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悲鳴

「だから、足りねーって言ったろ」


「アンタが食い過ぎてるんだよ」




昼過ぎ、酒盛りをしていた二人は再びつまみを買いに行くか話している最中。

店主は店として食い物を提出する気が全くないようで、イグナシオに買いに行かせるつもりのようだ。


しかも、場所代代わりだと主張している。場所代だと言うなればお通しくらい支度してないものだろうか?


「だいたい、冷蔵箱の中のなんかカビ生えて…」


「バッカ!客の前で言うことか!?


イグナシオがとんでもない爆弾を投下し店主は慌てて黙らせる。」


「ったく、中身なんざ何年も入れてねぇんだから安心してくれ」

イグナシオは、中身ではなく箱が(・)黴びていたのだと言う。


数日放置して中身がカビたなら、だらしがないと笑えるのだが、客が来ないので月もしくは年単位で冷蔵箱の存在を放置してきたという事か。


(そんな事私に暴露されてもこまるのだが…。)


もし次に店にきた時食べ物を出されたらどんな顔をしたらいいのだろうな?と思いながらリゼルは乾いた笑いを返すしかなかった。



「おお、見たこと無いお客さんがいる」


それから更に一時間。イグナシオの買い込んできた酒を飲み干した店主は裏に炊き出しに帰ってしまい、リゼルが本格的に昼飯をどうしようか悩んみ始めた頃に、一人の若者が店に入ってきた。


「久しぶりだなシャド」


「あ、来てたんですかイグナシオさん」


平均的な身長に短く刈り上げた黒髪、黒い瞳は生き生きとしている。彼が件の冒険者らしいが、イグナシオが声をかけると警戒する事もなく歩いてくる辺り不用心だなとリゼルは思った。


「イグナシオさんのお連れさんですか。はじめましてシャドって言います」


「はじめまして、リゼルと言いますね」


それでも、イグナシオが良い奴と言うだけあり印象は悪くない。


「忙しい中悪いな。」


「いえいえ、どうせくそったれ共が門を塞いでる間はやる事なんかありませんよ」


笑いながら話すシャドの口から、口汚い言葉が飛びだす事にリゼルがギョッとする。

「悪い、コイツ支配階級がだ一いっ嫌いでさ」


「や、そんな事ないです。馬鹿な糞共が上にいるのが嫌いなだけで、エライ貴人がいたらちゃんと尊敬しますよ。」


ケタケタ笑いながら話すシャドが、少なくとも後者には当てはまらないと思われるリゼルが反応に困る言い訳をする。


「で、なんで暇なんだ?」


「イグナシオさんに話しを聞いてから冗談半分で集めてきた古い卵がバカ売れしちゃったから見つかる前にトンズラしようかなと。」


「マジか」


「どのみち、リゼルさん連れて旅立つ予定だったから冗談で在庫の売れないものの話ししてたら、口コミで広がったらしくて言い値で買うからってさ」


「お前、そんなもん売るなよ」「いやー、ボロい商売でしたわ~」


「聞いていたよりいい人物みたいだな」


リゼルは感心したようにイグナシオに話しかける。


「よく、いわれます」


キリッとシャドが言葉を返す。


「…すいません、みっともない奴で」


申し訳なさそうにするイグナシオ。

旅仲間に推薦しようとしていた矢先にこれでは、なんともいたたまれない。


「そっちの人がリゼルさんですね。オレは本名が恥ずかしい奴なんで、皆にシャドって呼んでもらってます」


「恥ずかしい?」


「えぇ、例えばリゼルさんが下着姿を見られて押し倒されるくらいに恥ずかしいんですよ」


「このバカタレ」


「…ごっ」


シャドがイグナシオにゴツンと殴られる。


「痛いっす」


「余分な事しやがって、そもそもなんてもん売りつけてんだ。お嬢、門が開いたら速攻で外まで行きましょう。」


「え、俺は?」


「後で合流すればいいだろ」



「でも、連中の御披露目は昼からだったはずだから、もう始まってるはずですし、もしかしたらそろそろ何か…」


『オオオオオオッ!!』


遠く離れたどこかから怒号と悲鳴が響いてきた。

何かが最悪な事が始まっているようだ…。

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