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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ゲームの世界へ13

 襲いくるゴブリンを水月は一刀のもとに切り裂く。


 とは言ってもヒットポイント制。


 正中線をなぞる様に一刀両断してもゴブリンの体が切り裂かれるわけではない。


 ただヒットポイントが減るだけだ。


 そしてそれに水月が違和感を覚えるのはしょうがない事だった。


 水月が今まで生きていた世界では、一刀でも先に入れた方がはるかに有利になり、一瞬の油断が死につながる。


 頭、首、胸、手首、切り裂かれて致命的になる場所が人体には多すぎる。


 しかしこの世界ではどこを攻撃しようと互いの攻撃力と防御力の差が意味を為し、ヒットポイントが零になるまで五体満足の状態が続く。


 一応のところ首や心臓を狙えばクリティカルヒットの出現確率が上がるのだがそれは水月の知らぬところだった。


 知ったところで水月の戦略が変わるわけでも……また無かったが。


 そんなこんなでゴブリンを退治しながら水月とジョージは隣の……ジョージが言うには……比較的大きめの商都へと向かうのだった。


 とはいえ一日でその道を制覇できず、少なくとも二回のテントの使用が必要だとのことだった。


 水月は道具屋でテントを補充しようとしたが、


「大丈夫。僕がいっぱいテント持っているから」


 そんなジョージの言葉に安心して甘えることにしたのだった。


 ともあれ水月はジョージを背後において、低レベルモンスターのゴブリンを次々と見事な剣さばきで屠っていく。


 あっという間にレベル7になる水月だった。


 感心するジョージ。


「最初は釣りかと思ったけど本当に初心者みたいだね。それにしては……」


「それにしては?」


「剣の振り方に迷いが無いね」


「変か?」


「まぁ変といえば変だよ」


 ジョージは言う。


「普通この世界に来た初心者はモンスターを相手取ると恐怖に囚われて怯えてまともに剣を振るのも躊躇うほどだから」


「ま、人生経験豊富だから」


 水月は肩をすくめる。


 それでもだよ、とジョージは言いかえす。


「もしかしてサムライって奴?」


「ちょっと違うが……まぁ全部違うってわけでもねーな」


「もしかしてリアルジャパンソードとか振ってたり?」


「そういう時期もあったがな」


 剣を持つより無手の方が強い水月にしてみれば複雑な気分であった。


「ところで」


 と今度は水月が先に口にする。


「さっき言ってた釣りって何だ?」


 そういえば最初の村の道具屋の店主も言ってたな、と思い出す水月。


「要するに高レベルプレイヤーがビギナーのふりをして状況を楽しんだり、あるいは油断した相手を殺したりするプレイのこと」


「ん?」


 と水月は首を傾げる。


「つまりステータス頼りで装備を初級に戻すってことか?」


 そんな頓珍漢な水月の言に、


「あはは」


 とジョージは笑うと、


「違う違う。初心者装備に見せかけた装飾装備を身につけるんだよ」


 教示する。


「装飾装備?」


 再度首を傾げる水月。


「装飾装備って言うのは要するにステータスに関与しないで外見だけを上書きする装備品のこと」


「それがいまいちわからんのだが……」


「例えばここに高レベルの美少女プレイヤーがいるとするよね?」


「ふむ」


「美少女プレイヤーは美少女だからあまり無骨な装備はしたくない。可愛いファッションで着飾りたい。でも高レベルの装備品はゴテゴテした鎧が多い。そんなものを着れば自身の可愛さが半減する」


「ふむふむ」


「そこで登場するのが装飾装備ってわけ。例えば白いワンピースの装飾装備を持っているとする。そして高コストの無骨な鎧の上から白いワンピースを着ると、外見上は白いワンピースは着たままで高コストの鎧と同じ防御力が得られるってわけ」


「は~」


 なるほど、と水月は納得する。


「だから派手な装飾品で自身を飾っているプレイヤーは中級から上級プレイヤーと見て間違いないよ」


「ジョージは違うんだな」


「うん……まぁ……僕は機能重視だから外見にはあまり興味無いんだ。速度が身体能力の一環でスピードというステータスが無いこの世界では鎧も服のように軽い。だからどうでもいいって言うのが本音」


「違いない」


 水月は苦笑した。


 そして水月はゴブリンを屠りながら一切のダメージを受けないでジョージを驚愕させながら道を進む。


 日が暮れるまで歩いてその日は道半ばでテントを張ることになった。


「さるぼぼ肉とゴブリン肉……どっちが美味しいと思う?」


 そう真剣に聞く水月に、


「あはは。今日は僕の上トカゲ肉をあげるよ」


 そう言ってジョージが肉を提供する。


 上トカゲ肉……レアリザードマンの肉を焼いて食べる水月とジョージだった。


 それが終わった後、森の奥深くに入って……つまり道端でレッドプレイヤーに見つからないようにするため……テントを広げるジョージ。


「何から何まですまんな」


 水月が恐縮する。


「ま、気にしないことだね」


 ジョージがにこやかに答える。


 水月は巨大な両手斧を持った美少女プレイヤーがつけていることを気にかけながら眠りにつくのだった。


 当然心眼の奥義である結界を張って……ではあるが。

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