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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ゲームの世界へ05

 セントラルタワーを出てケイオスのバイクで宿舎に戻ると、水月は言い渡された願望(無論皮肉である)に応えることを真理に伝えた。


「え? では異世界に行くのですか?」


 確認のためだろう言葉にする真理に、


「それもゲームの世界にな」


 水月は淡白に返した。


「準拠世界って危なくないですか?」


「危険だから俺が選ばれたんだろ?」


「私もいきましょうか? 私、不死身ですし」


「オルフィレウスエンジンとザ・ワールド・イズ・マイ・ソングのルールと……どっちが優先されるかわからん以上お前は連れていけないよ」


 やんわりと水月は否定する。


 それは当人にしてみれば思ったことを口にしただけだが真理とケイオスはそれを優しさと受け取るのだった。


「ああ、準拠世界……というか異世界に出かける前に真理の紅茶が飲みたいな。淹れてくれるか真理?」


「わかりました」


 パッと華やいだ笑顔を見せて真理はキッチンへと向かった。


 ケイオスが言う。


「お前も大概女殺しだな」


「そんなつもりはないがなぁ」


 ぼんやりと水月。


「そもそも何ゆえデスゲームの準拠世界に行かねばならない?」


「まぁゲームなんだからルールを守って安全に行動すれば他の準拠世界よりは安全だと思うぞ? 実際ラーラの死体はまだ確認されていない」


「しかしだな」


「異世界……いわゆる俺たちのいる基準世界の概念と願望とを翻訳した準拠世界は神秘的かつ冒険心に溢れている。ま、神隠しの一例だけどな。ともあれゴブリンやらドラゴンやらに襲われないだけマシなんじゃないか?」


「いるかもしれんだろう?」


「さすがにゲーム初心者の村をドラゴンが襲うことはないだろ」


「だといいがな」


 ケイオスの表情を題するのなら「苦汁」というのが適切だった。


「そうです水月」


 これは紅茶を淹れた真理の言葉。


「何だ?」


「水月がいない間私はどうすればいいのでしょう?」


「ケイオスが何とかしてくれるさ」


「ではローレンツ先生の宿舎に囲われればいいと?」


「ついでにケイオスに良いように使われてみろ。体のリミッターを気にしなくていいお前は訓練の好材料になるだろ」


 クイとティーカップを傾けながら水月は言う。


「ローレンツ先生を疑うわけではありませんが抑止力足りえるんですか?」


「大丈夫」


 水月はキッパリと言った。


「お前、ザコだから」


「…………」


 さすがに沈黙する真理であった。


「ケイオスでも十分対処は可能だ」


「それはローレンツ先生を持ち上げてるんですか? それとも水月を持ち上げてるんですか?」


「越えられない壁を間に挟んで強い順に俺、ケイオス、真理ってところだな」


「私だって戦えます!」


「それは知ってる。一般人なら相手にならんだろう。何せ不死身だしな。要するにお前との戦いは決戦力を持っているかどうかで決まる。そしてケイオスはそれを持っている。それで充分だろ?」


「むぅ」


 不満そうにしてティーカップを傾ける真理。


 そして水月は紅茶を飲み終えると宿舎のテレビにプレイキューブを繋げて、ザ・ワールド・イズ・マイ・ソングをセットする。


「本当に行くんですね……」


 どこまでも不満そうに真理。


「私としても容認しがたいが」


 ケイオスも続く。


「かといってラーラを放置するわけにもいかんしな」


 正論で反論を封じる。


 そして自己嫌悪を覚える水月だった。


「ともあれ」


 と断言する。


「ラーラを探すついでにゲームの世界って奴を堪能してくる」


「死んじゃ駄目ですよ?」


 心配そうな真理の言葉に、


「死ぬ気はねーよ」


 肩をすくめる水月。


 真理の瞳は憂いに満ちていた。


 それが水月には嬉しい。


 ポムと真理の頭を撫でる水月。


「ラーラと一緒に帰ってくるからそれまで我慢してくれ」


 囁くようにそう言うと、


「……はい」


 少しだけくすぐったそうに真理は笑った。


 それから水月はプレイキューブの電源を起動すると……その意識は暗黒に落ちていった。

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