ゲームの世界へ12
着いた村は最初の村よりは大きかったが、それでも町というには繁栄が足りていない村だった。
水月の今のレベルは5である。
水月がメニューを開いてからルールを確認するにあたってレベルと装備の関係性が見えているのだった。
要するにレベルとはステータスポイントを持ちうるだけじゃなく、装備にも関係しているとのことだった。
水月のレベルが5ということは装備コストが5まで許容できるということである。
例えばコスト3の剣にコスト2の鎧を装備する。
あるいはコスト2の剣にコスト2の鎧にコスト1の盾を装備する。
あるいは攻撃力を無視してコスト5の鎧を装備する。
そういった風に全装備のコストを合計して装備できる塩梅がレベルで決まるのだった。
しかして水月はこの世界に遊びに来たわけではない。
問題はこの世界がどんなアークテストか。
それを見極めるために来たのだ。
あとラーラ=ヴェルミチェッリの探索。
村としては最初の村より広い村には酒場があった。
最初の村には無かった店だ。
「ま、RPGでは鉄則だよな」
つまり情報収集は酒場の基本という事である。
水月は酒場へと寄った。
そして酒場の扉を開けるとカランカランとベルが鳴った。
「いらっしゃいませー」
と酒場のマスターが声をかける。
「どうも」
と水月も返す。
そして酒場を見渡すと二人の人間がいた。
一人は黒いショートヘアの美少女。
一人は金色の髪を持つ青年。
美少女は漆黒のドレスを纏い、大木すら一撃で斬り倒せそうなほど凶悪なシルエットを持った琥珀色の巨大な両手斧を傍に立てかけていた。
全長が二メートルを超えるという人外武具である。
高コスト装備なのだろう。
一目でそうわかる斧だった。
それは同時に斧を持ったミルクを飲んでいる少女が高レベルプレイヤーであることを示している。
対して青年は銀色の鎧に漆黒の鞘に収まった片手剣を装備していた。
どっちがこのザ・ワールド・イズ・マイ・ソングに浸透しているか……あるいは小慣れているか。
一目瞭然だった。
故に水月は黒い短髪の美少女の方に声をかけた。
「あー、ちょっといい?」
水月が美少女にそう話しかけると、
「ナンパに興味無いの。消えてくれる?」
美少女は辛辣にコンタクトを拒否した。
「あぁ、そう」
水月はへこたれることもなくあっさりと身を引き、それから金髪の青年の方に歩み寄るのだった。
「すまん」
と金髪の青年に声をかけると、
「何だい?」
と青年は答える。
斧の美少女とは正反対の……好意的な印象だった。
「あの……俺……このゲームの初心者なんだが……」
そんな水月の独白に、美少女がピクリと震える。
当然水月は気付いたが無視。
青年は興味深げな要素を瞳に含みながら、
「……初心者ね」
と呟いた。
その呟きの真意を読み取れなかった水月は言葉を紡ぐ。
「ラーラって女の子を探してるんだ。知らない? 茶髪のボブカットのそこそこの美少女なんだが……」
直球ど真ん中を聞く。
「ああ、ラーラね……」
うんうん、と青年は頷く。
「知ってるのか?」
問う水月に、
「まぁね」
青年は肯定した。
「この村から歩いて三日のところにある街で見かけたよ。なんならそこまで送ろうか?」
「いいのか?」
「いいさ。初心者って言うならレベル上げも必要だろう? 歩いて隣の街まで行こうよ。僕がフォローするからさ」
「それはありがたい」
水月は納得する。
「いやぁ、これでラーラについては問題ないな」
うんうんと首肯した。
「他に用があるの?」
青年がそう言う。
「まぁ色々と」
簡潔にはぐらかして、
「俺の名は水月。よろしく」
水月は名乗り情報の一部を青年に渡す。
青年も名乗る。
「僕の名はジョージ。よろしく水月」
青年改めジョージは水月に硬く握手をしてきた。
同時に水月の視界に映っているジョージの頭上に緑色のポインタが現れ、その隣にジョージと文字が羅列した。
そして水月とジョージは酒場を出て次の街へと歩を進めるのだった。
そんな二人を後追う形で琥珀の斧の美少女が付きまとうのを水月だけが知っていた。




