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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ゲームの世界へ04

「しかし……」


 水月は「わからない」と呟く。


「その程度のことを何で俺がやらにゃならんの?」


 ある意味で真摯な疑問に、


「そのゲームがデスゲームだからです」


 そんな答え。


 デスゲーム。


 それは実際に死を伴うゲームの総称だ。


 西部劇の果し合いやロシアンルーレットに代表される命を代価にしたある種の究極的な娯楽を指す。


「自己観測者である役先生でなければ手におえないというのが我々の共通かつ一致した見解です」


 シンメトリカルツイントライアングルはそう言う。


 他の中枢も真摯な目を水月に向けていた。


「まぁそれは信じよう」


 水月は軽く肯定する。


「で……なんでデスゲームだとわかる?」


「証人がいます」


「証人?」


「はい」


「誰か既にゲームを体験してるってのは自然な成り行き……わかっているが証人ってのは興味深いな」


「ザ・ワールド・イズ・マイ・ソングをプレイしていた人間から我々も状況を教えてもらったのです」


「というと?」


「ザ・ワールド・イズ・マイ・ソングをプレイするとゲーム世界に取り込まれる。そのゲームの世界ではプレイヤーがプレイヤーを殺すことができる。そして殺されたプレイヤーは起動したプレイキューブの傍で死体として発見される」


「文字通りデスゲーム……か」


「然りです」


 シンメトリカルツイントライアングルは深刻に頷いた。


「それで俺にどうしろと?」


「我々……中枢はこれをアークテストと認識しました」


「っ」


 さすがに絶句する水月。


 それを無視してシンメトリカルツイントライアングルは言葉を続ける。


「つまりゲームであるが故にプレイヤーの死亡のリスクと引き換えに得るものがあるだろうという結論です」


「で、それを俺に確かめろと」


「話が早くて助かります」


「まだ請け負うとは言ってないがな」


「コンスタン研究室のラーラ=ヴェルミチェッリがザ・ワールド・イズ・マイ・ソングに囚われています」


 さすがにその言葉には、


「……は?」


 水月とて呆けざるをえなかった。


「ヴェルミチェッリ……スミス……ベレッタ。役先生の学園の女子三人がそのザ・ワールド・イズ・マイ・ソングに取り込まれて……ヴェルミチェッリだけがゲームの世界から帰ってきていません」


「…………」


 しばし沈黙した後、


「道理で今日はラーラがいないわけだ」


 納得したように水月。


「ということは他の二人は……」


「はい」


 頷くシンメトリカルツイントライアングル。


「基準世界に帰ってきていますよ。一人は無事健全なままで……そしてもう一人は死体として……」


「ヴェルミチェッリは?」


「それが不思議なのですが……」


 シンメトリカルツイントライアングルは眉間のしわを深くする。


「三人がゲームに取り込まれたのは同時なのですが、スミスとベレッタは同じ位置からのスタートに対しヴェルミチェッリはそこにはいなかったそうです」


「つまり目下行方不明と」


「そういうことになります」


「それなら生き残った奴に探索をさせればいいだろ」


「それは叶いません」


「何故だ?」


「ザ・ワールド・イズ・マイ・ソングには《リターンスフィア》と呼ばれるアイテムが存在するそうです」


「リターンスフィア……」


「現実世界に帰るために必要なアイテムのことですね」


「ほう」


「そのアイテムは消費するタイプのもので一回目のザ・ワールド・イズ・マイ・ソングからの帰還は出来ますが二度目は出来ないのです」


 それだけで、


「あー」


 水月は察した。


「つまり二回目以降のプレイはリターンスフィアを消費した状態で始まるから現実世界に帰る手段が無いと?」


「そういうことです」


「話を戻すか」


 水月は閑話休題した。


「それで俺にどうしろと?」


「先にも言いましたが中枢はこれをアークテストと認めました」


 シンメトリカルツイントライアングルは淡々と言う。


「役先生にはザ・ワールド・イズ・マイ・ソングを攻略してもらうと同時にヴェルミチェッリの探索をお願いしたい」


「後半は本気で言ってないだろ」


「それはそうです」


 あっさりと言われる。


「ヴェルミチェッリの探索など実のところ二の次です。私どもが望むのはこのアークコネクタが如何様な理由で存在するのかを役先生に突きとめてもらいたいということです。無論報酬は相応払います」


「ヴェルミチェッリは俺が食いつくための餌か」


「どのように捉えられても構いません」


「まぁほっとくわけにもいかんしな」


 やれやれと水月は溜め息をつく。


「プレイキューブ……準備できてるか?」


 そんな水月の言葉に、


「まさかやるつもりか役君?」


 ケイオスが信じられないと言葉を発す。


「他に選択肢は無いだろう?」


 何を今更と水月。


「そもそもそのために自己観測者たる俺を呼んだんだろうしな」


 水月はシンメトリカルツイントライアングルを見やる。


「その通りです。役先生……」


 罪悪感もなく頷かれる。


「というわけで準拠世界に行ってくるわ。まぁ初めての体験じゃないし得られるモノの壮大さを予想できるのならこれ以上はないしな」


「役君がそう言うのなら私に止める術は無いが……」


 ケイオスは不満そうだ。


 水月は言った。


「プレイキューブは俺の宿舎で起動させる。真理にも説明しとかないといけないしな。それくらいは意を汲んでくれるだろう?」


「無論です」


 シンメトリカルツイントライアングルは首肯する。

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