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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ゲームの世界へ02

 水月とケイオスは真理を宿舎に帰し留守番するように言って、それからケイオスのバイクに乗ってイクスカレッジの中心……セントラルタワーへと赴いた。


 五つあるタワーの中央……エーテル棟に入ると受付の女性が七十三階で会議の予定があると案内してくれた。


 水月とケイオスはエレベータの前まで歩き、水月がボタンを押す。


 一階に待機していたエレベータの扉が速やかに開かれる。


「なんだかなぁ」


「何がだ役君?」


「こんな超高層ビルをエレベータで昇るってのもな」


「なら他にどんな方法がある?」


「千引之岩を使うとか縮地を使うとか?」


「ただの反則だろう」


「…………」


 精神の中でだけ肯定して水月はエレベータの階数が上がっていくのを目で追っていくのだった。


 ポツリとケイオスが尋ねる。


「なぁ役君」


「何だ?」


「お前は美男子に区分されるだろう?」


「否定はしねーよ。ま、日本のオカルトの常識だ」


「どういう意味だ?」


「日本のオカルト……怪談ってのは不思議なもんでな。その逸話に出てくる存在は極端に美貌の持ち主か極端に醜悪の持ち主なんだ。だから魔術の家系には極端な美貌か醜悪の持ち主しか生まれない」


「ほう」


「実際俺もさくらも相当なものだろう」


「然りだな。それでだ……」


「それで?」


「貴様さえ望めば役研究室を作って美少女を選別……生徒として迎え入れてハーレムを作ることもできるだろう? なにせ極端な美貌の持ち主にして、イクスカレッジでも正統派の魔術師だ。違うか?」


「否定はしねーよ」


「そうしないのか?」


「興味無いね」


「女にか?」


「俗世にだ」


「しかしラーラや真理はお前のことを好きでいるぞ? その辺はいったいどういう風に捉えている?」


「人の精神に評価をつけるほど落ちぶれちゃいねーよ。俺を好きなら好きで、慕っているなら慕っているで、それは当人の問題だろう」


「応える気はないと?」


「俺は九李じゃないから先のことはわからんよ。いつかラーラか真理か……あるいは他の誰かを真剣に慕うだろうさ。それが何時になるかを保証できないって言ってるんだよ……要するに」


「誠実だな」


「面倒なだけだ」


「しかし実直だ」


「遠慮は持っていないからな」


 くつくつと水月は笑う。


 それは皮肉めいていた。


「じゃあ仮に聞くが私でも駄目か?」


 これは深刻な意味があって言ったことではない。


 ケイオスは当然……水月もそれはわかっていた。


「胸を揉んでみたいとは思う」


 それが素直な水月の感想だった。


「つまり劣情か」


「お前だって美少女だろう。色欲は生命の汎用性を追求するための利便に富んだ本能だ。否定しても始まるまいよ」


「ふむ」


「実際真理なんかは抱きたくなる時があったりするしな。無論一人で完結して収めているが……」


「真理に言えば拒否などすまい?」


「ではあろうよ」


 そして水月は嘆息する。


「ただ都合のいい女なんて位置にアイツを置くわけにはいかんだろ」


「やはり誠実だな」


「面倒が嫌いなだけって言っとろーが」


「ともあれ私も劣情の対象に入っているのか。それだけに関して言えば興味深いことを聞いたな」


「何でだ?」


「考えてもみろ。私と云う新古典魔術師と役君と云う古典魔術師……二つの要素が混じった魔術師が生まれるのだぞ? 古典魔術師にひけをとらない精度を持つ新古典魔術師を作れるかもしれない」


「俺は勘弁だな」


 うんざりとする水月。


「俺の血を受け継ぐってことはこの脳の欠陥を受け継がせることだ。常能と異能のスイッチの効かないガキなんて見たくないぜ」


「それでこそ魔術師としての幸福は約束されたようなものだろう?」


「毎度言ってるだろうが」


 水月はイクスカレッジにおける禁忌をいともたやすく口にする。


「魔術を使えてだから何? とな……」


「だからこそだろう」


「あー、この話はやめよう。不毛だ」


「ふむ、そうだな。私としてもラーラや真理を相手取って抜け駆けするつもりはあり得ない選択肢だろうしな」


「…………」


「そういえば今日は研究室にラーラは来ていなかったな」


「サボリだろ」


 あっさりと水月。


 水月とラーラは魔術の講義をサボる常習犯である。


 ただしラーラの場合は水月がサボるのに呼応してサボっているので水月が研究室に顔を出しているのにラーラがいないというのは不自然なことではあった。


 要するにラーラは水月に惚れているのだ。


 故に付きまとう。


 それを袖にしているのが水月なのだが。


「なんなら此度の会議が終わった後にラーラの寮室に顔を出すぜ」


「ほう。そんな気配りが水月の口から聞けるとはな」


「お前、俺を何だと思ってる?」


「古典魔術師」


「あいあい。そーですよ」


 それ以上は会話も馬鹿らしいと水月は口を閉じた。

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