第11章 生贄の儀式
2015/08/19 書き足しました。
“助力してくれる者はだれ?”
それが、一つ目の問いかけ。
1
人の世が夜になる頃、
氷石の魔女はふたたび、
少年を呼び寄せさす。
「第一の試練を与えようぞ。
妾にあらがいうるほど強く、
そなたを助けうるほど賢く、
妹のほかを愛することなき、
そなたのために死ねるほど、
愚かなる者をつれ来たりて、
妾にその名を告げるがよい」
無理難題を突付けながら、
助力者を見付けよという、
意地の悪い試し方をする。
「彼女がそうです」
少年が顧みると、
下女が進み出た。
「それは出来そこないの人形、
それに付いた名などはない」
魔女が蔑みの一瞥を向けるが、
下女は主から目をそらさない。
「いいえ、あります。
彼女は、レノアです。
それが彼女の名です」
少年がきっぱりといい切る。
「よかろう、それがそなたの
協力者とみとめよう」
魔女はそれを肯った。
2
下女は、服を脱ぎ裸で、少年の前に立つ。
羞恥と歪な体を晒す怖れにふるえながら――。
少年は白くほっそりとした肢体を美しいと思った。
傴僂の少女、
畸形の人形。
少年はこの不細工なはずの、
少女の人形に性を意識した。
なぜかこれまでの女性に対して、
抱いてきた嫌悪は感じなかった。
互いに裸で抱き合う。
少女の体は人形故に、交わり合えはしない。
だから、ただ抱きしめる。
ほかには、彼女の一途な献身に対し、
償うすべを知らなかった――。
3
少女が眠りから覚めると、
足はわずか引き摺るだけ、
まだ動かせはしないけれど、
もう片方の腕が付いていた。
少年に名を捧げ、
魔女に認められ、
それによって得た力だった。




