セナという少女02
「しっかしそうなると……」
必然的に、
「ジョージがラーラを次の商都で見かけたってのは嘘か……」
そういうことになるのだった。
「まず相手のことより自分の事を心配しなさいよ!」
怒るセナに、
「どないせーっちゅうねん」
首を傾げる水月。
それには答えず、
「水月とトレード」
とセナが大声というには足りない程度の声量で宣言する。
次の瞬間、水月の視界にウィンドウがポップする。
「?」
意味がわからず視界に現れたウィンドウを見る水月。
メニューのアイテム欄に似ているが、こっちのウィンドウは水月とセナの分が表示されている。
そしてセナの方の欄に書物のようなアイテムが色違いで三種類現れる。
合計五十三個の書物がセナの方の欄に現れた。
そして、
「はい。同意のボタンを押しなさい」
とセナが言う。
「何で?」
わからないと水月が問う。
「だからこのアイテムをあんたにあげるって言ってんのよ」
そして視界に映っているウィンドウは物品交換をするためのモノだとセナがわかっていない水月に説明する。
つまりトレードのためのウィンドウということだ。
「トレードね」
納得し、
「で、こっちから何をやればいい? そんなアイテムの総量に敵うほどのものは持っていないぞ?」
「別にいらないわよ。いいから早く同意ボタンを押しなさい」
「ただでくれるってのか?」
「そう言ってるでしょ」
「何を企んでるかを聞くのは野暮というか無駄なんだが……こっちが不信感を覚えるのは勘弁してもらいたい」
「何も企んでないわよ」
「善人も悪人もそう言うんだよ」
「それはそうね。ならあんた」
ビシッとセナは水月に指差す。
「私の弟子になりなさい!」
「弟子?」
「私がツウィンズであんたをビシバシ鍛えてあげる。だから弟子になりなさい。私の言う事には絶対服従! 代わりに私は師匠としてあんたをフォローする!」
「俺はこの世界に目的があって来ているんだが……」
「だからそれをフォローしてやるって言ってるのよ!」
「ふうん?」
意味深に吐息をつくと、
「わかったよ。信用しよう」
そう言って水月はトレードのイメージコンソールの同意ボタンを軽い力で押す。
そして水月のアイテム欄に書物の形をした不明なアイテムが五十三個補充されたことになる。
「で、この書物は何だ?」
「修練の書よ」
「修練の書?」
「クエストって言ってわかる?」
「ゲームにおけるミッションのことだろ?」
「そ」
セナは頷く。
「クエストをクリアするとほぼ百パーセント手に入れることのできるアイテム……それが修練の書よ」
「で、どう云う効果?」
「消費すれば経験値を無条件に得られるわ」
「マジ……?」
目を開く水月に、
「マジ」
コクリとセナは頷く。
水月は、
「メニュー」
と言を発してメニューを開きアイテム欄を確認。
そして修練の書を見てみる。
五千の経験値を得られるモノから一万、二万の経験値を得られるモノまで様々だ。
「俺が使っていいのか?」
「そのために渡したのよ」
何を今更とセナ。
「えーっと……じゃあ……」
と呟いて、イメージコンソールのアイテム欄を弄ろうとした水月に、
「何してるの?」
セナが問う。
「何って修練の書を消費しようかと……」
「いちいちコンソールで操作するなんて面倒でしょ。ボイススキップを使いなさいよ」
「ジョージにも言われたがボイススキップって何だ?」
「そんなことも知らないの!?」
「知っとかなきゃいけない事なのか?」
「当たり前でしょ! あんたどんな戦闘してきたのよ!」
「普通に戦ってたが?」
「戦闘スキルはどういう風に使ってたのかって聞いてるのよ!」
「スキルにポイント割り振ってねえし」
「ほんと馬鹿……ありえない……」
うんざりと顔に手を当てるセナだった。
「で、ボイススキップって何よ?」
「文字通り声で過程を省略するシステムのことよ」
「声で過程を?」
「そうよ」
セナは淡々と言う。
「例えば戦闘スキル……必殺技を戦闘中にあんたが使うとするでしょ?」
「ふむ」
「あんた、いちいちメニューを開いてスキルの欄を覗いて取捨選択して必殺技を発動させるつもりなの?」
「まぁそんな余裕はないなぁ……」
当たり前だが。
「それを解消するのがボイススキップよ。声で必殺技を叫ぶとメニューを開かなくても名前を出した必殺技が声に反応して現れる」
「ああ、なるほど。ジョージが必殺技の名前を叫んだのは中二病じゃなくてボイススキップで過程を省略して発動させるためだったんだな。セナのパワーインパクトも」
「そういうこと。そしてこれはスキルに限った話じゃない。さっき私がメニューコンソールを操作せずにトレードのウィンドウを開いたのもボイススキップの効果よ。私が声を発すると同時にウィンドウが現れたでしょ?」
「確かに」
水月は納得と感心とをする。
「当然アイテムもボイススキップは適応できるわ。例えば戦闘中に薬草を使ってヒットポイントを回復したかったら声に出せば効果を発揮する」
「つまり修練の書も同じことが言えると?」
「そういうことね」
セナは頷いた後、
「なんでこんな基礎以前の前提の事を長々と話してるんだろう私……」
うんざりと言った。
「いや、勉強になったぞ?」
フォローというにはフォローになっていない言葉を紡ぐ水月。




