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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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セナという少女05

 そして、


「転移石、オン。商都アルメン」


 セナはワープするアイテムを使った。


 セナと水月は商都アルメンという場所の入り口のギリギリ内側についた。


 太陽は西へ少しだけ傾いているがまだ日暮れには程遠い時間。


「へえ」


 とこれは水月。


 レンガが所狭しと詰まれていた。


 四階建てのレンガのアパートが建っていて、レンガで道が舗装され、その上を幾人もの商人が行き来をしている。


 水月は木造建築や茅葺小屋しかなかった今までの《村》とはあまりにも違う商都の街並みに賛辞を送ったのである。


 そしてセナが、


「レリガーヴ、オフ」


 と呟くと成人より頭一つ高い巨大な斧がセナの手元から光を発して消えた。


「装備もボイススキップで変更できるのか?」


「まぁね」


「前の村では装備したままだったじゃないか」


「アレは牽制のためよ。こんな……」


 と活気ある街並みに向かって手を振って、セナは言う。


「人が幾人も通り過ぎるところにレリガーヴ……あんな巨大な斧を持って歩いたら迷惑でしょ?」


「そりゃそうだ」


 納得する水月。


「その斧……レリガーヴだったか。強いのか?」


「強いわよ。洒落にならないほどね。その分コストも高いけど」


「いくら?」


「コスト40」


「…………」


 しばし思案し、


「なぁお前ってレベルいくつ?」


 根本的なことを水月は問うた。


「80よ」


 あっさりとセナ。


「廃人か」


「まぁね」


「俺が本物のプレイヤーだと知って接触してきたってことはお前もそうなんだろう?」


「まぁね」


「いつぐらいからこの世界にいるんだ?」


「もうかれこれ二年前になるわね」


「は~」


「引いた?」


「いや、よくやるよと思った」


「まぁ色々あってね」


 セナはそれだけ言って会話を打ち切ると、


「それよりお腹すいた。水月……どっかで食べない?」


「あー、任せる」


 そもそもこのツウィンズの世界において水月は素人だ。


 行動指針はセナに投げっぱなしになるのもしょうがない事ではあった。


 そういうわけで商人の掛け声がうるさい市場を横切って水月とセナは食事処へと歩を進めるのだった。


 そして食事処ののれんをくぐって入り、席につく。


 水月とセナはテーブル席に向かい合うように座る。


 店員がすっ飛んでくる。


 ニコニコ笑顔で、


「いらっしゃいませお客様。メニューをお選びください」


 と言うと、


「おお……っ」


 と水月が驚いたが、


「…………」


 セナは冷静だった。


 水月の視界には店の食事のメニューのウィンドウが開いたからだ。


 そのイメージコンソールを弄る水月。


 食事の名前とイメージと値段とがセットになって食事のメニューが羅列する。


「…………」


 セナがタクトのように人差し指を中空で振るう。


 無論視界に現れたイメージコンソールを操作しているのである。


 水月はというと悩みに悩んだ後、


「おすすめとかあるのか?」


 と店員に問う。


「どれもおすすめです」


「さいか」


 店員の言葉の拒否に簡潔に頷いて、水月はイメージコンソールを操作してボンゴレを頼んだ。


 店員が言う。


「お客様方グルですね。支払いはどうしましょう?」


「私が一括で」


 セナがそう言い、


「ありがとうございます」


 店員がセナから金を引き落とすと、


「ではごゆっくり」


 と言って去っていった。


 次の瞬間、テーブルの席の水月の前にボンゴレがいきなり現れた。


 フォークとスプーンも同時に、だ。


 見ればセナの方もマルゲリータが現れていた。


 それをピザカッターで切って口に運ぶセナ。


「驚かんのか?」


 水月の問いは正当なものだったろう。


 しかして、


「別に」


 とあっさり流される。


 セナは当然のようにアツアツのピザを口に運ぶ。


「…………」


 しぶしぶながら水月もフォークでボンゴレを巻き取って口に運ぶ。


「お、美味……」


 それが水月の率直な感想だった。


「どれもおすすめって店員が言ってたでしょ?」


 何を当たり前のことを、と言うセナに、


「しっかし調理もされずにコンソールで料理を選んだらすぐさま料理が現れるってのは有難味も何もないな……」


 ボンゴレを食べながら水月は苦笑する。

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