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N その場所に溶け込む話

 ルゥロは帰ってくるなり、大声を発した。言わずとも、全員が驚いたようで慌てて大広間に集まった。アテナは急ぎすぎて転んでいたようだ。

 「いきなり大声を出すな、ルゥロ」

 ゼウスが寝ぼけた目を擦りながら言う。只今、明朝5時。ギリンから話を聞くといてもたってもおれず、夜が明ける前に大オアシスを飛び出した。砂漠の寒い夜を何重にも纏った布で何とかやり過ごし、人のいない関門を抜けると城までそう時間はかからない。着いた時刻は上記の通り、誰もが静かに眠っているも忘れて言った言葉は「見つけた」だった。

 「大体何を見つけたっていうんだ」

 レックが腕を組みながら言った。興奮を抑えられないのか、動作付きで説明する。

 「砂漠の原因だよ、原因! 本当かはまだわからないけど、手掛かりを手に入れたんだ!!」

 「砂漠化…?」

 まだ意識がはっきりしていなのか大声で話すルゥロにセイテは耳を押さえながら尋ねる。

 「そうだ! 砂漠化の手掛かりを掴んだんだよ。いやー、偶にはニミルの頼み事も聞いてみるもんだ」

 耳を疑うような発言がされたが誰も気にすることはない。ルゥロの興奮についていけないのか、大人たちはただ茫然としていた。意識がはっきりしてきたのかセイテが彼にぐいっと顔を寄せた。

 「ほんとに!? じゃあ、これで…!」

 「ああ、砂漠化を元に戻せるかもしれない」

 二人は手を取り合って喜んだ。そんな中、レックは至って冷静だ。まだ砂漠化の手掛かりを掴んだだけで本当にそれがあっているかは分からない。喜ぶのはまだ早いと言った。

 「そうかもしれんが行ってみる価値はある。それに…」

 「火のないところには煙は立たない」

 ゼウスが人差し指を立てながら明るく言った。そして、何か言いたそうなクロスとアテナを尻目にルゥロとレック、セイテの背中を押して行く。

 「ほらほら、仕度しなくていいのか?」

 三人は弾かれたように顔を見合わせると頷き合った。ルゥロを筆頭に三人は走り出した。それぞれが私室に行った後を確認したのか、ズグが上から残された大人たちを見下ろした。砂漠化の件については手出しをしないでおこうとあの事件以来、四人は決めていた。次の世代を担う彼らに任せようと、自分たちはもう歳であり、随分と国民から反感を買っている面もある。

 「手掛かりって一体何なんだろうな」

 肝心なことを聞いてないゼウスはズグを見ながら呟いた。



 国立ユスティティア学園は主に軍人育成学校らしい。それでも入学動機は様々で戦闘能力の低いまま卒業する生徒も少なくないようだ。国立として設立してある学校は全国にも2つしかなく、もう一つは学力向上が主で入学者も卒業者も多い。国が一つしかなく、大きな戦争はないというのにどうして学力や戦力を向上させるのはいささか謎であるが、どうも種族関連が大きな理由だそうだ。それに今となっては伝説のような話だが、この世界にはもう一つ国があったと噂されている。

 国立ユスティティア学園は島の上に設立されており、ここも砂漠化を逃れた場所だ。戦闘の授業をするためにか自然も多く、設備が整っている。ちなみにこの学園の設計図を担当したのはゼウスだ。

 三人はこの学園を訪れるにあたって、まず手紙を出した。目的の少女がいるかどうかを確認するためだ。返事は次の日に返ってきた。ギリンから聞いたファミリーネームを書いて送った所、2年生にその少女がいるらしい。確認が取れたところで、次は入学手続きを行った。向こうも王子とその側近の入学を断れるはずもなく、めでたく三人の入学が決定した。城から通うには距離があるため、三人共寮に入ることになる。それをニミルと咲耶に説明すると二人は口を揃えて「ずるい」と言った。

 「ずるい?! 俺たちはずるいのか!? というより、ニミル、結婚式はどうするんだよ」

 「あ、それに関しては大丈夫。結婚式は城で行うことにしてるから。籍も入れてるからね」

 ルゥロは驚いて固まった。

 「結婚式を城でするって初めて聞いたんだが」

 「言ったよ? 丁度その時、ルゥロは本を読んでたけど。じゃあ、その感じだと、相手が誰かもわかってない?」

 呆気にとられながら頷くと「咲耶だよっ」ニミルは明るい声でそう言ったものだ。

 驚きすぎて口出しする気にもならないと彼は二人の入学手続きも行った。

 「言い忘れてたんだが、向こうに着いたらクラス分け試験をやるらしいぞ」

 ユスティティア学園に向かう馬車に乗りながらルゥロは四人に告げた。

 「筆記試験とか言わないよね」

 「いや、筆記試験だ」

 「今まで勉強したことないけどぉお?! てか字を書ける自身もない!!」

 ニミルは頭を押さえながら言う。

 「私は現代のことはまったく分からんぞ」

 「でも昔のことには詳しいからそういう教科では有利だと思う」

 知らなくても困らないのか咲耶は顎に手を当てながら言う。常に城で勉強しているルゥロとニミル、父親から教えられてきたレックは自信があるようだ。

 「一応、歳で学年は決まってるみたいだが、クラスまで優遇してもらうわけにもいかないからな。そこら辺は自分たちでどうにかするしかない」

 「兄上、制服があるんだよね」

 「あるぞ、学年によってちょっと違ったりするらしいがほとんど変わらない」

 「寮の部屋分けは?」

 勉強できないと悶えていたニミルはそんなことを聞いた。

 「もちろん咲耶は俺たちと別だが、部屋分けとして俺とニミル、レックとセイテだ」

 ニミルが「レックと一緒だったら死んでた」と安心している中、セイテは頭を下げ、がっかりしていた。大好きな兄と一緒になれなかったからか、何とも残念そうだ。

 「兄上とがよかった」

 「ごめんな、ニミルとレックを一緒にするのは危ないと思ってな」

 ルゥロはセイテの頭を撫でた。それに少し嬉しそうにするもやっぱりがっかりしている。「隙を見てルゥロの部屋に行けばいい」レックが正面を見ながら不愛想に言った。けれど、ここにいる四人にはよくわかる。これがレックの優しさなのだと。

 「俺はいつでも待ってるぞ」

 にかっと笑うルゥロにセイテは本当に嬉しそうに笑った。

 道中暇することなく五人は国立ユスティティア学園に辿り着いた。そして、間もなく試験が始まるのだが五人がどういう結果になったのかは想像通りなのである。



*用語説明

 ・国立ユスティティア学園

  ルゥロたちの住む城のある大陸の北にある軍人育成学校。大分昔からあるようでいつ誰が建てたのか知られてないが設計図作成の一人にゼウスの名が記されている。国が経営する学校なのでお金はそうかからない。


 ○国立ユスティティア学園制度

 五年制度で入学するのに歳は特に関係ないが十五を過ぎないと入学できない。戦闘能力・学力が高ければ例外として認められる。クラス分けは筆記試験で行われる。

 クラスは学力の高い順にS・A・B・Cとなっている。

 戦闘能力は定期的に行われる試験で判断される。こちらはランク分けがあるが学年、クラスにこれといって関係ない。

 ランクは十段階に分かれており、こちらは色で分けられる。

 進級する際に、戦闘能力又は学力の試験がある。このときは好きなほうを選ぶことができる。

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