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激走
「暴れ牛だぁぁぁっ!」
兵士が叫びを上げながら、馬で街中を疾走してゆく、その後ろから悠々と歩く無数の牛。
「こら、走らなきゃだめだべっ!」
んも゛~~?
せっつく牧童もなんとやら、牛さん歩いてウンコする。
憤慨ぜずに、糞害する牛。
今日も平和だ
◇
「…それで、何だったんですかね」
牛の血抜きをしながらシヤドがみんなに牛の目的を聞いたりしているが、誰も知らないし上にいきなり仕留めた張本人が不思議そうな顔をしているのが一番納得いかない。
「タダで肉が食えるんだからどうでもいいだろ」
マスターは大鍋で内蔵を煮込んでいるし、私は私でモモ肉を店のに吊す作業をさせられている。
まぁ、私たちは騒ぎの中心部には行かなかった。
シヤドが「野次馬や、第一発見者は必ず死ぬのがお約束だ」と主張して譲らなかったのもあるが、私自身がお尋ね者だからです。
「塩漬けでいいから持って行けたらいいんだけど…」
シヤド曰わく、脂がのった極上の牛らしいし、最近まともな物を食べていなかったのでそんな言葉を思わずこぼしてしまった。
生暖かい目で見られたような気がしたが気のせいだろうか。