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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング03

「ほ~」


 商都ヤマトに転移してその風景を見た後、水月は感嘆した。


 木造の家々が無数に並んでおり、商都自体は竹林に囲まれている。


 店にはのれんがかけられており、商人も例外はあれど基本的に日本風だ。


 江戸時代にでも迷い込んだかのような錯覚を覚える……そんな街だった。


 ヤマトの中央を流れる大きな川は木造のゴンドラが行き交いしており、水月とセナは木造の……数学的に完成されたアーチ状の橋からその様子を見ることが出来た。


「ザ・日本だな」


 そんな水月の感想に、


「そうね」


 セナも否定はしない。


 無論出来ようもないのだが。


「ここにそのアドバイザーがいるのか?」


「そうだけど……まぁ寄り道しましょ。わずかな寄り道も思い出よ」


「じゃあたこ焼きおごってくれ」


「いいわよ」


 あっさりとそう言って電気が通っているのか近代的な鉄板でたこ焼きを焼く店の前に二人は立つ。


 セナが注文してたこ焼きを一パック買う。


 それをもふもふと食べながら歩く水月たち。


「ほれ、セナ……あーん」


「あーんって……」


「いらんのか?」


「私が金出したんだけど?」


「だから分け合おうってわけだ」


「…………」


 多少躊躇した後、


「あ、あーん」


 と口を開くセナ。


 爪楊枝でたこ焼きを既にぶっ刺している水月はセナの口内にたこ焼きをねじ込んだ。


 もふもふと咀嚼して、


「美味しいわね」


 そう言う。


「然りだな」


 水月も満足げだった。


「仮にだが……」


「何?」


「さっきのたこ焼き屋のおっさんにもヒットポイントがあるのか?」


「あるわよ?」


「マジックパワーも?」


「無論ね。直接攻撃力も直接防御力も魔法攻撃力も魔法防御力もあるわよ。ていうか前にも言ったけど、この世界のプレイヤーとノンプレには境界線なんて有って無いようなものよ。モンスターにだってヒットポイントもマジックパワーも直接攻撃力も直接防御力も魔法攻撃力も魔法防御力もあって、ちなみにレベルさえもあって非戦闘区域でなら攻撃できないわよ?」


「本当の人間である証拠は新人がリターンスフィアを持っているか否かってだけか」


 もふもふとたこ焼きを食べながら水月。


「そういうこと」


 セナは頷く。


 そして水月がたこ焼きを食べ終わると、残った紙のパックと爪楊枝が存在濃度を薄くして消えるのだった。


 まるで役目を終えたとばかりに。


 そして商都ヤマトの……その江戸時代ばりの風景にキョロキョロと目移りしながら水月は歩く。


 先行したセナがピタリと歩みを止める。


「着いたわよ」


 そんなセナの言葉に、


「…………」


 水月は沈黙する。


「着物屋……」


 のれんにかけられた文字を音読する。


「ここにアドバイザーがいるのか?」


「いないわよ」


「ならこの店に何の用よ?」


「わずかな寄り道も思い出って言ったでしょ?」


「そりゃそうだが」


「和服の装飾装備はここでしか手に入らないの」


「ん?」


 水月は首をひねる。


「その黒ドレスじゃいかんのか?」


 セナが着ている服は豪奢な黒色のドレスだ。


 そして水月の慣れかもしれないが、そのドレスはセナに似合っていた。


 それをあえて変えるとなれば、


「なるほどね」


 水月は全てを察した。


 要するに水月の好みである大和撫子になろうと画策しているのであろう、と。


 故に反論無く水月はセナに従って着物屋に入っていった。


 同時に、


「いらっしゃいませ」


 と店主が声をかけてきて、


「どうぞお好きなモノを選んでくださいまっせ」


 そんな言葉の後に水月とセナの視界にイメージコンソールが浮かんだ。


 見れば着物が羅列しているウィンドウだった。


 これから選べと言うことだろう。


 水月はそう察して、ピコピコとコンソールを操作する。


「試着も出来ますよお客様」


 そんな店主の言うとおり、セナはいくつかの和服を選び取って自身の体に当てていくのだった。


 桜模様の着物。


 蝶々模様の着物。


 流水模様の着物。


 竹模様の着物。


 松模様の着物。


 色々と試着し、それから、


「水月はどれが好み?」


 と水月に問うのだった。


「あー」


 ポリポリと水月は人差し指で頬を掻いて、


「蛇の目蝶の着物だな」


 そう結論付ける。

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