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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング05

「こんな環境では防御に専念する意味を感じられない」


「安易だと言うの?」


「忌憚なく言えばな」


 どこまでも水月は飄々としていた。


「私は……水月に死んでほしくない」


 それは勇気を振り絞った言葉だった。


 それを理解した上で、


「まぁ大丈夫だろ」


 水月は気付かぬふりをする。


 そして、


「そろそろアドバイザーのところに連れていってくれないか?」


 結論を急ぐ。


「むぅ」


 と不満げに息を漏らした後、


「こっち」


 とセナは先頭を歩く。


 無論グループは水月とセナしかいないのだから水月を先導するというだけの話ではあるのだが。


 水月は商都ヤマトの街並みに目を奪われながらセナについていく。


 途中、


「お、回転焼き屋がある」


 そう言って、


「カスタード一つ」


 と水月は自身の金で回転焼きを一つ買う。


 安かった。


 一個百ケトル。


 水月の金銭でも十分に買える値段だ。


 そして、


「はふはふ」


 と回転焼きを食べる水月に、


「気楽でいいわね」


 セナはそう皮肉る。


「ま、ゲームの世界だしな」


 水月はやはり飄々と、


「緊張したって意味はないだろ?」


 そう言うのだった。


「まぁ水月がそう言うのならいいんだけどね」


 セナはやれやれと言って、蛇の目蝶の模様をあしらった着物を振り乱して水月の前を先導する。


 商都ヤマトは竹林に囲まれている。


 それは先に言った通りである。


 そしてその竹林にセナは遠慮なく入っていくのだった。


 商都ヤマトを出て戦闘区域に入っていくセナ。


 無論、


「レリガーヴ、オン」


 と巨大なセナ専用の斧を装備することも忘れない。


 水月も鞘から日本刀を抜く。


 その場所は既に戦闘区域だ。


 プレイヤーもモンスターも襲ってくるものだと考えて間違いない。


「しかしてモンスター出ないな」


 結界を張っている水月が、


「拍子抜けだ」


 とばかりにそう口にする。


 そして商都ヤマトから少し離れた竹林の中に茅葺の小屋が現れた。


「あそこがアドバイザーのいる場所よ」


 そして水月とセナは小屋に入る。


「おうおう。珍妙な客がいらっした」


 ゲームのアドバイザーはそうやって水月たちを歓迎した。


 白髪の老人である。


「こいつがアドバイザー?」


 ある意味で失礼にあたる言葉を吐く水月にセナは頷く。


「間違いありません」


「で? 何の用よ?」


「聞きたいことは一つ。ラーラ=ヴェルミチェッリはこの世界にまだいるか?」


「ふぅむ……」


 とアドバイザーは悩み、


「条件がある」


 と言った。


「条件?」


 寝耳に水だと水月。


「アドバイザーは情報を教えるにあたってクエストを提議するのよ」


 セナが補足した。


「そういうことは先に言え」


 水月はうんざりとする。


「セナがツウィンズの世界にいるかどうかは正確にわかるんだろうな?」


 水月がアドバイザーに詰め寄る。


「無論だ」


 淡泊にアドバイザー。


「で? 俺は何をすればいいんだ?」


「クリスタルドラゴンの鱗を取ってこい」


「クリスタルドラゴン?」


 水月の確認に、


「クリスタルドラゴン」


 アドバイザーは率直に頷く。


「アドバイザー! それは!」


 ありえないとセナが言うがアドバイザーは冷静だった。


「それほどでなければラーラの存在確認は教えられん」


 きっぱりと言いきられる。


「知ってるのかセナ……」


「ボスキャラです。宝石洞窟の」


「ふーん」


 あっさりと頷いて、


「じゃ、引き受けてやるよ」


 許諾する水月だった。


 次の瞬間、水月の視界にウィンドウが表示されて「クエストを受け付けました」と確認が取れた。


「クエストなんだな」


 水月がそう言うと、


「だからアドバイザーは情報に見合うだけのクエストを出すと言ったじゃないですか」


 セナが確認する。

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