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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング02

「むしろ今まで気付かなかったのがすごいんだけど」


 うんざりと言うセナを意識的に無視して、


「チャット。ラーラ」


 と水月はボイススキップでチャットのウィンドウを開こうとして、


「?」


 失敗した。


 そしてセナが不機嫌な表情になる。


「ラーラ……ってことは女?」


「そうだが……あら?」


「どうかしたの?」


「チャットできない。向こうと繋がらない」


 水月は不思議そうに言った後、


「チャット。ラーラ=ヴェルミチェッリ」


 とフルネームで指定する。


 しかしてやはり繋がらなかった。


「あら?」


 不可解と言う水月。


「もうツウィンズにいないんじゃない?」


「それはリターンスフィアを使ったってことか?」


「あるいは殺されたか」


「…………」


 顔をしかめて沈黙する水月に、


「あるいは何かのクエスト中か」


 セナはフォローを入れた。


「クエスト……?」


 水月は首を傾げる。


「少数なんだけどね。たまにあるのよ。他のプレイヤーとコンタクトが取れない状況に身を置くクエストが……」


「その場合どうなるんだ?」


「どうにもならないわよ」


 セナはあっさりと言う。


 コーヒーを飲みながら。


「どっかの王族の重鎮になったとかコンタクト不能のダンジョンに潜ってるとか……ともあれ面倒事に巻き込まれているってことね」


「ふーん」


 水月は無気力に納得した。


 そして水月はボイススキップを敢行する。


「チャット。黒ドレス」


 次の瞬間、水月はセナとチャット画面を共有した。


「なによ黒ドレスってのは?」


「いや。これで通じるかと思ってな。実際に通じた」


「まぁ当人を指定できる単語なら何にでも反応するからね……この世界のシステムは」


「チャット。茶髪パーマ」


 水月はラーラを思い浮かべてボイススキップを行なう。


 しかしてやはりラーラには繋がらなかった。


「もうこの世界にはいないのか?」


 そう思う水月に、


「決めつけは早計よ。コンタクト不能のクエストもあるって言ったでしょ?」


 セナが説得する。


 水月は後頭部をガシガシと掻く。


「そりゃそうだが……」


 水月にしてみれば連絡を取れないというだけで鬱屈モノだ。


 しかもツウィンズの世界を水月は知らないのだ。


「なぁセナ」


「何よ?」


「この世界の地図はあるか?」


 問う水月に、


「地図、ポップ」


 とセナはボイススキップを活用して地図を具現化する。


 そして、


「これがツウィンズの世界よ」


 そう言うのだった。


 その大陸の形は丸々日本の四国そのものだった。


 一キロメートルの単位を察するに大きさも四国同様だろう。


 水月はうんざりとして地図を見やり、


「広……」


 と呟くのであった。


「ここから人間一人探せってか?」


 皮肉げな水月の言葉に、


「その人が本当にいるならね」


 セナが答える。


「いない可能性もあるのに?」


「大丈夫。案はあるわ」


「ほう。聞かせてもらおうか」


 興味津々な水月の言葉を断ち切って、セナは問う。


「その……」


「何だ?」


「ラーラ=ヴェルミチェッリって女の子よね?」


「だな」


「可愛い」


「可愛いぞ?」


「わ……私とどっちが可愛い?」


 セナの頬は紅潮していた。


「ふーむ」


 その言葉の真意を理解している水月は言葉を選ぶしかなかった。


「純粋な可愛さではラーラに軍配が上がるな」


 そんな遠慮のない水月の言葉に、


「…………」


 失意を覚えるセナ。


「だが、まぁ……」


 水月は言葉を続ける。


「総じて互角と言ったところか」


「……っ!」


 セナが弾かれたように水月を見る。


「どういうこと?」


「俺の好みは大和撫子でね。日本女子が好きなんだ。だからその点を加味してラーラとセナが互角だと言った」


 どこまでも水月は遠慮ない。


 あるいは憂慮がない。


「大和撫子が好きなの?」


「大好きだ」


 くつくつと水月は笑う。


「ふーん……」


 と何気なさを装ってセナは自身の黒ドレスを見やる。


 その意識を水月は正確に読み取った。


 要するにセナは水月に気に入られたいがために装飾装備に意識を向けたのだ。


 そんなことは水月が察するまでもなかった。


「ともあれ」


 セナが会話を変換する。


「行動の指針が欲しいわね。商都ヤマトに行きましょう」


「ヤマト?」


「そ。そこには予知能力者がいるから。彼から行動の指針を教えてもらいましょう」


「予知能力者……」


「要するにゲームにおけるアドバイザーよ。彼に聞けば自身がどうするべきかの指針を教えてもらえるの」


「それはありがたい。じゃあそこに行くか」


 そんな水月の言葉に頷いて、


「転移石、オン。商都ヤマト」


 セナはボイススキップで転移石……ワープするためのアイテムを起動させて商都ヤマトにグルメンの水月共々跳躍した。

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