです(*^^*)
[一言] 主人公の性格が可愛い面白くて楽しかったです!
感想一覧
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