国側
その日騎士団は、未曽有の豪雪の後処理に追われていた。
このあたりは冬ですらメッタに雪が降らない。
だというのに、夏と言って差し支えない陽気の下、騎士団全てを動員して雪書きをしている。
あきらかな異常事態。
「失礼します。スラム街巡回中の部隊から緊急を知らせる照明弾があがりました!色は赤・赤・黄色が同時・その後白三つ・救援要請あがりました。その後、信号弾を確認した近隣の部隊三組が向かうとの信号弾があがっています。」
「そうか、ならそちらは彼らに任せよう。後は?」」
スラム街の支援に向かったのは槍聖のトム老とカール小隊だ。住人が暴動を起こしたくらいなら対応出来ると思われる。
しかし信号弾による赤二つは“現戦力での対処不可能”と隊が判断したので、スラム街内部の被害が予想以上に深刻で人手が必要なのだろう。
「それから、雪はスラム街中心に王都全域に広がっているようですが、王都の外の草原には雪の痕跡すらありません。魔術師による魔法痕もないとの事で自然災害と発表されました」
「わかった。引き続き流通経路の確保を優先し作業を進めるように団員達に通達しろ」
「サーッ!」
淡々と告げる兵士に淡々と答えたが、内心穏やかではなかった。
平野の竜巻や山間部で雨が降った後の川の氾濫など自然災害は年に数回報告される。
異常気象による自然災害とは何者かが精霊の怒りに触れた場合に引き起こされる事が多い。
そうでなくても気まぐれな精霊による災害は人にどうこう出来ると物ではない。
精霊による自然災害は精霊が自然であるがための自然災害であり天災に他ならない。
原因究明よりも現実的な解決方法を優先しなければならない。
「大変です!槍聖様とカール小隊が豪雪地帯で“死体”で発見されたとの報告が入りました!」
「…そんなバカな」
老いたとは言え、この国最強の槍使い槍聖様が“死亡”した?
王都でなにか恐ろしい事が起ころうとしているのだろうか?
◇
「ぶぇっきしっ!」
雪に埋もれ首から“死体”と書かれた看板を下げた年寄りが盛大なくしゃみをした。
「爺さん、死体役の人は動いたらいけないらしいですぜー?」
隣で同じ看板を下げた冒険者が雪に顔を埋めたまま隣人に声をかけた。
―パスンっ!
―パンッ!
―ドン!
老人の近くに雪玉が着弾し分解する。
「わかっとるわい。くしゃみくらいでケチケチ言うない」
「いやー、死体役が動いたら“ゾンビ”って事で生存者全員から雪玉投げられるからマジ気をつけて下さいや」
「もう、何発か投げられたわっ!」
「そら、お気の毒様でしたな」
「うう、寒いのぅ」
「寒いっすねー」
雪玉をくらい“死体”となった二人はそのまま静かに雪投げが終わるのを待つのだった。
――――
「カール小隊全員生きてるかー?」
「「「「全員死んでまーす」」」」
他の死体役も思い思いの体制を維持しながら倒れていた。
メリクリ




