うむ
バルコニーにありとあらゆる物が飛びかい散乱する。
物が投げつけられる主役二人。
厳重に張られた結界の後ろ、王冠を載せた男性は呟いた。
「こうなる事は読んでおった」
「…まぁ、無礼講と明言してありますし、王家を盾にあれだけ好き勝手にやればこう(・・)なりますわね」
男性の傍らの女性も納得している。
広場に集められたのは、主役二人になにかしら恨みを持つ者達。
面接官が断罪を認めた、ありとあらゆる方面から集められた被害者達だ。
―無礼講って事にして何しても許すから、王家を恨んだりしないでね?
この婚約式はそんな意味合いを持って執り行われる事が決まったのだ。
勿論、そんな醜態をさらした者が栄えある王家の人間として政治に参加することは難しい。
否、周囲が認めない。
「頃合いだな、軍務大臣。」
合図の花火を打ち上げると、広場に居る者は一斉に逃げ出した。後には誰一人残らない。
この後、兵が街に繰り出し、何故か無数の暴れ牛が仕留められる予定だ。
王家主催、血の婚約式。
ゴミで汚く汚れたバルコニーに顔をしかめながら、ドロドロに汚れた姿の主役二人に「ああ、すっきりした」と、城に居る誰もが清々しい爽快感で満たされていた。