セナという少女15
「リベラル・アーツって七科目しかないんじゃないっけ?」
「だからエキストラなんだろ」
どうでもよさそうに水月は言う。
「第八リベラル・アーツって何?」
そんな本質をつくセナの言葉に、
「魔術」
と水月はそっけなく答える。
「は?」
セナの反応は当然だろう。
誰であれ予備知識が無ければ呆けるに決まっている。
水月はさらに言う。
「だから魔術」
「魔術って……」
おたおたと狼狽するセナに、
「第八リベラル・アーツ……即ち魔術だ」
決定的な一言を植え付ける水月だった。
「リベラル・アーツが……魔術……?」
「そう言っている」
困惑するセナに遠慮のない水月。
「第八リベラル・アーツ……」
セナは言葉を噛みしめる。
「それじゃあエキストラ・リベラル・アーツ・カレッジって……もしかして……」
「魔術を研究する学園都市だ。魔法学校と言ってもいいかもな」
「魔法学校……!」
驚愕するセナが水月にはおかしかった。
「冗談じゃなく?」
「冗談じゃなく」
「でも魔法学校って……」
「信じられないか?」
「そりゃそうよ」
至極もっともなセナの意見だった。
「まぁ戯けた学園だとは俺も思うな」
そんな水月に、
「要するに心霊やオカルトを扱う学校ってこと?」
妥当なセナの発言。
「いいや。都市伝説とは違う」
水月はキッパリと否定した。
「正真正銘の魔術を研究する学園都市だ」
「でも魔術って……ツウィンズの世界じゃあるまいし……」
信じられないというセナの言葉に、
「ま、気持ちはわかる」
水月は深く同意した。
「けど事実だ」
「じゃあ水月も魔術師?」
「だな」
「魔術……魔法を使えるの? 魔法使いなの?」
「イクスカレッジにおいて魔法使いという単語は存在しない」
「?」
「魔法っていうのは要するに魔なる法則だ」
「それが?」
「そして魔術は魔法の法則を元に私式的技術を用いた手段のことだ。故に魔法使いという存在はイクスカレッジにはいない。魔法を私式的技術に埋め込み、そして有効的技術として確立した存在はおしなべて魔術師と呼ぶ」
「私式……」
「そ。私式」
水月は頷く。
「公式とは反対の式のことだ。公式が万人に……あるいは学術的に共有される式だとしたら私式は個人……あるいは少数のコミューンにだけ共有される式のことだな」
「つまり個人的な式を扱うのが魔術師ってこと?」
「そういうこと」
「水月は魔術師……」
「だな」
「何か魔術を使える?」
「どうだかな」
水月は気弱に答えた。
「多分この準拠世界では使えない気がするが」
「なんで?」
「魔術を使えたらそれだけ魔術師が有利になるだろ?」
「確かに……」
納得するセナ。
「試しにやってみるか」
水月はそう言うと、トランス状態になって、
「――現世に示現せよ。木花開耶――」
呪文を唱える。
しかし、
「…………」
「…………」
何も起こらなかった。
「やっぱりな」
確認と同時に肯定する水月。
「木花開耶って何?」
「日本神道に名を連ねる神だ。本来なら桜吹雪を具現化する魔術なんだがな」
「発動しなかった……と?」
「そういう事だな」
「ふぅん」
納得いったのかわからない表情のセナ。
「仮に現実世界なら水月は魔術を使えるの?」
「そりゃまぁそうだな」
水月はこめかみを掻く。
「ここは基準世界とは異なる法則で動いてる。だからこそ空間か……あるいは脳に魔術を使えないようにプロテクトがかけられてるんだろ」
「ふぅん」
とセナ。
「ちょっと理解しがたいんだけど……」
「そもそもにして考えろよ」
水月は言う。
「こんなツウィンズ……ゲームの世界っていう異世界に飛ばされた現象こそ魔術と言えるんじゃないのか?」
「まぁ言われてみれば」
「現代魔術において準拠世界って呼ばれる世界だ」
「準拠世界?」
「そ」
頷く水月。




