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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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セナという少女12

「…………」


「まぁラックが無いのは構わない。別にそんなステータスを上げることに魅力を感じないからな」


 コーヒーを水月は飲む。


「しかしてスピードは違う。こんなマッシブリーマルチプレイヤーオンラインロールプレイングを具現化した世界ならスピードは重要な要素だ。なのにスピードというステータスはツウィンズには存在しない。つまりスピードはプレイヤーの能力次第ということなんじゃないか? だから俺は速度でレイたちに勝てたし圧倒出来た。剣速が……つまるところレイたちに比べてあまりに速すぎたために起こった現象だな」


 一息に言ってコーヒーを飲む。


 セナはおずおずと口を開いた。


「じゃあ水月はツウィンズの世界において規格外って事?」


「そういうことになる」


 水月はコーヒーを飲む。


 セナはメロンソーダを飲む。


「で……」


 とセナが問う。


「なんなのアレは?」


「アレってのは?」


 理解していてわからないふりをする水月。


「決闘のことよ」


「俺が勝ったろう?」


「それがすごいってのはもう言ったけど……だからスキルのレベル無制限で行われたのにもかかわらず水月がレイたちのスキルのことごとくを弾いてみせた技量について問うているのよ」


 当然の疑問だった。


 しかして水月にしてみれば愚問だ。


「別にあれくらいなら警戒に値しないしな」


 あっさりと言ってのける。


「現実世界で剣道でもしてたの?」


 剣の扱いイコール剣道と決めつけるセナが水月にとっては少しだけ……ほんの少しだけおかしかった。


 水月はコーヒーを飲み、


「けふ」


 と吐息をついた後、


「剣道ごときであんな離れ業出来るわけないだろ?」


 肩をすくめた。


 そこには皮肉があった。


 しかしてセナには通じない。


「これが真理なら通じるんだがな」


 とは水月は思っていても言わない。


「じゃあ何よ?」


 当然の質問をするセナ。


「剣術だな」


「剣術?」


「そ。剣術」


 水月はコーヒーを飲む。


「剣術を学んで……それ故にあんな反則な力を?」


「率直に言ってそうだな」


 セナの驚愕を水月は否定しない。


「ふわ~」


 と目を見開いてセナは驚いた。


「でも剣術って言っても色々ない?」


「色々あるな」


「示現流。北辰一刀流。柳生流にタイ捨流……」


「なんだ。詳しいじゃないか」


「これくらいならね」


 セナはポリポリと人差し指で頬を掻く。


「で、あんたの剣術は?」


「京八流」


「きょうはちりゅう?」


「京八流」


 繰り言をする水月だった。


「聞いたことないんだけど……」


「まぁマイナーな剣術だからな」


 特に気分を害するわけでもなく水月は言う。


「鞍馬の御大には申し訳ないが」


 と心の中で呟く。


「その京八流ってそんなにすごいの?」


「実際にすごかったろ?」


「……そうだけど」


 セナはおずおずと。


「俺の師匠なんて化け物だぞ?」


「水月より強いの?」


「そりゃもちろん」


「信じられないな」


「事実だからしょうがない」


 水月はコーヒーを飲んだ後、肩をすくめてみせた。


「もうね。何を言うでも無いね」


 そんなセナの言葉に、


「この前、椿って野郎と剣を競い合ったばかりだしな」


 水月は余計なことを言う。


「椿?」


「渡辺椿。渡辺流の猛者だ」


「わたなべのつばき……」


 オウムのように言葉を繰りかすセナ。


「ソイツ強いの?」


「剣術の腕なら俺より上だ」


「でも水月は生きてるじゃない」


「反則技を使ったからな」


 どこまでも率直に言う。


「反則技って?」


「それは秘密」


 水月は口元に伸ばした人差し指をあててウィンクする。


「じゃあその剣術……京八流だっけ? 私にも教えて!」


 決心して言うセナに、


「無理」


 水月の反応は冷たかった。


「何でよ!?」


「そんな簡単な技術じゃねえよ。それこそ一日二日で覚えられる技じゃない。お前、剣術なめてるだろ?」


「でも実際水月は覚えてるじゃない!」


「ま、それには色々あってな……」


 十万単位の年月を剣術に費やした水月だからこそ今の水月があるのだ。


「どっちにしろお前の武器はレリガーヴ……斧だろう? ならば斧を極めてみろよ。一念天に通ずって諺もあることだしな」


「でも斧は一発特化で防御には不向きなんだけど……」


「だから防御力を補うために装備が充実してるんじゃないか。実際お前と戦って勝てる人間なんてそんなにいないんじゃないか?」


「それはそうだけど……」


 躊躇うようにセナは呟く。


「ならその道を究めてみろ。俺に頼ったって得るモノはないぞ」


 そう言ってクイと水月はコーヒーカップを傾ける。


 そのままコーヒーを飲み干してカチンと受け皿にカップを戻す水月だった。

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