ゲームの世界へ14
次の日の朝。
水月はジョージに叩き起こされてしぶしぶながら目を覚ます。
結界の中には既に巨大斧の美少女を捉えているが敵対行動を起こす様子もないから放っておいている。
ともあれ欠伸混じり起きた水月の鼻孔を上トカゲ肉の焼ける匂いがくすぐった。
「もうすぐ焼けるよ」
とジョージが言う。
どうやら朝食の準備をしていたらしい。
水月にとってはありがた迷惑な行為である。
かといって二度寝はさせてもらえず、焼けた上トカゲ肉を食べて意識を覚醒させる水月だった。
そして装備品……まだ水月はコスト零の装備だが……をポップして旅を始める水月とジョージ。
行く道を阻むモンスターは相変わらずゴブリンだ。
道ごとに現れるモンスターが違うと水月はジョージに聞いていた。
そういえば最初の道もさるぼぼ人形ばかり現れたな、と納得する水月。
ともあれ天頂に太陽が昇る頃には村から商都への道の半分を制覇する水月とジョージであった。
「そろそろ昼食にするか」
そういう水月に、
「とりあえず今ポップしているゴブリンを倒してからね」
ジョージが当然のことを言う。
水月はゴブリン目掛けて疾駆した。
ゴブリンに斬りかかる寸前に結界にて敵対行動を察して水月は急激に身を低くした。
伏せたと言ってもいい。
その水月の頭上をジョージの片手剣が薙いでいた。
「っ?」
いきなりな凶行に対して納得できかねるモノを覚えてジョージから距離を取ろうとする水月。
ジョージは伏せた水月目掛けて剣を振り下ろす。
それを水平に跳ねるという荒業で避ける。
「ふむ?」
ジョージは不思議そうに水月を見る。
「不意をついたはずなんだけどな……」
そこに殺意はなく、ただ疑問点を確認する不可解だけがあった。
そんなジョージの言に、
「おいおい」
と水月はうんざりする。
「なんで俺を殺そうとする?」
「秘密」
ジョージはそっけなかった。
「なんでここまで黙っていた? 俺を殺すつもりなら村を出た瞬間でいいだろう?」
「……っ!」
ジョージは水月へと間合いを潰し剣を振るう。
おそらく低レベルの水月にしてみれば一撃一撃が必殺の剣である。
しかして水月はその全てを剣で弾き返す。
剣の応酬の最中にジョージは言う。
「君がもしテントを張って非戦闘区域を創りだされたら厄介でね」
「それとここで襲う理由が結びつかないが……」
丁々発止を鳴らせながら水月とジョージは言葉を重ねる。
「裏技っていうのがこのゲームにもあってね。テントを張って一キロメートル離れた地点でまたテントを張る。それを繰りかえせば非戦闘区域を維持したまま道を進むことが出来る。つまりある意味で無敵になれるんだ。けど水月……君のテントの保有量から逆算して裏技を使っても、ここからの村や商都への道の距離には及ばない」
「つまり俺ははめられたってわけだ」
「そういうこと」
そう言ってジョージは、
「スターラッシュ!」
と叫ぶ。
同時にジョージの片手剣が高速かつ連続で斬撃を放つ。
その全てを受け止める水月。
さらにジョージは叫ぶ。
「ライトスピア!」
次の瞬間、ジョージの剣が光り輝くと高速かつ連続で突きが放たれる。
一つでも当たれば即死の攻撃をしかして難なくいなす水月。
「お前……この程度の連撃に技名とかつけてんのか? 中二病か?」
「ボイススキップも知らないとは……本当に初心者だね水月は……。ライトニングストライク!」
大上段からの雷のような剣を振るうジョージに切り上げの剣で受け止める水月。
そして隙をついて水月はジョージに斬撃を振るう。
しかして、
「く……くはは……っ!」
ジョージは笑った。
それもそうだろう。
水月の攻撃はジョージにとっては無視できるほどのダメージ量なのだから。
「君じゃ僕は倒せないよ!」
「そうかい」
水月は冷静だ。
「ライトスピア!」
また光の連撃刺突を繰り出すジョージの剣をいなしながら、
「どうしたもんかね本当に……」
うんざりとする水月だった。
攻撃は役に立たない。
相手の攻撃も難なくいなせる。
総じて硬直状態である。
「なんでそんなにカウンターが発動する……! 君、本当にレベル7?」
「間違いないぞ」
あっさりと頷く水月。
そんな水月の結界の中で動きがあった。
ジョージではない。
巨大斧を持って昨日から水月とジョージを尾行していた少女のものである。
そして水月にかまけているジョージ目掛けて、
「パワーインパクト!」
と技名を叫んで巨大な斧を振りおろす少女。
黒いショートの髪が衝撃波にさらされ揺れる。
黒髪ショートの美少女がジョージを一撃で葬り去るのだった。
ヒットポイントを全損させて太陽にさらされた朝霧となって消えるジョージ。
ジョージとて生半なプレイヤーではない。
それを一撃で粉砕したのだ。
黒髪ショートの美少女がどれほどの戦力か想像するのも馬鹿らしいというものだった。




