ミラノマジーアコレクション13
「ほうほう」
仮面を付けた忍が感心していた。
時間は次の日。
ミラノマジーアコレクションである。
ガレリアの端から異界に繋がり、プライバシー保護のために参加者はパーソナルデータを書き換えるペルソナを付けられていた。
ここでは仮面以外が無機質に映り、年齢も性別も体格も不透明となる。
そんな中、仮面を付けた魔法関係者が各々の魔法を披露する。
それがマジーアコレクションと呼ばれる祭典だった。
「ミダースですか」
「ドラゴンのクローンとくるか」
「伸縮する槍……恐らくは聖槍にあやかったものよね」
「止水剣が出た。オークション前にいいのか?」
「在る意味でコレクションもカタログの様な物よ?」
「なるほどなぁ」
そんな感じで進む。
「この後オークションか?」
「ミラコレの成果も一部流出するでしょうね」
そういう物だ。
「ふーん。お。仮想聖釘のためのアクチュエータ」
「協会に喧嘩売ってるわね」
「聖槍でもそうじゃなかったか?」
「ま、地元ということなのかな?」
二人は首を傾げた。
しばらく魔法のお披露目を見ていく。
そこからカタログと照らし合わせて、止水剣をチェックした。
「どんな鍵も開けるピッキングツールだってよ?」
「なんか地味そうなのに実のところかなり危ういマジックアイテムですね」
様子を見て論評しながら、イクスカレッジとの差異も埋める。
しばらく着席しているとマジーアコレクションも収束する。
基本的にイクスカレッジは魔術を研鑽する場だ。
知識としての魔法を持ち寄る場とも言える。
けれど此処では成果としての魔法を取り扱っていた。
ブラックオークションを開催するくらいだ。
それなりに有益な品物は出るだろうが、要するに魔法を扱うに当たっての報酬を求める場と言えるだろう。
単純に、
「――魔法とは?」
「――魔術とは?」
の命題とはまた別に立脚している。
「お客様に置かれましては……」
そんな魔法の成果を見届けた後、オークションが始まる。
「コレクションで仙丹は出なかったな」
「使うわけにもいかないのでしょう」
実際にそんな側面は有った。
証明しようにも服用するしかない。
そして使ってしまえば商品にならない。
そんなジレンマ。
「贋作か?」
「それも服用するまで分からないわね」
別段贋作ならソレでもいいのだが。
ただイクスカレッジの予算組み立てに影響を及ぼす程度だろう。
しばらくすると商品が出され、掛け値を付けられる。
スタートプライスからして破綻していた。
しかし魔法の世界では良くあること。
ドラゴンのクローンやミダースの成果も競りに出されていた。
封印処置を経た上で。
それは仙丹や止水剣も同じだ。
「なんで封印処置?」
「魔法を発露するわけにはいかない……ってことじゃない? 検閲官もいるし」
首尾良く仙丹と止水剣を競り落とした二人は、そこから見学者に変わった。
「ピッキングツールも競りに出されるのかよ」
「このペルソナと……」
とコンコンと仮面を叩くラーラ。
「組み合わせたら色んな事が出来そうよね」
「競り落とすか?」
「金がありません」
「あるだろ? 予算度外視の小切手が」
「ああ、そこね。一品ごとに清算するので小切手だと一つしか買えないのよ。紙幣があれば話は別だけど、基本的に信用商売よね。だから財閥の囲われない様に処置を施しているのよ」
「難しいんだな……」
「そうでもなければオークションを開く意味もないわ」
「ふむ」
どこか考える様な忍。
「じゃあ止水剣はすぐには使えないのか?」
「ホテルまで郵送。清算は先だけどね」
「封印はどうすればいいんだ?」
「単純に開けるだけで良いはずよ。客ごとにセーフティ掛けられてるし。あなた以外では開けられない」
「あー、それで教授……」
「そうね。自分で足を運びたかったんでしょう」
そんな御様子だった。




