迫る危険
竈に火がくべられ、肉が焼かれる香ばしい匂いが酒場に充満してゆく。
しかし、この店は色んな意味で危険でした。
まず、ほぼ全ての調理器具が年単位で放置されている。
マスターは「美味いもん食わせてやる」といき撒いていたが、美味いものは心穏やかに食べさせてほしい。
サビの浮いていたフライパンはイグナシオが金ブラシで磨いていたが、調味料が怖い。
先ほどマスターは、入れ物を綺麗に拭いていましたが、中の調味料の保存期間が気になります。
ぜひ気にして下さい。
「お嬢さん、香辛料は完全に密封されてれば何年前の物でも大丈夫なんすよ」
「あ、そうそう。安い屋台料理だと1日中同じ水を使って調理してたりするの多いですし、それに慣れてれば大丈夫だよ」
マスターの動向をドキドキ(―)しながら観察していたら二人が私を落ち着かせようと色々な事を話しかけてくる。
でも、シャドの話は体験した事があるから絶対大丈夫じゃない。
まだ太ってた頃に飢えに堪えかねて屋台で買い食いしたら、たかが4日で別人みたいな姿になった。
うん、明らかにデブなのにどこ痩せて見えるという末恐ろしい姿だった。
窓ガラスに映ったあの時の私を冒険者に見られていたら、今頃この世に居なかっただろうな。
「屋台でヒドい店にあたってから、怖くて買い食いしていない」
あれ以来、普通の店でパンを買い、ハムや野菜は高くても市場から一番安心だと太鼓判を押されている店でしか変えなくなった。
私の様子を見ていたイグナシオが「そういや、一気に痩せた時がありましたね」としみじみつぶやいていた
「あ、香辛料だとこんな話がありましては…」
続いて、シャドがこんな話をしてくれた。
何年も人気が無かったダンジョンを訪れた冒険者パーティーが、最後に訪れたであろう者が残したらしき荷物を回収した。
その中には、当時は貴重な香辛料があったのでそれらの調味料を使って豪華な食事をしたらしい。
―そして、彼らはダンジョンの奥深くへ進み、ダンジョン内部で食料が尽きたという。
彼らが街へ引き返し、戻った時には崖崩れでダンジョン入口が塞がれていて今ではそのダンジョンがどこにあるのがすら定かではないのだそうだ。
ダンジョンアタック中に食料を無駄にすると、思わぬトラブルでチャンスを不意にするぞという話らしい。
「食べ物は粗末にしない、でも。食べれる時に食べないのはバカのする事だと」
「シャド、お前から何回か聞いてるけど必ずそれを引き合いに出すな」
「…食べれるって大事です」
いやたしかにそうだけど、ここは街の中だし食中りは怖いと思う事に非はないと思います。




