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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング06

「ま、いいんだがな」


 水月はクエストを受けてウィンドウを消すのだった。


「で?」


 水月とセナはアドバイザーからのクエストを受けると、商都ヤマトに引き返した。


 商都ヤマトの、時代劇に出てきそうな団子屋のテラス席に水月とセナが座る。


 相も変わらずセナのおごりで団子と茶を頂いていた水月が問うたのだった。


「ワープアイテムですぐにクリスタルドラゴン退治に行かんのか?」


「簡単に言うけどね……そもそもクリスタルドラゴンや宝石洞窟についてあんたはどれだけ知ってるのよ?」


「何も知らんに決まってるだろ?」


「…………」


 無言で首を振った後、セナは、


「宝石洞窟のデータ、オン。水月と共有」


 そうボイススキップを行なった。


 みたらし団子を食べていた水月の視界に何かしらの迷路のようなマップがイメージウィンドウとして現れる。


「なんだこれ?」


 水月の当然の疑問に、


「クリスタルドラゴンのいる宝石洞窟のマップよ」


「ふーん」


 水月は茶を一口。


「これさえあれば迷うことなくクリスタルドラゴンの処まで行けるな」


 簡潔にそう言って、その後当然ながら不思議に思う。


「メニューにはダンジョンのマップ詳細なんて用意しているのか?」


「そんなわけないでしょ」


 セナは、


「何を馬鹿な」


 と否定する。


「ダンジョンマップの詳細が初めから有ってみなさいよ。ゲームにならないでしょうが」


「そりゃそうだ」


 水月はみたらし団子を一本食べ終わると皿に串を置く。


 串は存在密度を薄れさせて消えた。


「じゃあ何でお前は宝石洞窟のマップなんて持ってんの?」


「以前踏破したからに決まってるでしょ」


「つまり一回踏破したダンジョンはデータとして現れるってことか?」


「そういうこと」


「しかしな……」


 水月はそこで茶を飲んで一息。


 そして言葉を紡ぐ。


「俺と共有してよかったのか? 大事な情報なんだろ?」


「修練の書を注ぎ込んでレベルアップさせた相手にダンジョンのマップ程度を渋ってどうすんのよ」


「納得……」


「本来ならマップ情報は高く売れるんだけどね。ま、サービスしておいてあげるわよ」


「感謝……」


 心を込めないで水月は言うと、みたらし団子に手をつける。


 そしてマップ情報を指で弄って宝石洞窟のモンスターの情報を調べる。


 幸いというべきか、苦慮に値するモンスターはいそうに無かった。


 ボスであるクリスタルドラゴンを除いて。


 宝石洞窟にポップするモンスターの平均レベルが30。


 しかしてクリスタルドラゴンのレベルは50。


 そのレベル差、実に20ということである。


 ステータスもレベル50にふさわしいモノであった。


「強いな……」


 それが水月の率直な感想だった。


「なのよ……」


 セナも同意する。


「攻撃の手段は……噛みつきと、尾による打撃と、ドラゴンブレス……ドラゴンブレスって何ぞ?」


「そのまんまの意味よ。正確には魔法に分類される制圧攻撃」


「魔法に分類されるなら抗魔剣でキャンセルできるんじゃないのか?」


「できるけど……実行可能だと思ってんの?」


「多分余裕」


 水月はそっけなく言った。


「少しは防御にステータスまわしなさいよ。死んでからじゃ遅いのよ?」


「とは言ってもな……」


 そうぼやいて、水月はみたらし団子を食べて、咀嚼、嚥下する。


「どうもこの世界、初心者にもやさしい設計になってるからな」


「どういうこと?」


「魔術も発動地点がわかって速度もそんなに速くない。ま、俺にとっては……だが。故に初心者にも発動が感知出来て反応できるだけのゆとりが持たれている。それは弓矢や剣のスキルにも言える。レイだったか? 絡んできたソードマンとアーチャーとマジシャンの攻撃は俺の反応速度の十分の一にも満たなかった。正直、ぬるい」


 渡辺椿との勝負を思い浮かべる水月だった。


 一撃で死ぬという点において椿との勝負とツウィンズでの勝負は変わらない。


 そして緊張感において椿との勝負の方が圧倒的にスリリングだったのである。


「お前だって巨大な斧を軽々と振り回してるだろ? それについて疑問に思ったことはないか?」


「…………」


 反応できないセナ。


「この日本刀にしても……」


 と水月は腰にさした二振りの日本刀の柄頭をチョンチョンと指先で叩く。


「重さが竹刀の半分もない。誰でも簡単に扱えるように……だろうな」


「つまり……」


 とセナがまとめる。


「この世界における戦闘は簡素だと?」


「そう言っている」


 水月は目をつむってズズズと茶を飲む。


 そして、


「ほう」


 と吐息をついた。


 茶を飲み干して湯呑みをお盆に置くと湯呑みは消え失せた。


「じゃ……」


 と水月は言って、立ち上がる。


「その宝石洞窟とやらに行こうぜ。俺はワープアイテム持ってないからその辺りのことはしくよろ」


 簪をさした髪をかきあげ大和撫子の着物を振って水月はニカッと笑うのだった。


 それがまた……いと趣があってセナの慕情をくすぐる。


 しかしてセナはその感情については何も言わず、


「転移石、オン。クルール」


 とボイススキップでワープアイテムを起動させる。


 次の瞬間、水月とセナを浮遊感が襲った。


 そして商都ヤマトから姿を消す水月とセナだった。

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