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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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セナという少女10

 硬直するレイ目掛けて剣を振るう。


 それは確実にレイのヒットポイントを削るのだった。


 そしてマジシャンの声が響く。


「レイ! 避けてください!」


 言われるがままレイは水月から間合いを取る。


 そして今の今まで呪文を唱えていたマジシャンが魔法を発動させる。


「五連ラフレシア!」


 そんな呪文……ボイススキップとともに五つの炎の塊が螺旋を描きながら水月へと収束する。


 一つ一つが巨大な炎弾だ。


 一発でも受ければ負け確定だろう。


 しかして水月はその上をいくのだった。


 水月は、


「…………」


 無言で抗魔剣を振るって五つの炎弾を消滅させた。


 斬撃で魔法を無効化にするアンチマジックの特性だ。


 と、言うのは簡単だが正直に言えば常軌を逸している。


 高速にして緻密な斬撃を行なわねば、五連ラフレシアを抗魔剣で防ぐことはできないからだ。


 無論の事、一般的なプレイヤーには不可能だろう。


 当然アンチマジックを持った盾を使用しても五カ所から同時に襲い掛かる炎弾の全てを無効化することはできない。


 水月の剣術と抗魔剣のコンビであるからこそ可能な芸当なのだ。


「馬鹿な……!」


 と呟いたのは誰だったか。


 ともあれ、


「……っ!」


 水月は呼気も高らかにレイへと間合いを詰める。


 レイも戦闘スキルを放って水月に応戦する。


 しかして京八流を極めた水月相手に剣の勝負は自殺行為に他ならない。


 途中途中アーチャーやマジシャンのスキルが水月に向かって発揮されたがそれらは抗魔剣によって弾かれた。


「馬鹿な! 馬鹿なぁ!」


 レイは信じられないと叫び、剣を振るう。


 しかしてその全ては水月の片手剣に弾かれる。


 アーチャーのスキルもマジシャンの魔法も抗魔剣によって弾かれる。


 見る見るうちにレイのヒットポイントは減少していき、半分に到達してコロシアムから退場した。


 残ったのはアーチャーとマジシャン。


 しかしてマジシャンは呪文を唱えるのに忙しい。


 アーチャーは地道に一本一本弓に矢をつがえて放つだけだった。


 水月には当たり前にしても知り得ない事だったが、アーチャーは高レベルスキルを連続して使ったことでマジックパワーが枯渇してスキルを発動できない状況まで追い込まれているのだった。


 故に残った矢をつがえて平凡に水月に射るくらいしかできないのだ。


 そして結界に入った矢を剣で弾くことに水月は何の感慨も覚えない。


 流れ作業のようなものだ。


 敵意があるから反撃する。


 それ以上でもそれ以下でもなかった。


 マジシャンは長ったらしい呪文を唱えて水月に雷撃や水の槍を放ったが、全て抗魔剣によって……正確には抗魔剣に付与されているアンチマジックによってキャンセルさせられ無意味に終わるのだった。


 水月が真っ先に間合いを詰めたのはマジシャン。


 呪文を唱える暇もない。


 高速の連撃によってマジシャンを屠る水月。


 多少、装備した杖によって水月の斬撃を防ごうとしたマジシャンだったが如何せん相手が悪い。


 水月はあまりにあっさりとマジシャンの抵抗を振りきってとどめを刺すのだった。


 残るはアーチャー。


 しかしてそのアーチャーも芳しくない。


 マジックパワーを使い果たして戦闘スキルを使えない。


 故に普通に弓に矢をつがえて放つことしかできない。


 そんな事情を水月は知らないが、かといってやることに変更があるわけでもない。


 アーチャーに間合いを詰めると水月は片手剣を振るう。


「……っ!」


 なんとか距離を取って矢を放とうとするアーチャーだったが、


「…………」


 水月の斬撃の前にはなす術もなかった。


 そしてアーチャーを倒す水月。


 そういうわけで一対三の状況で一の水月は三のレイたちに圧勝するのだった。


 観客は沸いたが水月にしてみれば当然のことであった。


 故に、


「やれやれ」


 と呟くだけだった。


 また浮遊感。


 ワープである。


 そして決闘を始めた商都アルメンの食事処へと戻る水月たちだった。


 待っていたのは沈黙。


「…………」


「…………」


「…………」


 レイとアーチャーとマジシャンがまるで化け物でも見るような目で水月を見ていた。


 そこにあるのは嫌悪感。


 あるいは不可解。


 どちらにせよ低レベルプレイヤーに三対一で簡単にあしらわれたことに対して負の感情を覚えなければ嘘だ。


 そしてその決闘を見届けたセナは、


「すごい!」


 と水月に抱きついた。


 テーブルに対面で座っていたから席から立ち上がりテーブルを迂回……水月の隣に座って水月の首に腕をまわす。


「すごいすごいすごい!」


 セナはお気に入りの猫を前にした女の子のように……実際女の子なのだが……すごいすごいと連呼して水月を抱きしめ頬ずりをするのだった。


 水月はというと、


「あー、はいはい」


 とセナの興奮を下流へと流す。

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