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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング07

 水月とセナは転移石によってワープする。


 さすがに水月もこの現象に慣れた。


 しかして……跳んだ先。


 そこで視界に飛び込んできた情報には驚かざるをえなかった。


 辺り一帯見渡す限りの摩天楼の集合体だったのである。


「な……な……」


「な?」


「何この街?」


「先進都市クルールよ」


「先進都市?」


「要するに都会よ」


「…………」


 沈黙する水月。


 キョロキョロと辺りを見渡す。


 チラホラと冒険者の格好をしているプレイヤーもいるが……大半のプレイヤーはスーツで身を固めビジネスバッグを片手に道を行き来していた。


 建物は先にも言ったように摩天楼……超高層ビルが立ち並んでいた。


 ビジネスマンがそんなビル群に吸い込まれては吐き出される。


 地面はアスファルト。


 マンホールも電柱もしっかりあり、水道や電気や通っていることを如実に物語っているのだった。


「えーと……」


 水月はこめかみに指を当ててうんうんと唸ると、


「ニューヨーク?」


 セナにそう問う。


 そう。


 まさに摩天楼天国。


 水月がニューヨークと思ったのも無理はなかった。


 しかしてセナは、


「現実世界じゃないわよ。先にも言ったけど先進都市クルール」


「先進都市って……」


 信じられないと水月は言う。


「いやさ。いくらなんでも時代考証が滅茶苦茶じゃないか?」


「私に言われても困るわよ」


「ごもっとも」


 水月はとにかく状況を受け入れた。


 そんな水月とセナを珍しげに見ながら噛みタバコを噛んで青い服……警察の制服を身に纏っている警官が目に入る。


 モード服を着こなす美女も目に入る。


 ヒップホッパー調に服を着崩してサングラスをかけた少年も目に入る。


 何よりも……多くのクラシックスーツをビシッと着こなしているビジネスマンたちが目に入った。


「中世的な時代考証の街ならまだわかる。実際商都アルメンなんかはそんな感じだったし始まりの村も牧歌的だった。ヤマトも日本風だったがまぁ江戸時代を意識したつくりだった。しかし……ここはもう異次元だろ……」


「こういう街もあるってことよ」


 セナは平然としている。


「もしかして携帯電話とか通じたりするのか?」


「通じるわよ?」


「そうか」


「ただしクルール限定だけどね」


「意味あるのかソレ……」


「クルールから外に出ないノンプレにとってはね」


「なるほど」


 納得のいってない表情で納得する水月。


 そして問いを重ねる。


「もしかしてこの……先進都市クルール? 相当広いか?」


「まぁ東京二区くらいはあるわね」


「さいか」


 さらに問いを重ねる。


「さっきから俺たち目立ってないか?」


「そりゃこんな摩天楼群の先進都市で着物なんか着てたら浮くに決まってるじゃない」


「…………」


「今の水月はとっても可愛い男の娘だしね」


 そう言ってセナは水月の腕に抱きつく。


「「「「「おお」」」」」


 と道行く人間たちがざわめく。


 百合百合な水月とセナに興奮したのだ。


 正確にはアベックなのだが、今の水月は周りから見ればどう見ても大和撫子以上の何者でもなかった。


 パシャとかピロリンなどの効果音が響く。


 道行くビジネスマンたちが手に持った情報端末のカメラ機能で水月たちを激写しているのだった。


 狼狽える水月と正反対にセナは冷静に、


「とりあえず今日はここまで。宿を探しましょ」


 そう言って摩天楼群へと歩を進めるのだった。


「宿っていうかホテルだろ?」


 水月の皮肉に、


「まぁね。スイートルームに泊めてあげる」


 セナは気付かなかった。


「まぁいいか」


 と水月は思う。


 と、そこで、


「ちょちょちょ。お嬢ちゃんたち可愛くね?」


「マジ可愛いっしょ。百年に一人級!」


 いかにもチンピラ然とした男二人に声をかけられるのだった。


 着崩した服に軽薄な笑顔。


 水月は当然……セナも悪印象しか持ち得なかった。


「俺たちについてこねえ?」


「何でもおごるし」


「損はさせねえって」


「むしろ気持ちよくしてやんよ」


 男たちは欲望と善意からそう言っているのだろうが、言葉をかけられるたびに水月とセナは汚物を投げつけられているような悪寒を覚えているのだった。


 しかしそんなことは毛ほども見せず、


「ごめんなさいお兄さん方。私たちラブラブなんです。ですからあなたたちが入り込む余地なんて無いんです」


 水月の腕に抱きついているセナがニッコリ笑って拒否する。


「ちょちょちょ。そんなぁ。女同士なんてもったいないって。男の魅力……教えてやるからさ。その辺どうよ?」


「興味ねえよ」


 これは水月。


 切れ目の瞳には嫌悪感を映していた。


 しかして切れ目と言っても水月の美貌の前には鋭い眼をした美少女……という他に表現できようもなかった。


「じゃあそういうことで~」


 セナが抱きついた水月を引っ張って男たちから離れようと足を踏み出す。


 それが癇に障ったのだろう。


「ちょ! てめっ!」


 チンピラの一人がセナの肩を掴む。


「お高くとまってんじゃねえぞ!」


 セナはその手を振り払い、


「放っておいて」


 あっさりと言うのだった。


 しかしてそれはチンピラの激情に油を注ぐことと同義だった。


「調子に乗ってると殺すぞコラァ!」


 チンピラは激昂する。


「それじゃあ殺し合いの決闘をしましょうか? 片方が死ぬまで続くオールヒット制のルールで」


 セナは言う。


「上等だ!」


 チンピラがそう言うと同時に、


「レリガーヴ、オン」


 とセナがボイススキップで自身の武装……セナ自身より一回り大きい巨大な斧……レリガーヴを召喚する。


「レリ……ガーヴ……? まさか! レリガーヴのセナか!」


「そうですよ。それじゃあ殺し合いをしましょうか」


「待て! 俺たちが悪かった! だから押さえてくれ」


「上等だと言ったのはそちらよね?」


 巨大な斧……レリガーヴをヒュンヒュンと振るって肩にかけるとセナは皮肉る。


「「ひぃ!」」


 と悲鳴を上げてチンピラの男二人は逃げ去るのだった。


「ま、こんなところよね」


 あっさりとそう言ってレリガーヴを収めると、


「じゃあ水月。最高級ホテルのスイートルームに向かいましょう」


 再度水月の腕に抱きついてセナはそう言った。

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