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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
全ては二人のために
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第二エピローグ28


 アシュリーの二つ名。


「アスモデウスのアシュリー」


 その最奥となれば必然召喚された悪魔はアスモデウス。


 別名アスモダイ。


 アスモデウスの『デウス』は『神』を表わすとも言われる。


 元は天使ともされ、地獄を司る大悪魔。


 ソロモン七十二柱の一柱にして七つの大罪の一角。


「――――!」


 地獄すら震わせる魔性の咆吼が響いた。


「これはこれは」


 水月は感嘆とした。


 ソロモンについての理解はあるが実際に実物を見せられれば感慨も一入。


「理解していますか?」


 アシュリーが問う。


「何が?」


 と水月。


「アスモデウスの威力を……です」


「まぁ知識としてはな」


 とりあえずそう答えるより他に無い。


 芸は無いが求められてもいないため正直に感想を述べた。


「魔王の火を浴びたくなければ降伏して貰えませんか?」


「俺も魔王なんだが……」


 これも今更。


「抵抗すると?」


「優しく頭を撫でてやろうってだけだ」


 口調そのものは至極優しい。


 表情には皮肉が張り付いていたが。


 そもそもにして隣に赫夜がいる時点で巻き込む形での攻撃が出来ないロンドンの精鋭である。


 自身らが、


「包囲してからここまで一切攻撃をしていない」


 という異常事態に陥っていることに気づいていないのは偏に赫夜の及ぼすところだろう。


「まぁ威力で弁舌を語るのは嫌いじゃないがな」


 言って水月は、


「――千引之岩――」


 と魔術障壁を張った。


 同時に精鋭たちが呪文を唱えたり触媒を用いて攻撃魔術を顕現させる。


 アシュリーのアスモデウスもその一つ。


 ビーム砲にも例えられる超高熱の呼気。


 四大元素は元より色とりどり様々の魔術にて襲うが、実を言うとコレは因果の逆転だ。


 赫夜が居る限りにおいて(水月をピンポイントで狙わなければ)攻撃が出来ないが故の硬直状態だったのだ。


 水月が魔術障壁を張って赫夜を安全圏に隔離したが故に初めて魔術攻撃を可能とする。


 攻撃と防御の因果逆転。


 防御が万全であるからこそ攻撃に踏み切れる。


 その理屈を理解しているのは水月と赫夜だけだが。


 とりあえず赫夜が無敵である以上、後ろ髪は引かれない。


 故に水月は跳んだ。


 千引之岩を足場に。


 当然赫夜と離れた水月に苛烈な魔術が襲いかかるが、足場にしている千引之岩がその全てを封じてのけた。


「オンマユラキランデイソワカ」


 思考のリミッターを外す。


 人払いの結界を張っているため魔法検閲官仮説も気にする必要は無い。


「――迦楼羅焔、迦楼羅焔、迦楼羅焔――」


 灼熱が咆哮を上げて爆散した。


 ビル一つ爆破する威力の火炎だ。


 それが三つ。


 一つはアスモデウスの吐く炎と相殺されたが残り二つはロンドンの精鋭五十人に致命的損害を与えた。


 軍隊は二割を欠損させれば致命的と言うが、その迦楼羅焔の前にはどうしようもないのが水月の魔術の本質。


 水月とて呪文をマジックトリガーにしているが、そもそもの認識が違う。


 魔術を行使するための自己陶酔を水月は必要としない。


 であれば十も二十も呪文の詩を詠んで初めて発動する新古典魔術と、水月の一言呪文……そにおける比較は比べるのも馬鹿らしい。


 結果論として五十の精鋭は十分の一まで減った。


 残り五人。


 アスモデウスの火が迦楼羅焔を相殺して生き延びた精鋭の数である。


 内にアシュリーとアシュレイとリザが含まれる。


「…………」


 言葉も無かった。


 その一点に尽きる。


 別段、役水月を安く見たわけでは無いが結果としてそう陥ったらしいと再確認。


 たった一言で世界を変革させ大量虐殺を可能とする魔術。


 人を傷つける以外に使いようが無い能力。


 それを非難するにはアスモデウスの存在感が邪魔だ。


「よっと」


 水月は赫夜の隣に降りた。


 最初と同じ配置。


 ただし戦力的には既に勝敗のリミッターを振り切っているが。


「――我は喚起す。ソに於いて舞って狂え。炎の蛇よ――」


 リザがマジックトリガーを引く。


 足下には刺繍された魔法陣の布。


 なるほどシートのような布に魔法陣を刺繍して持ち運べば何処でも魔法陣をパワーイメージとした魔術を行使できるというわけだ。


 とはいえ既に展開し終えている千引之岩に防がれるのだが。


「そんな……っ」


「――前鬼戦斧――」


 大気が超圧的に圧縮され風の斬撃が発生する。


 それはアスモデウスの御尊体を尊ぶことも無く両断した。


 単純な物理現象。


 水月にとっての魔術は手足の延長線上だ。


 それすら理解していない新古典魔術師にして、


「水月を上回れ」


 はもはや問答として成立していない。


 それを水月が懇切丁寧に教える義理も無かったが。


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