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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
63/545

ゲームの世界へ01

 ブツン。


 カヒューン。


「…………」


 役水月は沈黙した。


 ブツンからカヒューンの連続音は強制的にパソコンの落ちる音だ。


 水月の操っていたパソコンが強制的にシャットダウンされたのである。


 真っ黒になった画面に自身の顔を見ながら、


「…………」


 しばし水月は放心する。


 それから事態を悟るとふつふつと沸き起こる激情に身を任せてパソコンを強制終了させた相手に迫った。


「てめ! なんてことしてくれんだ! この人殺し!」


「何故パソコンの電源を落としたくらいで人殺し呼ばわりされにゃならん?」


「ようやっとリリーたんとニャンニャンできようかって瞬間に電源を落とすなんてリリーたん殺害の罪で禁固百年だこの野郎!」


「そもそも研究室でエロゲーするのが間違っているぞ」


 水月に言い迫られた金髪の美少女……ケイオス=ローレンツは正論を述べ立てるのだった。


 ケイオスはストパンと呼ばれる魔術師兼警察だが、時折超権限を用いて面倒事を運んでくる厄介者でもあった。


「研究室でエロゲーをするなって法律でもあんのか!」


「そりゃ無いが昼間っから公共の場でエロゲーをする魔術師がいるかっ」


「いるじゃないか」


 エヘンと威張る水月に、


「胸を張るな……」


 溜め息をつくケイオスだった。


「第一何ゆえエロゲー? お前が誘えばそこにいる……」


 とコンスタン研究室の一ヵ所をケイオスは指差す。


「真理は無条件で寝てくれるだろう?」


「水月が欲求不満なら私や……ここには居ませんがラーラが相手しますよ? なんなら両方同時になどどうでしょう?」


 只野真理はケイオスの言葉に乗じてそう言うのだった。


 真理は茶色に染めた髪をリボンでくくっている女の子だ。


 ネットアイドルとして熱狂的な評価を持っている性質上、並外れた美貌を持つ不世出の美少女でもあった。


 そして真理の言葉に出てきたラーラという存在はコンスタン研究室の水月の後輩にあたる女の子である。


「は!」


 鼻で笑う水月だった。


「真理やラーラがリリーたんに敵うとでも?」


 あまりに潔い。


 嘆息するケイオス。


「いつから二次元に没するようになった?」


「そりゃさくらがいれば二次元にハマったりはしないんだがな。さくらがこの世界から消えた以上何かしらで代替せねばならんだろう?」


「それがエロゲーか」


「リリーたんは俺の嫁」


「葛城先生があの世で悲しんでるぞ」


「知ったことかよ」


 さっぱりと水月は言いきる。


「で?」


 水月はパソコンデスクの社長椅子に体重をかけてケイオスに問う。


「何しに来たストパン?」


「警察機構の訓練指導と言ったら?」


「全力でお断りする」


「しかして渡辺椿の一件以来警察の危機対応能力を疑問視する声が聞こえてきてな。役君……貴様がストパンになってくれれば組織としてのストッピングパワー……ひいては警察力を引き締められるのだが」


「断る」


「年俸五億でどうだ? 無論日本円でだ」


「はした金だな。俺を動かしたいなら兆単位の金を持ってこい」


「ふむ」


 思案するようにケイオスは頷いて、


「考慮しよう」


 と言った。


 うんざりと水月は溜め息をつく。


「そんなことを言いたいがために来たわけじゃないだろう」


 機微を察する程度には水月は敏感だ。


 大方の状況を既に察しているのである。


 そしてケイオスの方もまた見透かされているのを承知で水月と無駄な議論をしているのだった。


「簡潔な願いだ」


「聞くだけなら聞いてやるよ」


「エーテル棟に行け」


「嫌だ」


 水月は駄々をこねる。


 イクスカレッジの中心に建てられているセントラルタワー……その中心に立っている高層ビルに行けと言われて却下するのだった。


「シンメトリカルツイントライアングルから要請だ」


「だから行きたくないんだよ」


 今更とばかりに水月は言う。


「しかしてわかっているのだろう?」


「何をだよ」


「シンメトリカルツイントライアングルからの要請ということは……即ち役君にしか対応できないということだ」


「過大評価をありがとう。聞かなかったことにしといてやるよ」


「状況が状況だ。どうあっても聞いてもらうぞ」


「俺を死刑にでもしてくれるのか?」


「役君を殺すくらいならまだしもイクスカレッジの残念生を鏖殺した方が有意義だ」


 問題発言だったが水月は非難したりはしなかった。


 ある意味でケイオスの言っていることは当然だからだ。


「で? エーテル棟に行ってどうしろと?」


「この前のヴァンパイアの件と同じだ。七十三階の会議室に行くぞ」


「シンメトリカルツイントライアングルねぇ……」


 どうせ厄介事だろうと態度で示す水月。


「なんなら首輪をつけて引っ張ってやろうか? それなら役君……貴様も大義名分が立つだろう?」


「あー……勘弁……」


 うんざりとして水月は両手を上げ降参した。

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