15/17
第14章 魂の鳥籠
大詰めです。
花嫁選び、
人形選び。
はたして姫はだれ？
あなたの妹はどれ？
１
少年は躊躇うことなく、
まっすぐ歩き出します。
妹によく似た姿の人形が、
ほほ笑みかけてきました。
彼は目を瞑ります。
「お兄ちゃん、あたしはここよ。
どうしてたすけてくれないの？」
妹の声をした人形が、
後ろでひきとめます。
彼は耳を塞ぎました。
妹がよくそうしてたように、
上着の裾をひっぱられます。
それでも足を止めません。
２
そこにたどりつくと、
ふんわりと懐かしい、
魂の匂いがしました。
あの白い花の香です。
「――妹は、君だ」
瞑っていた目をゆっくりと開くと、
そこにはノゥスィンカがいました。
そっとひき寄せ、
額に接吻します。
人形の顔がひび割れて、
ぽろぽろと砕けていき、
知っていたよりも大人びた、
少女の顔があらわれました。
少女の眼からは、
ぽろぽろと涙が、
零れていました。
３
「そなたに感謝しよう。
よくぞ、妾をみつけた」
後ろからの声に、
彼が振り向くと、
下女の姿をした人形が、
そこに立っていました。
その体は不具ではなく、
その面は女王の威厳と、
笑みを湛えていました。
「妾の体も、
心も魂も、
そなたのもの」
下女の衣裳が、
散り散りに消え、
眩い裸身となり、
「狂った人形の妾は、
魂を探し続けた。
なれどもはや、
どれが自分の魂か、
みわけられぬように
なっておった」
裸身は透き通り、
金属の籠になり、
「そなたが妹を
みつけたなら、
妾はすべて
終わらせ、
無に還ろうと
しておった」
籠は解れるように
消え失せていき、
「じゃが、いまわかった。
妾の魂は、その娘だったのじゃ」
瑠璃の小鳥が羽ばたき、
少女の肩に舞い降りて、
綺麗な声で囀り――。
エピローグ 2015/08/22 20:00 投稿予定
