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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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セナという少女01

 ジョージを粉砕して地面に巨大な斧をめり込ませた黒髪ショートの美少女……おそらく日本人……が水月をギロリと睨みつける。


「なんだ? お前も俺を殺そうとするのか?」


 水月がそういうと、


「あんた馬鹿!?」


 と躊躇いなく否定する美少女だった。


 重そうな巨大な斧を軽々と振り回し、肩にかけると、


「なんで初心者だなんて普通に言っちゃってるのよ! 死にたいの!?」


 そんな水月にとっては意味不明な理論で迫ってくる。


「初心者って言っちゃまずいのか?」


「あったりまえでしょ!」


 憤懣やるかたないと美少女。


「あー……」


 と呟いた後、


「とりあえず助けてもらってありがとう。俺は水月。お前は?」


「セナよ!」


 次の瞬間……美少女セナの頭上に黄色のポインタとセナという名前とが現れた。


「そうか。セナか。プレイヤー殺したのに赤色にならないんだな」


「行為に正当性があれば罰則点数は軽減されるのよ!」


「で? なんで初心者バレはまずいんだ?」


「リターンスフィアを狙われるからに決まってるでしょ!」


「リターンスフィア……」


 数秒ポカンとした後、


「おお」


 と水月は手を打つ。


「現実世界に帰るためのアイテムか!」


「そうよ!」


「それと殺されることがどうやって繋がる?」


「この世界はモンスターとかプレイヤーとかの区別はないのよ。非戦闘区域では何者も戦闘できないけど戦闘区域では誰とでも戦闘できる。試しにどっかの宿屋の店主と仲を深めて村の外に連れ出してみなさい。殺せるから」


「へ~」


 76へぇ。


「で、モンスターもプレイヤーも区別がつかないから、モンスターを倒すようにプレイヤーを倒せば相応の経験値とお金、それから持っているアイテムを手に入れられるのよ」


「つまり俺を殺せばリターンスフィアを手に入れられると?」


「そういうことよ」


「そんなにジョージは現実世界に帰りたかったのか?」


「違うわよ。リターンスフィアは珍しいから高く売れるのよ」


「相場は?」


「十億ケトル」


「ぶっ」


 水月が噴き出したのもしょうがないことだったろう。


 あまりに不条理な相場だったためだ。


「ああもう本当にあんたって信じらんない!」


 呆れと怒りを五分五分に混ぜ合わせてセナは言う。


「お前は?」


 と水月は問う。


「お前は俺のリターンスフィアを狙わないのか?」


「狙ってはいたけど当てが外れたわよ。まさかこうなるなんて……。それにリターンスフィアなら私……既に五つ持ってるから」


「そりゃすげえな」


 本心から感心する水月。


「あー、もう本当にありえない!」


 どこまでもうんざりとするセナだった。


 そしてツイーッとセナは指を振るう。


 イメージコンソールを操作しているのだろう。


 そしてセナが複雑に指を動かすと、水月の視界にウィンドウがポップした。


 それはセナのグループに参入するか否かのウィンドウだった。


 ウィンドウのイエスのボタンを押す水月。


 すると緑色のポインタとセナという名前の情報の下にセナのヒットポイントが表示されるのだった。


 水月がセナのグループに入った証である。


 当然セナの視界にも水月のヒットポイントが現れる。


「こうやってグル組めばお互いに不可侵が契約できるのよ」


「グル?」


「グループの略。グループのメンバーをグルメンっていうの」


「…………」


「グループになればそれでグルメンの攻撃は判定がつかなくなるから安心して背中を預けられるのよ」


「なるほどね」


「あんたメニューのルール読んでないでしょ?」


「まぁゲームで説明書読むのはだるいって人間だから」


 水月は肩をすくめる。


「命かかってんのよ! もうちょっと警戒しなさいよ!」


「まぁ死なない努力はするつもりだが」


「それが足りないって言ってるの!」


 地団太を踏むセナであった。


「しかし助けてくれるならくれるでもっと早い段階でジョージを排してもよかったんじゃないか?」


「本当はあんたを殺してリターンスフィアを手に入れてレッドプレイヤーになったジョージからリターンスフィアを奪い取るつもりだったのよ!」


「なるほど」


 と納得し、


「ならなんで助けた?」


 さらに問う水月。


「それは……」


「それは?」


「どうでもいいでしょ!」


 ふん、と鼻息も荒く拗ねるセナ。


 美少女が拗ねるというのはそれだけで趣がある。


 少なくとも水月にとっては。


「じゃあグルメンになったことだしお前を信頼してもいいのか?」


「ま……ね……」


 不本意だとばかり言いよどむセナ。


「そっか。ありがと」


 ニッコリと水月が微笑むと、


「……っ!」


 セナは顔を真っ赤にして、


「ふん! これだから初心者は……」


 そう悪態をつくのだった。

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