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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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セナという少女06

「ま、ゲームの世界だからね」


 ピザを咀嚼、嚥下してからセナは諦観とともに言った。


 それから、


「うざ……」


 とポツリと呟く。


 水月はムッとすると、


「ウザいならなんでグループ組んだんだよ?」


 と反論する。


 そこでセナがハッとなる。


「違う違う。あんたに言ったわけじゃないわよ……!」


 誤解をとくにしてもその表情はあまりにも必死だった。


 まるで、


「水月にだけは決して嫌われたくない」


 とでも言うかのように。


「ちょっとチャットやってて。その相手に対して言ったの」


「チャット?」


「チャットって言うのは……」


「いや、さすがにそこまで未開人じゃないぞ?」


「そうか……」


「しかし飯食いながらチャットなんて出来るのか。俺にはキーボードが見えないし操作してるようにも見えなかったが……」


「この世界のチャットは便利でね。こういう文章を投下したいと思えば、その思念が文章化されるのよ」


「へえ」


 ボンゴレをあぐりと食べて水月。


 セナはピザを嚥下してからさらに弁明する。


「ウザいって言ったのはチャット相手の事。フレンド登録した相手がいるんだけど私に執拗に構ってくる相手がいるのよ」


「まぁ……」


 と水月はボンゴレを食べながら、セナを見る。


 黒髪のショートは快活さを見せ、黄色い肌は健康的……目鼻立ち整った美少女である。


 正確には美少女と美女の間といったところか。


 そして黒いドレス……無論装飾装備である……がその美貌を引き立てていた。


 総じて高潔そうなアジア美人といった有様だ。


「お前可愛いからな。大抵の男は構うだろ」


 特に他意もなく水月は言う。


「まぁね」


 とあっさり呟いたセナは、


「…………」


 沈黙して水月の言葉を吟味し、それからボンと赤くなった。


「ななな、何言い出すのよあんた!」


 しきりに恥じらうセナに、


「おや」


 と水月は思うわけだ。


「可愛い所があるじゃないか」


 と。


「何を言い出すもなにも事実を語ったまでだが」


「ふん! ナンパな男ね!」


「実直と言って欲しいがなぁ」


「…………むぅ」


 と呻き、


「私可愛い?」


 とセナは顔を真っ赤にしたまま確認してくる。


「可愛いぞ」


 水月はどこまでも率直だ。


 遠慮がないとも言う。


「へぇ。ふぅん。そう」


 本人は平静を装っているつもりだろうが、水月にしてみればにやついてモジモジしているようにしか見えなかった。


 こりゃ惚れられたかな、と察する水月。


 こういう機微に対して水月は敏感だ。


 しかして葛城さくらという存在に慕情を割かれている水月の意識を覆せるほどの美貌では……セナはなかった。


 これ以上この議論は不毛だと察して、閑話休題する。


「そのチャットとやら、俺も参加できるか?」


「どうぞ」


 セナはセナにしか見えないコンソールを操作して水月とチャットを共有する。


 同時に水月の視界にチャットのウィンドウが開かれる。


 同時にコメントが流れる。


「なぁセナさん……早くこっち来なって」


 おそらくその「構ってくる輩」のコメントなのだろうと水月は察する。


 水月はチラリとセナを見やった。


 セナもチラリと水月を見やった。


 ちょうどよく視線が交錯する。


 それだけで水月はセナの意図を察するのだった。


「申し訳ないけどパーティ組んだから」


 そんなセナのコメントが書き込まれる。


「マジで?」


 とコメントが新たに書き込まれる。


 コメントの表記者はレイと表示されている。


 中国人かな、と水月は予想するのだった。


 レイが更にコメントを書く。


「誰とよ?」


「言ってもわからない奴よ」


 とセナがコメントを返す。


 水月はアグリとボンゴレを口に含む。


 咀嚼。


 そして嚥下。


「ちょちょちょ! 何だよソレ! 今からそっち行くから場所教えて! そのパーティっての輩に会わせて!」


「面白い奴だな」


 と水月は口に出す。


「ウザいけどね」


 とセナはうんざりする。


「俺、コメントしていいか?」


 と水月が確認を取ると、


「どうぞ」


 とセナは諦観を乗せて言う。


 どちらにしろ水月の事を説明せねば話は先に進まない。


 それが水月とセナの共有する感想だった。

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